政府は基礎年金の引上げで対応

こうした制度間の格差に対し、政府はどのように対応しようとしているのだろうか。政府は公務員の年金制度や給付の見直しではなく、給付水準の低い都市・農村住民の年金制度の底上げをはかることをまず目指している。

これは、公務員や都市の会社員の年金制度と比べて大きく立ち遅れている農村住民などの老後所得を改善することで、制度間の格差を緩和することを目的としている。

まず進められているのが、都市・農村住民年金における基礎年金の引き上げである。

政府は最低基準として月額20元程度の引き上げを進める方針を示している。基礎年金は主として国庫および地方財政によって支えられているため、この引き上げを実施するには中央政府からの財政補填の拡大に加え、地方政府による補助の増額も必要となる。

また、加入者の保険料負担を高めるためのインセンティブの強化も進められている。

都市・農村住民年金では、加入者があらかじめ設定された複数の保険料水準の中から納付額を選択する仕組みとなっているが、農村住民の多くは最低水準の保険料を選択している。

そのため、一部の地方政府では、選択した保険料が高いほど政府補助も増える仕組みを導入するなど、より高い保険料の納付を促す取り組みが行われている。

さらに、政府が近年力を入れているのが、自身で老後資金を準備する私的年金分野の拡充である。

公的年金だけで老後所得を十分に確保することが難しいとの認識から、年金保険商品、個人年金制度(個人型確定拠出年金)への加入促進など、いわゆる「多層的年金制度」の整備が進められている。

特に個人年金制度については全国展開が進められており、個人による老後資金の積立を促すことで、公的年金を補完する役割が期待されている。

もっとも、都市・農村住民が受け取る年金の水準は依然として低く、公務員や都市の会社員が受け取る年金との格差は大きい。

今後、基礎年金の引き上げと保険料負担の拡大をどのように両立させていくのか、長期的な年金財政の維持を考慮した上で、制度全体でどのように調整をしていくのかが重要な政策課題となるであろう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山ゆき)

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