世界各国から経済政策当局者がワシントンに集まり、トランプ米大統領によるイランとの戦争が中東および世界の成長に与えた打撃を検証する見通しだ。

13-18日に開かれる国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合に出席する多くの関係者にとって、今回の参加は既視感を伴うものとなる。昨年の会合は、トランプ氏が引き起こした別のショック、懲罰的な関税措置が大きなテーマだった。

2026年の会合では、週末に行われる米国とイランの交渉が2週間の停戦を恒久的な和平へと転換できるかを見極めるとともに、各国政府や中央銀行が新たな問題を生まずに自国経済をどう支えるべきかが焦点となる。

世界各国の財務相や中銀総裁が出席する会合を前に、ゲオルギエワIMF専務理事は、国際社会のショック対応能力が低下していると警告した。

財政余地が乏しく、一国を守る政策が他国に悪影響を及ぼす恐れがあり、大国間の政治は問題解決よりも対立を助長しやすくなっていると指摘した。

14日に公表される最新経済見通しと世界金融安定報告を前に、ゲオルギエワ氏は見通しを「戦争の影響を踏まえ、引き下げることになる」と述べ、「覚悟しておいてほしい」と呼びかけた。

1月時点では、世界の国内総生産(GDP)は2026年に3.3%増と見込まれていたが、2月末にイランへの爆撃が始まった。

アリアンツのチーフエコノミスト、ルドヴィク・スブラン氏はブルームバーグテレビジョンに対し、「戦争前に持ちこたえていた一部経済の強靱(きょうじん)さがどの程度試されたのかを見極める上で、今後数四半期が極めて重要になる」と語った。

すでに明らかなのは、トランプ氏の攻撃とそれが生んだ不信の波紋が長引くという点だ。米国とイランの停戦が維持され、和平が成立し、重要な海上ルートの輸送が正常化したとしても影響が残る公算が大きい。

INGの商品ストラテジスト、エワ・マンティー氏は、「今回の停戦で最悪の下振れリスクは明確に取り除かれた」と指摘した上で、「真の転換点となるには、ホルムズ海峡での輸送が持続的かつ問題なく行われる必要があり、海峡再開のニュースだけでは不十分だ」と述べた。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のグローバルチーフエコノミスト、トム・オーリック氏は、「昨年は関税、今年は原油価格だ。トランプ政権の米国第一主義は世界経済に大きな変動をもたらしている。最終的に関税ショックは当初の予想ほど深刻ではなかった。イラン戦争のショックも同様の方向に向かう可能性がある。ただしホルムズ海峡が封鎖されたままであれば、原油価格は高止まりし、世界成長への打撃は深まり、インフレ圧力は強まる」と分析している。

米国

3月の米生産者物価指数(PPI)が14日に発表される。消費者物価と同様、イラン戦争初月のエネルギー価格急騰の影響が反映される見込みだ。

エコノミストは前月比1.1%上昇を予想しており、4年ぶりの大幅な伸びとなる可能性がある。原油やディーゼルに加え、中東の供給混乱がどの程度のペースと規模で米国に波及しているかも示唆される見通し。

報告には金属やプラスチック、化学品、肥料など生産初期段階の素材価格が含まれるほか、輸送費も燃料高の影響を反映する可能性がある。

エネルギーと食品を除くコアPPIは0.4%上昇と予想され、2025年後半から続く卸売りインフレ圧力の強さが続く見通しだ。

今週ではこのほか、3月の米中古住宅販売が低迷する住宅市場を改めて示しそうだ。契約成立件数は大きな変化が見込まれていない。住宅ローン金利は2月後半に6%近くまで低下した後、3月にはインフレ懸念で債券市場が動揺し、急上昇した。

日中

中国が16日に発表する1-3月(第1四半期)のGDP成長率は前年同期比4.8%と見込まれ、2026年の目標レンジ4.5-5%に収まる見通しだ。

同じ日に発表される3月の小売売上高と工業生産、年初来の不動産投資は、4-6月(第2四半期)に入る前の動きを示す。中東紛争による世界需要の減速が企業活動を下押しするリスクがある。

アジアで政策金利の決定は予定されていないが、日本銀行の植田和男総裁による2つのイベントが注目される。13日に28日の政策発表前最後の講演を行い、ワシントンでは16日の20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議後に記者会見を開く予定だ。

植田総裁は丁寧な情報発信を重視しており、オーバーナイトスワップ市場では今月の利上げ確率が約60%と織り込まれている中、市場認識の修正や一定の示唆を与える可能性がある。

原題:World Finance Chiefs Head to IMF With Sense of Déjà Vu: Eco Week(抜粋)

--取材協力:Beril Akman、Vince Golle、Simon Lee、Robert Jameson、Paul Richardson、Nduka Orjinmo、Lisa Abramowicz、Laura Dhillon Kane、Brian Fowler.

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