2026年意見の概要―普及に向けた制度設計の改善

国務院の意見公表(3月25日)を受け、翌26日には国家医療保障局など関係当局が、試行を通じて明らかとなった課題を踏まえ、制度の普及と地域間格差の是正に向けた基本方針を示した。

これは、従来の試行段階から、全国的な制度整備を見据えた段階への移行を具体化するものである。その主な内容は以下の通りである。

(1)財源構造の見直し


まず、財源構造の見直しである。

今回の基本方針では、医療保険基金への依存を段階的に縮小し、個人負担や財政補助を組み合わせた多元的な財源構造を構築する方針が示された。

これは、介護保険を医療保険の補完的制度から切り離し、独立した社会保険制度として確立するための重要なステップと位置付けられる。

具体的には、保険料率について0.3%(前後)とする基準が提示された。都市の会社員については労使折半とし、公的医療保険料とあわせて徴収する仕組みが想定されている。

介護保険への加入は公的医療保険への加入を前提としているため、保険料徴収も医療保険制度に連動する形で行われる。これまで試行地域ごとに保険料設定が行われていたのに対し、全国的な基準が示された意義は大きい。

また、保険料が医療保険料と一体的に徴収されることから、都市の会社員の場合、制度上最も若い場合で16歳(法定就労開始年齢)から負担が生じることとなる。

この点は、40歳から保険料負担が開始される日本の制度と比較して、より早期から広く負担を求める設計となっている。

さらに、定年退職後は受給する基本年金を基礎として0.15%の保険料を納付する仕組みが示されている。

一方、都市の非就労者および農村住民については、所得水準への配慮から、当初の保険料率を0.15%とし、5年程度をかけて0.3%へ段階的に引き上げるとしている。

保険料は、当該地域の前年の都市・農村住民1人当たり可処分所得に保険料率を乗じて算出され、こちらも医療保険料とあわせて徴収される。

さらに注目されるのは、制度の統合性である。

中国の公的医療保険制度では、
(1)都市の会社員と
(2)都市の非就労者・農村住民と

で制度が分立しており、保険料や給付内容、給付水準において大きな格差が存在してきた。

これに対し、介護保険制度では、これらの異なる属性の加入者を単一の制度に加入させ、給付の均衡化を図る方向性が示されている。

すなわち、新たな社会保険として、既存制度に内在する格差を是正しようとする設計思想がうかがえる。

(2)給付の標準化

給付については、施設介護、在宅介護、地域(社区)介護といったサービス提供を中心とする現物給付を基本とし、現金給付は原則として行わない方針が示された。

これにより、専門的な介護サービスの利用を促進するとともに、家族介護への過度な依存を緩和することが狙いと考えられる。

また、制度の全国展開に向けて、給付内容の標準化が打ち出された。

新たに制度を導入する地域については、国が示したサービス提供リストに従うことが求められ、サービスの範囲を恣意的に調整・変更することは認められないとした。

一方、既存の試行地域については、今後おおむね3年程度をかけて段階的に当該リストへ収斂させる方針としている。

これにより、これまで課題とされてきた地域間の給付格差の是正が図られる。

自己負担割合についても、一定の標準化が進められている。

具体的には、保険料を相対的に多く負担している都市部の会社員については自己負担を3割(退職者も同様)とする一方、都市部の非就労者および農村住民については5割負担とした。

このように、保険料負担の水準に応じて自己負担割合に差を設けることで、制度全体の公平性と持続可能性の両立が図られている。

さらに、公的医療保険では給付に上限が設けられているのに対し、介護保険においては一定の目安を設けた上で、明確な給付上限を設定しない方針が示されている。

この点は、長期にわたる介護ニーズへの対応という制度の性格を踏まえたものであり、利用者の実態に応じた柔軟なサービス提供を可能としている。

その一方で、財政管理の在り方が今後の重要な課題となる可能性もある。

(3)制度運営の標準化

制度運営の標準化については、前述のサービス提供内容の統一に加え、要介護認定基準の統一やサービス提供機関の整備が進められることとなっている。

これにより、制度運用の地域差を縮小し、全国的な制度としての一体性と公平性の確保を図ろうとしている。

また、給付対象者については、財政制約を踏まえ、当面は重度要介護者を中心とした保障を優先的に確立し、その後、制度の成熟度に応じて段階的に対象範囲を拡大する方針が示されている。

これは、限られた財源の中で制度の持続可能性と実効性を両立させるための現実的なアプローチといえる。

さらに、制度運営の高度化に向けて、デジタル技術の活用も重視されている。

具体的には、スマート介護サービスや支援機器などを給付対象に組み込むことが検討されており、介護の効率化や質の向上を図るとともに、今後の需要増加への対応力を高める狙いがある。

その一方で、制度への加入を促進するためのインセンティブ設計も検討されている点は興味深い。

具体的には、保険料の納付期間の長短に応じて自己負担割合を調整し、継続的に加入・納付している者については自己負担を軽減する仕組みが想定されている。

他方で、制度開始時に加入しなかった場合や、保険料納付を中断した後に再加入した場合には、給付までの待機期間(原則6カ月)を設けるほか、自己負担割合を段階的に引き上げるなどの制約措置も検討されている。