〈今回も「株高⇒資産効果⇒資産家の消費拡大⇒実体経済が成長」となるか〉
過去を振り返ると、こういった消去法的な(リスク回避的な)動きを背景にしたものであっても、株高が資産家の消費を刺激し、実体経済も一定の成長をしてきた。
今回もSOX指数の上昇が他の株価にも波及し、再び資産効果が強くなる可能性がある。株価が上がれば消費や投資が刺激されるため、自己実現的に株価の上昇が後から正当化されることはよくあることである。
ウォーシュ次期FRB議長が指摘するFRBの巨大なバランスシートがこういった「常に何かの金融商品が買われている」という展開を促している可能性もあるのだろう。
いずれにせよ、今回も実質賃金の伸び悩みに苦しむ労働者階級をよそに、資産効果に支えられた資産家の消費が米経済を加速させるのか、見極める必要がありそうである。
経済学では、人々は無限の欲望によって生涯消費を最大化するという前提を置くことが多く、その考え方に則れば二極化経済による高成長が続く(そのことで株高が正当化される)ことになるだろう。
しかし、行動経済学が前提とするような、人々はそれほど合理的ではないという立場をとれば、人々はそれほど貪欲ではないかもしれない。資産効果の息切れといった展開になる可能性もあるだろうと、筆者は警戒的にみている。
〈米金利は上昇したが、FOMCが無風であれば徐々に低下へ〉
4月27日の債券市場では、あまり材料がない中で5年債入札がやや軟調な結果となり、金利が上昇した。長期金利は前日差+3.9bp、2年金利は同+1.9bpだった。FOMCを控える中で、入札には需要が集まらなかった模様である。
足元では、パウエルFRB議長が議長を退任した後に理事としてとどまるかといった点が注目されており、FOMCの注目度も高い。
もっとも、金融政策の先行きに関するヒントはほとんどないと予想され、市場への影響は限定的となるだろう。ボラティリティが低下する中で、長期金利は緩やかに低下していくと、筆者は予想している。
〈日銀内部から出た「中立金利までの距離」は遠くないというトーン〉
4月28日に結果が公表される予定の日銀決定会合では、現状維持が予想されている。
円安加速といったビハインドザカーブを避けたいとみられる日銀が、市場に対して6月や7月の利上げをどれだけ意識させることができるか、といったところがポイントになる。
今後、利上げをするロジックは、
①原油高や円安が基調的インフレを加速させるリスクに対応するもの、
②中立金利に向けた利上げの一環(低すぎる実質金利の修正)、の2つが考えられる。
植田総裁が利上げ路線の継続をアピールすることはほぼ間違いない状況と言えるため、その利上げのロジックが
①原油高や円安への対応によるものに傾いているのか、
②中立金利を意識したものに過ぎないのか、を見極める必要があるだろう。
この点について、やや気になる報道がある。筆者が毎週月曜に出演しているTBS Cross DIG with Bloomberg(Youtubeチャンネル)のThe Priorityという番組が4月27日の夜に「撮って出し」(収録後すぐに配信)されたのだが、その中でTBS経済部の佐藤氏が、TBSの取材結果として日銀内部の声を紹介した。
その中で、「中立金利までの距離を考えると、今回対応しないと明らかにビハインドザカーブになる状況とは言えない」(日銀内部)というものがあった。
日銀はビハインドザカーブに陥っていると批判されることを嫌っている可能性が高い。植田総裁の会見でもそういった指摘に対して「ビハインドではない」と反論する可能性はあるだろう。
しかし、「中立金利までの距離を考えると」という点を強調してしまうと、この部分が注目されて市場の想定するターミナルレートが下がってしまうことになるだろう(中立金利に向けた利上げについてハト派的だと捉えられる)。
足元では原油高や円安への対応に注目が集まりがちだが、ビハインドザカーブへの批判に「ディフェンス」する中で中立金利に向けた利上げについて、思わず本音が出るような可能性にも注目が必要である。なお、The Priorityは決定会合の夜にも特別版として配信をしている。4月28日夜(20時頃を予定)も速報で上記のニュアンスを議論する予定である。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)