(ブルームバーグ):トランプ米大統領やロシアのプーチン大統領の支持を受けていたハンガリーのオルバン首相を地滑り的な大勝で破った野党指導者のペーテル・マジャル氏は、歴史的となった選挙から一夜明け、景気浮揚とオルバン体制の解体に向けて動き出した。
マジャル氏(45)は一般市民の生活水準向上と法の支配の回復、16年にわたった非リベラルなオルバン体制の打倒を公約に掲げ、選挙を闘った。公約の実現は、ハンガリーを欧州の主流派に回帰させ、凍結されている同国向け欧州連合(EU)資金を解除させる上で重要になる。
ますます権威主義的な傾向を強めていたハンガリーで、マジャル氏は与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」の元党員ながら過去2年にわたり変革のメッセージを送り続け、国民を奮い立たせてきた。12日の総選挙で同氏率いる野党「ティサ(尊重と自由)」は議会の圧倒的多数を確保。通貨フォリントと株価は大きく上昇し、市場は選挙結果を歓迎する姿勢を示している。
だが、外交や経済、内政など、新政権が取り組むべき課題は多い。以下にまとめた。
政治
オルバン体制をマジャル氏が解体できるかどうかは、オルバン派を一掃できるかどうかにかかっていそうだ。マジャル氏は12日、選挙結果が明らかになるやいなや、大統領と最高裁判事、検事総長に対し、辞任を求めた。
ティサは議会の3分の2を確保した様子であるため、要職の人事交代も比較的容易だ。
また、この圧倒的多数により憲法改正や、これまでフィデスに有利に働いてきた選挙制度の改定も可能になる。
マジャル氏は首相の任期を2期に制限することも提案している。ハンガリーが将来再び権威主義に逆戻りするのを防ぐ狙いがあり、これによりオルバン氏の首相返り咲きは実質的に禁止されると、マジャル氏は説明している。
外交政策
EUとの悪化した関係を修復し、汚職や法の支配を巡る懸念からオルバン政権に支給が保留されている200億ドル(約3兆2000億円)超のEU資金の一部を解除することが、マジャル新政権にとっては最優先の課題だ。
マジャル氏は12日に投票を済ませると、新政府が発足すれば、汚職防止法の成立と司法の独立の強化、報道と学問の自由の確保に迅速に動くと表明した。これらは全て問題視されていたが、オルバン氏は妥協を拒んでいた。
時間はあまりない。EU基金の一部であるパンデミック復興プログラムの資金を得るには、8月末までにEUが指定するプロジェクトを完了したという領収書を提出する必要があり、できなければハンガリーは100億ユーロ(約1兆8700億円)余りに上る補助金と助成金と融資を永久に失う。
一方、EUはウクライナ向けの900億ユーロの融資をハンガリーが承認するのを待っている。この融資はウクライナにとって死活的に重要だが、親ロシアのオルバン政権は阻止していた。
この問題でウクライナに善意を示せば、凍結資金についてEUからハンガリーに見返りがある可能性もある。マジャル氏は13日にブダペストで開いた記者会見で、この融資に参加しない方針をハンガリーは維持するが、EUが実施することを妨げはしないと述べた。
マジャル氏は初の外遊先としてポーランドを選び、同国との関係修復を目指すと明らかにした。ハンガリーにとってポーランドは歴史的な同盟国だが、北大西洋条約機構(NATO)拡大の承認を遅らせ、EUの対ロシア制裁緩和を図るなど、ロシア寄りの外交政策を展開するオルバン氏をポーランドのトゥスク政権は激しく批判するようになった。
マジャル氏はその後で、ウィーンとブリュッセルを訪問する。
選挙戦でオルバン氏が「敵」と位置づけた隣国ウクライナとの関係改善も議題になる。だが、最も困難なのは、エネルギー輸入を完全には断ち切ることなくロシアとの関係を緩めること、そしてオルバン氏を繰り返し支持してきたトランプ米大統領との関係を築くことかもしれない。
経済
増加の一途をたどる財政赤字、高い国債費など、苦境にあえぐ経済をマジャル氏はオルバン氏から引き継ぐ。ハンガリーのソブリン格付けは今や、ジャンク(投機的格付け)級の一歩手前だ。
マジャル氏の選挙勝利とEU資金の凍結解除に投資家は大きく賭け、13日の市場でも通貨フォリントやハンガリー国債が大きく上昇している。新政権は「ハネムーン期間」を享受しそうな様子だが、財政再建に向けて猶予は許されない。
マジャル氏は最初に取り組むべき課題として、国家財政を持続可能な軌道に乗せる新予算案の可決を挙げた。13日の記者会見では、経済を立て直し、最終的にユーロに加入できるようにすると述べた。前任のオルバン氏は、ユーロ導入に断固反対していた。
ティサ党はフラット税制の公平性を高め、オルバン政権下で台頭した政治的なコネを持つ新興超富裕層を締め付ける目的で、富裕税の導入も公約していた。自動車やバッテリー産業に対する手厚い税制優遇措置を廃止する計画もある。これにより、銀行など負担の大きい特別業種税の将来的な軽減につながる可能性がある。
原題:Hungary’s New Leader Faces Post-Orban Economic Hurdles (1)(抜粋)
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