(ブルームバーグ):イラン戦争とトランプ米大統領の発言により、米国と欧州の同盟関係は崩壊寸前に追い込まれている。
欧州当局者によると、米国は紛争対応や和平交渉の進展について情報を共有せず、欧州のパートナーの多くを蚊帳の外に置いている。具体的には、米国によるホルムズ海峡の「逆封鎖」やロシア産原油への制裁適用除外措置の失効に関して、欧州諸国の大半は何も知らされなかったという。
単独行動に傾いているのは米国に限ったことではない。戦争批判を巡ってトランプ氏の反発を招いている英国とフランスは、海峡の自由航行を回復するための平和的手段を協議する独自の会合を17日に開催する見通しだ。一方、多くの同盟国はこれまでのところ、米国による海峡封鎖への参加を拒んでいる。
米欧の首脳は水面下で対話していないとみられる一方、公の場では激しい応酬を繰り広げている。イラン戦争を批判したローマ教皇レオ14世をトランプ大統領が厳しく口撃すると、トランプ氏と友好的な関係を築いてきたイタリアのメローニ首相は「容認できない」と反発。イラン戦争で米国と連携するイスラエルとの20年にわたる防衛協定を一時停止した。
これに対し、トランプ氏はメローニ氏に「ショックを受けた」とし、「彼女は勇敢だと思っていたが、それは間違いだった」とイタリア紙コリエレ・デラ・セラとのインタビューで述べた。トランプ氏はかつて、メローニ氏を「美しい若い女性」で、欧州を「席巻」したと称賛していた。

こうした亀裂は、週末に開催されたハンガリー総選挙で、トランプ氏やロシアのプーチン大統領に近いオルバン首相が歴史的大敗を喫したタイミングにも重なった。選挙戦終盤にはバンス米副大統領が現地入りしたが形勢逆転には及ばず、トランプ氏にとって今回の敗北は打撃と受け止められている。
ただ、欧州当局者はこの亀裂が恒久的なものになる可能性は低いと非公式に認めている。安全保障やエネルギーを巡る懸念から、米国との完全な決裂は容認できず、トランプ氏による封鎖が戦争終結に向けた合意を促す圧力となる可能性を認める向きもあるという。
アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のコリー・シェイク氏は「トランプ大統領と周辺関係者は、米国の力が他国の自発的な協力によって支えられ、世界で何かを成し遂げる際の代償や困難を低減しているという点を理解していないようだ」と指摘。
「トランプ氏は共通の利益に資する目標を追求するのではなく、米国とイスラエルの利益にかなう政策の代償を世界に押し付けており、他国と協議すらしていない」と述べた。

トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」と切り捨て、脱退の可能性を示唆。デンマーク自治領グリーンランドの取得を巡り軍事行動をほのめかすなど、NATO同盟国に圧力をかけてきた。今回のイラン戦争についても、欧州諸国の参加を取り付けることなく攻撃開始を決定した。
グリーンランド問題は、トランプ政権2期目の初期には慎重姿勢を取っていた一部の欧州当局者が、一段と強硬な姿勢に転じる契機となったと、事情に詳しい関係者が明らかにした。
元共和党下院議員のカルロス・カーベロ氏は、トランプ氏は第2次世界大戦後の世界秩序とは調和しない「孤立主義的かつ介入主義的な」路線を邁進していると指摘。ホルムズ海峡の安全確保で米国を支援しないことを選んだ国々は、その戦略の犠牲者だと述べた。
「われわれはついに、その代償を払わされているようだ」と同氏は述べた上で、「トランプ氏は孤立しており、米国も孤立している」と続けた。

アジア諸国にも波紋
アジアの同盟国の一部は、米国からの事前協議がなかったことについて沈黙を守っているが、状況は依然として厳しい。高市早苗首相はイラン停戦以降、トランプ氏との電話会談を実現できていない。ただ、4月8日にイランのペゼシュキアン大統領とは電話会談を行った。
トランプ氏の行動が中国を勢いづかせているとの見方もある。カナダやフランスといった西側諸国との関係強化に向けた材料を中国に与えているという。中国政府は、米国による海峡封鎖が世界貿易を脅かすと警告し、冷静さと自制を求めた。
ブルッキングス研究所のライアン・ハス氏は「極めて不安定な世界において安定の象徴として振る舞うことで、中国は利益を得ていると考えている」と話す。「現在の情勢が自国に有利に働いていると感じており、国際舞台でトランプ氏の行動がもたらす思わぬ恩恵を享受するのに、多大な譲歩や努力をする必要はないと考えている」と述べる。
一方、戦争によるエネルギー供給の混乱は米国の同盟国を圧迫している。ホルムズ海峡を通過する原油や液化天然ガス(LNG)の輸送の大半が数週間にわたり停滞したことで、東南アジア諸国では調理用燃料の不足が発生し、臨時休業に追い込まれるケースも発生した。
こうした中、トランプ氏による逆封鎖により、日本やフィリピン、韓国、インドにとっては、供給逼迫(ひっぱく)がさらに深刻化する恐れがある。欧州当局者によると、軍民双方の航空機向けジェット燃料の供給が特に懸念されている。
非介入主義を掲げる米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」のローズマリー・ケラニック氏は「仮にアジアの国が、原油などの供給を受ける代わりに通航料を支払う取り決めをイランと結んでいたとすれば、トランプ氏の措置によってそれが無意味になったことに強い不満を抱くだろう」と指摘。その上で「これにより、原油価格の急騰に対する米国の責任は一段と明確になる」と述べた。

原題:Trump Isolation Deepens on World Stage as Allies Rebuff, Condemn(抜粋)
(欧州当局者に関する記述を第7段落に加えて更新します)
--取材協力:Jeff Mason、Catherine Lucey、Daniel Carvalho、村上さくら、野原良明.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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