100円ショップのセリアは、円安やイラン情勢を背景としたコスト上昇が続く中でも、100円均一(税抜き)を維持する戦略を崩さない。河合映治社長は、同業が高価格帯へと移行するインフレ環境はむしろ好機と見て、競合の撤退や縮小で生じる「残存者利益」の取り込みを狙う。

河合氏は13日のインタビューで「インフレはチャンスだ」と述べた。採算が厳しくなり、競合他社が100円商品からの撤退や縮小を余儀なくされ、競争相手が減ることで生き残った企業に利益が集中するためだ。すでに他社が取りこぼした需要がセリアに流れ込んでいるほか、コスト増に耐えられず撤退した中小事業者の店舗を引き継いだ例もある。

セリアの河合社長(13日・岐阜県大垣市)

「価格を変えずに商品を変える」のがビジネスモデルという同社が進めるのが、100円で売れる商品への絞り込みだ。大皿は小皿に変更し、サイズ変更が難しい傘やスリッパはラインアップから外した。代わりに、足元で人気を集めているシールなど、需要があり利益率が高い商品の拡充に取り組む。

業界では脱100円の動きが広がっている。ダイソーを展開する大創産業(広島市)は2018年に300円商品を扱うブランドを開始。キャンドゥやワッツも300円以上の商品の拡充に力を入れる。セリアは逆張りとも言える経営手法をとるが、前期(26年3月期)は増収増益を確保する見通しで、堅調だ。

帝国データバンクの調査によれば、150-500円の中価格帯商品が「100円ショップ」の市場規模拡大をけん引するが、別の業態との競争にさらされる。調査を担当した飯島大介氏は中価格帯の製品について、無印良品やスリーコインズなど競合も多く、価格以外の価値を訴求する必要があり、事業環境は厳しいと指摘する。

セリアが競争相手の少ない低価格帯にこだわることは合理的だ。ただ先行きには不透明感もある。

イラン情勢の緊迫化に伴い、原油やナフサ、化学品の価格が上昇。同社には調達先からすでに値上げ要請が届いており、早ければ5月にもプラスチック製品などで調達価格が上がる可能性がある。ゴミ袋などは枚数変更で対応できる一方、大型のプラスチック製品は取り扱い停止の可能性もあるという。

本社近くの店舗。セリアは100円均一にこだわる。

河合氏は「すぐに値上げは考えていない」とし、「自分たちができる努力を最大限やって、最後まで100円に立ち続けることが戦略だ」と強調する。インフレが進み、100円で売れる商品が少なくなってしまった場合には値上げも検討するが、110円(税抜き)など緩やかな値上げを想定しているという。

大和証券アナリストの谿花理沙氏は、インフレ下で消費者は、安く済ませるものと高品質なものにお金をかける消費行動の二極化が進んでおり、消耗品などを中心に100円商品のニーズは根強いと指摘する。

仮に同社が値上げに踏み切った場合、キャンドゥやワッツなどの同業も値上げすると予想。結果として価格競争力は維持されるとし、「セリアが優位な立場にあるのは変わらない」と述べた。

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.