イランのホルムズ海峡支配にいら立ったトランプ米大統領が、対抗措置を打ち出した。米軍は13日付で、イラン南部沿岸を全面的に封鎖したと発表した。イラン側から海峡通過を図る航行も対象となる。

ペルシャ湾と外洋を結ぶこの狭い海峡は、米国とイスラエルが2月28日にイランへの攻撃を開始して以降、緊張の焦点となっている。イランは対抗策として海峡支配を強化し、重要な輸送路を事実上封鎖。中東のみならず、世界各国の経済に脅威を与えている。

米軍は昨年末からベネズエラ沖で同じような海上封鎖を実施。今回の封鎖はイランへの圧力を強める一方で、エネルギー供給、とりわけ中東依存度の高いアジア各国にさらなる負担をもたらす可能性が高く、4月7日に合意した停戦を破綻させかねない。

事情に詳しい関係者によれば、米国とイランは長期的な停戦に向けた次回の対面交渉の開催について協議している。イスラマバードでの協議再開の可能性が浮上しているが、他の開催地も検討されているという。

米海軍は何をしているのか 

恒久的な戦争終結を目指したイスラマバードでの米国とイラン協議が12日に決裂してから数時間後、トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、米海軍が即時にホルムズ海峡に出入りするあらゆる船舶を封鎖すると表明した。また、他国も参加すると付け加えたが、具体的な国名は挙げなかった。

さらに同氏は、イランに通航料を支払ったすべての船舶を国際水域で拿捕(だほ)すると警告し、封鎖が海峡を超えオマーン湾にまで及ぶ可能性を示唆した。これとは別に、米軍は封鎖の開始時刻をニューヨーク時間13日午前10時(日本時間同日午後11時)と発表。対象は「イランの港湾および沿岸地域に出入り」するすべての船舶だという。

米国は、イランに寄港していない中立船舶の航行は妨げないとしつつ、禁制品積載の有無を確認するための検査を行う可能性があるとしている。船員には公式通信のモニターと、オマーン湾およびホルムズ海峡接近時に米海軍との連絡を取るよう求めている。

軍と民間海運の調整役を担う英国の海軍関連組織は、米国の規制について通知を受けたとし、航路設定や確認手続き、通航許可に関する追加指針が策定中だと明らかにした。

米海軍は13日付の船舶運航者向け通知で、イランを出港する船舶を拿捕するなどの方針を示した。ただ、タンカーをインド洋まで追跡するために自国艦船を運用する意思があるのか、また衝突や損傷が発生した場合に双方がどのように対応するのかについては不透明だ。

米国はこの地域に即応可能な強襲揚陸艦「トリポリ」などの戦力を展開している。同艦は約3500人の海軍・海兵隊員に加え、ステルス戦闘機や輸送機を搭載する。

イランの対応は

イランの精鋭部隊であるイスラム革命防衛隊(IRGC)は、トランプ氏の封鎖方針に対し、「いかなる口実」であれ海峡に接近する軍艦は停戦違反と見なすと発表した。

米海軍による封鎖の報道が、ホルムズ海峡における船舶の動きにどのような影響を与えたか

また、イランの海運拠点が脅かされれば、ペルシャ湾およびオマーン海のすべての港湾を標的にすると警告。元米海軍将校で横須賀アジア太平洋研究会(YCAPS)共同創設者であるジョン・ブラッドフォード氏は、「今回のエスカレーションは融和よりもさらなる緊張激化を招く公算が大きい」とみている。

なぜ米国側が封鎖を実施するのか

イランによるホルムズ海峡のほぼ全面的な封鎖は、非対称戦の戦術として極めて効果的で、対応に苦慮する米国に深刻な経済的打撃を与えてきた。イランによる船舶への威嚇により、海峡の通航数は平時の1日約135隻から一桁台にまで落ち込んだ。

米軍による封鎖の最終目的は、イランの石油輸出を遮断し、体制の重要な資金源を断つことにある。

多くの専門家は紛争前、イランが海峡封鎖に出る可能性は低いとみていた。自国の輸出に影響が及ぶためだ。しかし実際には、イランは原油輸送を維持しつつ他国の航行を妨げる能力を示し、原油の収入増加と世界的な価格押し上げにつなげている。

封鎖は世界的な石油・燃料不足をさらに悪化させる可能性が高い

一方、トランプ政権はすでにベネズエラに対し同様の封鎖措置を用い、制裁で打撃を受けた同国経済をさらに圧迫した。ただし、ベネズエラは規模が小さく、船舶数も限られ、ベネズエラ産原油の主要な輸入国である中国にとっての重要性もイランほど高くない。

イランへの影響は

米軍による封鎖が実効的に実施されれば、石油輸出に大きく依存するイランにとって甚大な打撃となる。

イランはここ数週間、原油高の恩恵を受けており、従来は国際指標の北海ブレント原油と比べ安く販売されていたイラン産原油が、今月に入り価格が上乗せされ取引された。

これは需給逼迫(ひっぱく)緩和を目的とした米国の適用除外措置により、制裁対象だった原油の購入が可能になったためだ。インドはこの例外措置の下で2件の買い入れをしたとみられ、2019年以来のイラン産原油輸入となる可能性がある。

バレル当たりの販売価格上昇は、米国とイスラエルの空爆で大きな被害を受けたイランにとって重要で、荒廃した経済の再建と維持には多額の投資が必要とされる。

だが、米国がホルムズ海峡を封鎖すれば、戦争開始以降で数億ドル規模とされるこの臨時収入は終わりを迎える可能性がある。

米国への影響は

トランプ氏は、米国の石油・ガス生産拡大と中東供給への影響と結び付け、この危機を米国にとっての利益だと位置付けてきた。しかし、米国産原油は必ずしも中東産の完全な代替となるわけではない。また、米国内ではすでに原油価格上昇でインフレが加速している。

イランは、米国よりも痛みに耐え得ると認識しているとみられる。封鎖による供給不足への懸念から、原油価格は急騰した。

アジア各国への影響は

エネルギー危機に最も大きな影響を受けているのはアジアだ。ホルムズ海峡の通航制限が強まれば状況はさらに悪化する。封鎖発表を前に警戒感が高まり、通航量は急減した。

制裁対象のイラン産原油購入を認める米国の適用除外措置は、今回の封鎖によって無効化される可能性があり、二国間合意を模索していた国々は米国との衝突を避けるため慎重姿勢を強めるとみられる。結果として燃料確保の選択肢は一段と狭まる。

オニキス・キャピタル・グループのマネジングディレクター、ホルヘ・モンテペケ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「米国はイランに過度に集中するあまり、世界に与える影響を見失っている」と指摘し、「影響はアジアや南太平洋、そして石油に依存するすべての地域に及んでいる」と述べた。

原題:What to Know About the US Blockade of Iran’s Ports: Explainer(抜粋)

(4段落目に協議再開の可能性を追加して更新します)

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