(ブルームバーグ):ニデックの不正会計を調査していた第三者委員会が17日、最終報告書を公開した。不正会計の実態や財務への影響規模などが示された中、今後は会社側が内部統制の不備を正して再成長を目指していく段階に移る。ただ、上場廃止のリスクがくすぶるほか、アクティビストを含む株主との対話や、旧経営陣らが刑事責任に問われる可能性など課題は山積している。
最終報告の内容は
最終報告書では、2025年4-6月期(第1四半期)時点の純利益への不正会計の影響額を1607億円と結論づけた。ニデックドライブテクノロジーなどで新たに不正会計が発覚し、3月に公表した暫定試算の1397億円から210億円の増額となった。売上高の過大計上があったケースで過去の有価証券報告書を訂正した際、開示では「誤認」によるものとされていたが調査の結果、業績をよく見せるため意図的に利益を捻出する目的で実施された会計不正だったことが判明したという。
減損の検討対象となるのれんや固定資産の額は主に車載事業に関するもので、約2500億円規模になるという試算の変更はなかった。不正会計の原因についても、創業者である永守重信氏の経営理念の破綻のほか、同氏へのけん制機能が働かなかったことや会計監査人に対する不誠実さなど3月の指摘から変化はなかった。
ニデックでは昨年、イタリア子会社の関税未払い問題を発端として不正会計を疑わせる事案が相次いで浮上。ニデック本体やグループ会社でも経営陣の関与・認識のもとで不正な会計処理が行われた疑いも指摘され、昨年9月に設置された第三者委が調査を進めていた。
青山学院大学の八田進二名誉教授は報告書について、「細かいことをいろいろ調べているが、一番悪質だった事案がどうしてそうなったかという一気通貫での説明はない」との印象を持ったと述べた。
ニデックは17日の開示資料で、第三者委の調査報告書を厳粛に受け止めた上で速やかに改善計画・状況報告書の改訂を行っていくとした。6月に予定する定時株主総会で新たな取締役候補者を選ぶ際の選任方針や選任・解任基準を改定することも記した。
不正会計を巡る人事処分については、既に小部博志元会長ら一部の元経営陣が辞任。先月立ち上げた役員責任調査委員会では過去の役員も含めた法的責任の有無も調べていく。岸田氏は第三者委からガバナンス(統治)不全を指摘された取締役会についても見直す方針を示していた。
上場廃止を避けるには
東京証券取引所は昨年10月、内部管理体制などで改善の必要性が高いとしてニデックを特別注意銘柄に指定した。ニデックは指定から1年後となる今年10月末に内部管理体制確認書を提出する方針だが、審査の結果次第では上場廃止となる可能性もある。
特別注意銘柄の解除には東証から再発リスクが十分に低減されたと判断されることが重要で、会計・財務プロセスの見直しや監査体制の強化など不正が起きにくい環境を作り、一定期間の実績も示す必要がある。
SMBC日興証券の桂竜輔アナリストらは4月2日付のリポートで、過去の拡大戦略の結果生じた「負の遺産」を全て処理することと東証に提出した改善計画書に基づき、内部管理体制の再整備や適切な運用を行うことで特別注意銘柄の指定解除に取り組むことが最優先だと指摘した。監査人との信頼関係を再構築することも必要になるとの見方も示した。
刑事責任を問われる可能性は
第三者委はニデックが刑事責任を問うべきかについては対象外として踏み込まなかったが、日本経済新聞は証券取引等監視委員会が金融商品取引法に抵触する可能性で調査する方針を固めたと報じており、今後刑事事件として立件する可能性があるのかも注目される。
過去には、オリンパスが損失隠しなどを行い、元経営陣や指南役計7人が金融商品取引法違反などの容疑で逮捕された。一方、約7年間にわたって1500億円超の利益水増しを行った東芝を巡っては、刑事事件の立証には至らず、結果的に時効を迎えた。監視委が金商法違反に当たるとして約74億円の課徴金を勧告したのにとどまった。
青学大の八田氏は、「会計の量的重要性の観点では立件の可能性は少ない」との見方を示した。さらに質的重要性の観点でも、永守氏の経営の悪質性を第三者委員会は読み取れないとしていることから、立件はされず課徴金で幕引きするのではないかとみる。
ただ、経済犯罪は直接的な被害者だけではなく、特に上場会社の場合は不特定多数のステークホルダーにも多くの悪影響が及ぶという自覚が必要であり、「ステークホルダーの感覚としては、これを課徴金で終わらせるようなら、日本のマーケットに対する国際的な信頼は失墜すると思う」と述べた。
株主などの圧力で変われるか
ブルームバーグのデータによると、ニデックの筆頭株主は依然として8.3%を保有する永守氏だが、3月には香港のファンド、オアシス・マネジメントによる6.74%の大量保有が明らかになった。アクティビスト(物言う株主)として知られるオアシスは既にニデックに取締役候補1人を提案し、抜本的な企業文化の改革を求めている。
第三者委による調査報告書では、株主としての永守氏の影響力をなくすため、株式処分や権利行使を制限すべきとの議論もあり得ると指摘されていた。ただ、永守氏による判断を必要とする事項であり、ニデックが講ずべき再発防止策として取り上げるのは適当ではないと思われるともしている。
急落した株価を受けて、今後は株主による損害賠償請求訴訟に向けた動きも活発化しそうだ。ニデックは永守氏とオアシスに加え、そのほかの株主とも向き合う必要がある。
青学大の八田氏は、日本企業を改革するには訴訟と外圧しかないが、今回は両方が待ち構えており、「ニデックにとっては長期にわたって苦難の道が待っている」と話す。
再成長をどう描くか
ニデックは永守氏の強烈なリーダーシップに加え、合併・買収(M&A)も活用し、売上高2兆円超のグローバル企業に成長。31年3月期に売上高10兆円の目標を掲げてきた。
だが、社内外の調査にあるように車載事業を含む業績達成へのプレッシャーやM&A後の統合不全が重なり、岸田氏は昨年11月の時点でM&Aは交渉も含めて停止していると明かしていた。
SMBC日興のリポートでは、M&A以外の既存事業で売上高をどの程度成長させていけるのかも含めて、まずは等身大の同社の実力がどういう水準にあるのかを計る局面にあると指摘された。
第三者委の報告書では、一連の不正会計は「モノづくり企業としてのニデックの実力に疑問符を投げかけるものではないと考えている」と明言。ニデックの真の実力を示すことができれば、市場からの信頼は確実に回復するとの見方を示した。信頼回復への道は長期戦が見込まれるが、改善措置を確実に実行していく地道な対応が求められる。
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.