日本では1日、防衛力強化のためのたばこ増税が始まった。政府は、不足する防衛費の財源捻出のため、減少が続く愛煙家を頼りにしている。

たばこ税は、「加熱式」の税が4月と10月に引き上げられ、「紙巻き」との差を解消する。さらに、2027年4月から29年4月にかけてたばこ全体で段階的な増税が予定されている。財務省の試算によると、一連の増税で国のたばこ税収は平年度ベースで2120億円増える見込み。増収分は防衛費に充てる。

安全保障環境が厳しさを増す中、日本は防衛力の強化を進めているが、その財源を巡っては長年判断を先送りにしてきた。歴代政権は国民に不人気な増税に慎重だった。

たばこ増税は消費税や所得税の引き上げに比べて反発は小さいものの、価格の上昇を機に喫煙をやめる人が増える可能性があり、安定財源として不確実性が残る。

たばこは品目ごとに課税額が異なっていたため、今回の措置で増税額を一律に示すのは難しいが、メーカー各社はこれを機に値上げに動いた。フィリップモリス・ジャパンは、加熱式たばこの「アイコス」専用スティックを1箱(20本入り)当たり40円値上げした。日本たばこ産業(JT)も「プルーム」専用スティックを同30円引き上げた。

政府は22年、防衛費を27年度までに国内総生産(GDP)比2%へ引き上げる方針を示したが、高市早苗首相が25年度補正予算で防衛費を上積みしたことで、この目標を2年前倒しで達成した。必要となる年間約11兆円規模の財源は、決算剰余金や税外収入の活用、歳出改革、税制措置を組み合わせて確保する。

たばこ税とともに4月からは法人税も引き上げられ、平年度で8690億円の税収増が見込まれている。さらに来年1月には所得税額の1%に相当する税が創設され、2560億円の増収を見込む。一方、同時に東日本大震災の復興財源としてきた「復興特別所得税」が1%引き下げられるため、平年度の税負担は当面変わらないと想定している。

喫煙者が減少している上、屋内や一部地域では屋外での喫煙規制が強化されている中で今回のたばこ増税に目立った反発は見られない。厚生労働省によると、24年の成人の喫煙率は約14.8%で、1989年の約23.8%から大幅に低下している。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

喫煙者である千葉県在住の会社員、秋田凌 (29)さんは、個人としてはたばこ増税に反対の立場だが、喫煙による健康被害などで社会保障費の負担増につながるなら、「国としての判断に間違いはないのではないか」と語った。たばこへの課税は当然のことであり、「その使い道が防衛費であるということにそれほど違和感はない」と述べた。

秋田さんは、値上げ前にアイコス用の「テリア」を買い足す予定だと語っていた。

過去のたばこ増税時のように、値上げをきっかけに一部の喫煙者が喫煙量を減らしたり、喫煙自体をやめてしまったりすることも想定される。税収基盤が縮小し、結果として税収不足につながる恐れがある。

SOMPOインスティチュート・プラスの小池理人上級研究員は、見込み通りの税収を確保するのは「厳しい」と指摘。「過去の例を見ても、税率が引き上げられても結局税収はあまり増えてない」と述べた。防衛費増額の重要性を踏まえると、政府はいずれ他の財源の確保を迫られる可能性があるとの見方を示した。

財務省は、価格上昇に伴う消費の減少を織り込んだ上で、年間の税収を試算していると説明している。

日本たばこ協会によると、たばこの税負担率は約62%。ビールの約42%、ウイスキーの27%と比較して負担率は高い。

加熱式たばこを愛用する事務員の纐纈奏水(27)さんは、たばこ増税は不公平だが、すぐに喫煙をやめる考えはないという。価格が「1000円に到達したら禁煙を考える」と話し、東京・渋谷のスクランブル交差点近くにある喫煙エリアを後にした。

原題:Japan Squeezes Dwindling Ranks of Smokers to Fund Defense Plans(抜粋)

--取材協力:梅川崇、石川英瑠.

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