三井住友フィナンシャルグループ(FG)と日本生命保険が検討を始めた買収ファイナンス向けのファンド設立構想は、日本での企業の合併・買収(M&A)市場が新たな局面に入ったことを映している。企業買収の大型化が進む中で、従来型の銀行融資だけで支えることが難しくなってきたことが背景にある。

ブルームバーグは6日、複数の関係者の話として両社が買収対象企業の資産などを担保とするレバレッジド・バイアウト(LBO)融資を中心に手掛けるファンドを設立する方向で協議に入ったと報じた。LBO融資ファンドとしては国内最大級の5000億円超の規模となる可能性もある。

日本企業を巡る非公開化や事業再編を伴う案件では、必要資金が数千億円規模に膨らむケースが増えている。企業買収で活用されるLBO融資では、三井住友銀行や三菱UFJ銀行、みずほ銀行の3メガバンクが資金の出し手として大きな役割を担ってきた。

銀行のバランスシートに限界

しかし、銀行は貸し出しの集中リスクを防ぐために、同一の企業グループ向け与信を自己資本の25%までに抑える大口与信規制を課されている。加えて、LBO融資は一般的にリスクアセットが膨らみやすく、案件規模が大きくなるほどバランスシートへの負担も重くなる。このため、大型案件では国内の銀行だけで買収資金を支え切るのが難しい場面が出始めている。

三井住友FGにとって象徴的だったのが、2024年にセブン&アイ・ホールディングスがカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けた際に浮上した対抗策だ。経営陣が参加する買収(MBO)を軸に防衛策を模索したが、総額9兆円規模に上る資金を創業家や伊藤忠商事による出資と銀行融資だけで賄うことは難しく、外資系ファンドからの資金調達も視野に入った。

だが、調達は難航し、計画は断念に追い込まれた。主力取引行として防衛策を資金面で支えようとした三井住友FGにとって、大型案件を国内資金だけで支える難しさを示す案件となった。

生保マネーによる補完

今回、三井住友FGと日生が検討するファンドは、投資と融資、その中間に位置付けられるメザニンファイナンスを合わせて5000億円超の規模を視野に入れる。銀行融資だけでは賄いきれない買収資金を、生保マネーなどで補完する枠組みだ。

生命保険会社は保険契約に伴う長期資金を持ち、安定した運用先を必要とする。銀行融資に加えて、生保が長期資金を供給する枠組みが整えば、銀行のバランスシートを補完しつつ、日本国内で大型案件を支える資金基盤となる。今回の構想は、個別案件への対応にとどまらず、投資家から集めた資金でファンドを組成し、企業などに融資するプライベートクレジットの国内市場育成につながる可能性もある。

日本では企業金融の大宗を銀行借り入れが占め、米国のように厚みのあるプライベートクレジット市場は育っていない。欧米ではプライベートクレジットファンドに対する懸念が広がりつつあるが、国内のM&A案件が大型化する中で、資金の受け皿が広がらなければ、日本企業の成長への取り組みを阻害しかねない。

三井住友FGと日生の取り組みの行方は、日本の大型買収を国内マネーでどこまで支えられるかを占う試金石となる。

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