(ブルームバーグ):中東和平への期待や今のところ堅調な1-3月期(第1四半期)決算が追い風となり、米国株は先週、最高値を連日で更新した。だが、今後の株価の上値余地は、企業の業績見通しに左右されるとストラテジストは指摘している。
グリーンウッド・キャピタル・アソシエーツのウォルター・トッド最高投資責任者(CIO)は、投資家はいつも以上に業績見通しに注目すると話す。「もしストーリーにひびが入れば」、市場にとって大きなリスクになるという。
決算シーズン開始からわずか1週間だが、見通しには警戒シグナルが点灯しつつある。調査会社22Vリサーチによると、利益予想を引き上げるより引き下げるアナリストの方が増えているほか、利益と売上高双方の見通しを引き上げる企業の割合も低下している。
この傾向は2008年の世界的な金融危機や21年の新型コロナウイルス禍など、「ガイダンスに大きな変化が生じた局面」でみられたものだと22Vリサーチは指摘している。
利益や売上見通しの伸びの鈍化は、企業が先行きに対してそれほど強気ではなくなっていることを示している。背景には、個人消費の減退による不確実性に加え、インフレ期待の高まりに伴う投入コストの上昇がある。
企業はさらに、イラン戦争による原油価格ショックや米国の関税政策、人工知能(AI)ツールによる潜在的リスクを背景に、業績見通しを引き下げている。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の集計によると、S&P500種株価指数の構成企業のうち、四半期見通しを引き下げた企業はすでに40社に上り、関税導入が始まった2025年4-6月期(第2四半期)以来の高水準となっている。BIはガイダンスの勢いについて、25年10-12月期(第4四半期)よりも「弱い」と指摘した。
前述のトッド氏は、「ガイダンスが失望的な内容となれば、足元の株高前の水準に戻り、5-10%下落する恐れがある」と述べる。
投資家はすでに見通しを引き下げた企業に厳しい反応を示している。アボット・ラボラトリーズは16日、利益見通しを下方修正した後、株価が2023年以来の安値に沈んだ。JPモルガン・チェースも14日、純金利収入の見通しを引き下げ後に株価が下落した。ネットフリックスは17日、4-6月期の利益見通しが低調だったことが嫌気されて急落した。
いずれのケースでも、第1四半期の業績は市場予想を上回ったものの、見通しの下振れがこれを打ち消した。
グローバルト・インベストメンツのパートナー兼シニアポートフォリオマネジャー、トーマス・マーティン氏は、「市場は常にガイダンスをはるかに重視する」と述べた。
見通し自体を取り下げた企業は、さらに厳しい評価を受けている。カナダのレジャー用車両メーカー、BRPは15日、米国の関税政策の変更を理由に見通しを撤回し、トロント市場で株価が35%急落。フランスの鉄道車両メーカー、アルストムも17日、ガイダンス撤回を受けて株価が一時36%安まで下げた。
エンパワーの最高投資ストラテジスト、マルタ・ノートン氏は、「ガイダンスの提示を控えれば、一定の脆弱(ぜいじゃく)性を示唆する」と指摘。
地政学、通商、経済を巡る不確実性が高い今回の決算シーズンでは、企業は「結果のレンジを広げて」見通しを提示しようとするだろうと同氏は述べた。
USバンク・ウェルス・マネジメントの株式チーフストラテジスト、テリー・サンドベン氏は、利益成長見通しは「経営陣が様子見姿勢を取っているため、抑制されたものになる」と予想。イラン戦争や関税の行方が明確になるにつれ、7月にはより詳細で積極的な見通しが示されるだろうと話す。
その結果、個別銘柄の価格変動は依然として激しい状態が続いている。米国とイランの和平協議を受けて株式市場全体のボラティリティーは2月初旬以来の水準まで低下したものの、S&P500種を構成する各銘柄の予想ボラティリティーを追跡するCboe S&P500種構成銘柄ボラティリティー指数は、依然として戦争前の水準を上回っている。
見通しの弱さは、想定される1-3月期の利益成長率とは対照的だ。BIのデータによると、S&P500構成銘柄の利益は12%増が見込まれている。これまでのところ決算シーズンは好調な滑り出しで、すでに決算を発表した企業の利益は総じて市場予想を11%上回っている。
足元の状況は、25年1-3月期と重なる。当時はトランプ大統領による大規模な関税導入を受け、S&P500種構成企業の数十社が見通しを引き下げた。指数全体の利益は13%増となった一方、見通しを下方修正した企業は62社と10年ぶりの高水準に達していた。
もっとも今回は、くすぶる不確実性によって企業の視界はさらに不透明になっていると、ジョーンズトレーディング・インスティテューショナル・サービスのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は指摘する。
通常の決算シーズンで得られるような「見通しの明確さは期待できない」という。
原題:Strong Earnings Results Can’t Save Stocks from Dimming Forecasts(抜粋)
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