会議室の空気は変わったか
2016年6月に「女性活躍推進法」が施行されてから、今年で10年が経つ。6月は株主総会シーズンの到来とともに、各社の取締役会の顔ぶれが動く時期でもある。多様性推進の流れの中で、新任役員の名前に女性が挙がることも、今では珍しいことではなくなった。
しかし、「人数は増えても、会議の空気は変わらない」という声も少なくない。会議では、誰に向かって話すかという小さな動作に、その組織の空気が表れることがある。女性が質問しているにもかかわらず、回答する側の視線や反応は男性に向けられる。そんな場面が、ごく自然な振る舞いとして起きていることもある。「自然」に見える空気の中に、何かが埋め込まれている。
多様性とは、単に「女性がいる」ことではない。女性活躍推進法から10年。私たちは今、「何人いるか」という入口から、「どのように参加しているか」という次の問いに向き合う段階に来ているのではないだろうか。
数字の内側にある現実

この10年で女性役員や管理職比率は着実に上昇した。2025年時点で、上場企業全体の役員に占める女性の割合は14.0%、東証プライム市場では17.7%に達している。数字を見れば、女性活躍推進法は一定の成果を上げてきたと言えるだろう。
ただし、内訳を見ると別の現実が見える。社内役員に限ると女性比率は3.7%にとどまり、社外役員の女性比率27.4%との間に大きな開きがある。つまり、「女性役員がいる」という数字の多くは、社外取締役として外部から登用されることで達成されている。数字の達成と、組織内部からの変化は、別のプロセスで進んでいる。
こうした中で、2026年6月に予定されるコーポレートガバナンス・コードの改訂では、多様性に関する考え方が大きく見直される。現行では「女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等における多様性確保の考え方と目標を示す」ことが補充原則として求められていたが、改訂案ではこれが原則に格上げされ、「ジェンダーや国際性、経歴、年齢、文化的背景等の観点から、多様性確保の考え方と測定可能な目標を決定し、開示する」ことが求められる。「女性」という表記から「ジェンダー」へと概念が広がるとともに、目標を「示す」から「決定する」へと表現が強化され、企業に対するより実質的な対応が求められる方向にある。
また、女性活躍推進法の改正により、2026年4月からは従業員101人以上の企業に対して女性管理職比率の公表が義務化された。対象は大企業から中堅企業にも広がり、多様性は一部企業だけの課題ではなくなりつつある。