2020年SEC規則改訂(米国)
この章では米国のSecurities and Exchange Commission(証券取引委員会:以下、SEC)が2020年に定めた議決権行使助言会社に対する規制について概観する。
この規制はSEC規則改訂という形式を取り同年11月から施行された。他方、同月に実施された大統領選の結果を受けて共和党から民主党への政権交代が決まった。
改めてのSEC規則改訂で2022年に無効化されたものの、無効化が確実視されていたがため2020年11月からの短い施行期間中も実際に規制として機能することはなかったと言われている。
とはいえ2020年時点の米国で議決権行使助言会社に対する課題意識がどのようなものであったか、そしてどのような対策が望まれたかを知ることは、2025年の動向を理解する上で有益と思われる。
1)規制の根拠
議決権行使助言会社が投資家による上場会社への議決権行使に影響力を持つようになったことへの懸念が共有される一方で、ハードローによる規制には消極的な意見も関係者の間で広くみられた。
相反する2つの要請の中で、SECは投資家が持つ情報を改善することを規制の根拠とした。
2)規制の枠組み
議決権行使助言は証券取引所法の定める「勧誘」(solicitation)に該当し、よって連邦委任状勧誘規制に服するとの解釈を明文化した上で、一定の開示・手続要件の遵守を条件に、委任状説明書などのSECへの届出および株主(被勧誘者)への提供要件の適用を除外する、という枠組みに基づく。
実質的には特段の法令がない中で、議決権行使助言会社に対して一定の開示・手続要件を課すことが目的であったと言えよう。
3)規制の内容
(1) 利益相反の開示
助言を受ける投資家がその客観性や信頼性を評価できるよう、議決権行使助言会社は重大な利益相反に該当する事項を投資家に開示する義務があるとされた。
但しプリンシプル・ベースであり、重大性の判断は議決権行使助言会社に委ねられている。
開示の方法についても、助言あるいは助言を伝達する際に用いられる電子的方法のいずれかであればよいとされている。
(2) 顧客宛て助言内容の対象企業への通知
議決権行使助言会社による顧客宛て助言内容をタイムリーに対象企業に通知することが必要とされた。
議決権行使助言会社の実務負荷を勘案してプリンシプル・ベースの規制となったが、セーフ・ハーバー規定が置かれ顧客への提供と同時であれば問題なしとされた。
(3) 助言に対する対象企業からの意見の顧客宛て通知
議決権行使助言会社が行った助言に対する対象企業からの意見をタイムリーに顧客である投資家に通知することが必要とされた。
これもプリンシプル・ベースの規制となったが、セーフ・ハーバー規定が置かれ所定の電磁的方法を整備する場合は問題なしとされた。
(4) 適用除外
但し上記(2)と(3)は、助言がそれぞれの顧客である投資家固有のカスタムポリシーに依拠する場合は適用がないものとされた。
総じては、対象企業へ助言に対する意見陳述の機会を与えること、その意見を顧客に速やかに伝えることを主眼としつつも、その実務負荷がいずれ顧客の支払う手数料の増加につながりうることも視野に入れ、議決権行使助言会社の実務負荷とのバランスを取ることに腐心したものと言えよう。