〈経済財政諮問会議の民間議員の提案は財政リスクへの配慮が目立った〉
13日には6月に策定される見込みの「骨太の方針2026」に向けて経済財政諮問会議が開催された。民間議員からは、「『責任ある積極財政』を柱に、必要な分野・範囲においては政府が一歩前に出て、官民が手を携えて投資(様々なリスクを最小化する『危機管理投資』や先端技術を花開かせる『成長投資』)すること」などが提案された。
「政府が一歩前に出て」という記述からは積極財政のニュアンスが感じられるが、市場原理やトリクルダウンに任せていては不十分であるという議論は岸田政権の「新しい資本主義」以降に強くなってきたことから、その延長線上と言える(大きな変化はない)。
他には、「金利や成長率等の不確実性を考慮しながら、世界的な金利上昇圧力など経済環境の構造変化を見据えた中期の財政計画を講じ、その進捗を毎年検証することを通じて、政府債務残高の対GDP比を安定的に引き下げ、財政の持続可能性を実現し、市場からの信認を確保していく」とされた。
高市政権は「ドーマー条件」の観点から「名目GDP成長率>名目長期金利」の状態を維持することが重要だと考えている模様だが、民間議員の提案はこの状態に対する不確実性に十分配慮すべきというものであり、慎重である。「市場からの信認を確保していく」といった記述からも、最近の金利上昇を警戒している様子が窺える。
注目される財政目標については、「財政運営の中核目標として、債務残高対 GDP 比の安定的な低下を目指す」とされ、「単年度 PB 中心の管理から転換し、債務残高対 GDP 比の安定的な低下を位置づける。成長率を高め、併せて金利に目配りすることで、成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑えていく」「 PB については、債務残高対 GDP 比の低下に向けて確認することとし、その安定的低下の中で複数年で管理する」と提案された。
単年度のPBにこだわらないという姿勢は高市政権の財政運営の中核的な考え方であるが、PBを無視するわけではなく、「複数年で管理する」ということになれば、それほど財政規律を軽視したものとは言えない。PBを単年度で黒字化することと、複数年で安定化することの難易度を比較すると、前者の方が簡単という見方もできる。
例えば、今年度の予算を使って大幅な財政拡張を行い、来年度に大きく経済成長率を高める(税収を増やす)財政運営を行うと、今年度のPBは大きく悪化しても、来年度のPBは大きく改善する。この場合、来年度のPB黒字は一時的なものとなる可能性が非常に高いが、単年度でPBを黒字化することを目的とすれば、このような財政運営が正当化される。
それに対して、複数年でPBを安定させ、債務残高の名目GDP比を低下させることを目指す場合、このような瞬間風速的な財政運営では目標を達成することはできない。一定の財政規律が維持されていくことになるだろう。
他にも、「補正予算は緊要性の高いものに限定し、恒常的な施策については原則として当初予算で措置」といった提案もされたが、これまで補正予算が肥大化して財政が悪化してきたことを考慮すると、補正予算の制限は財政健全化にとっては必要な提案と言える。
むろん、高市政権は積極財政を訴えることで支持を拡大してきた面があるため、レトリックとしては財政拡張的なスタンスが示されるだろう。しかし、実体としてはそれほど財政規律が弛緩していくことはないだろうと、筆者はみている。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)