米株式市場ではS&P500種株価指数が現時点で、週間ベースで4週連続安となっており、このままでは3月はここ1年で最悪の月になる。

下げがどこで止まるのかを見極めたいトレーダーが頼りにするのが、テクニカル分析の一種だ。ここ数年に起きた2つの大きな下落局面を含め、このツールは相場の底を示唆したと評価されている。しかし強気派にとっては悪いニュースがある。このツールが示す重要な支持線は、まだずっと下の方にあるということだ。

「50%フィボナッチ・リトレースメント」と呼ばれる水準がそれだ。チャート分析で用いられるこの指標は、約800年前に確立された数学原理に基づき、潜在的な買い場を探るために使われる。今回の場合、昨年4月の安値から今年1月の最高値までの上昇において、その半分を帳消しにする水準を意味する。その水準は5980であり、25日の終値を約9%下回る。

「トレンドが明確に変化すれば市場に戻ろうと、短期トレーダーを中心に特定の水準が注目される」と、ミラー・タバクの主任市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は解説する。「この50%リトレースメント水準が非常に注目されている」と述べた。

テクニカル分析は株式市場の動向や転換点を測る手段の一つにすぎず、万能ではない。S&P500種は先週、一時6500を割り込み、そこが支持線になると期待されていた200日移動平均線も下回った。このラインが支持線として機能しなかったことで、テクニカルアナリストらは新たな支持水準を模索している。

「テクニカル面から見ると、最悪期がまだ終わっていないのは明らかだ」と、BCAリサーチの米国投資ストラテジスト、ダグ・ピータ氏は話す。「ホルムズ海峡の実質封鎖が解かれ、原油や液化天然ガス(LNG)、石油製品や派生品の流通が正常なペースに戻るまでは、インフレには上昇圧力がかかり、世界経済の成長には下押し圧力がかかる可能性は高い」と述べた。

S&P500種は今週さらに下げれば、まず6200に向かう可能性があるとメイリー氏は顧客リポートで指摘。次の支持水準は5980が考えられ、この水準は50%フィボナッチ・リトレースメントであると同時に、6月中旬の安値とも一致するという。

フィボナッチ数列はイタリアの数学者レオナルド・ピサーノ(通称フィボナッチ)にちなんで名付けられた。昨年のトランプ氏による「解放の日」関税発表で市場が混乱した際にも、この手法は有効だった。S&P500種が下げ止まった4982.77は、2022年を起点にした3年間の上昇の中間点に相当した。

同様に2022年の弱気相場でも、20年3月から22年初頭にかけての上昇の50%押し付近でS&P500種は底を打った。

BTIGでテクニカル分析を率いるジョナサン・クリンスキー氏は、中東での紛争が激化するずっと前から、株式市場には軟化の兆候が現れていたと指摘する。ソフトウエアやプライベートクレジット(ノンバンク融資)の問題が、すでに影響を及ぼしていたという。50%リトレースメントの有効性について、同氏は「パズルの一片にすぎない」と述べた。ミラー・タバクのメイリー氏も、他の要因との組み合わせが必要だと指摘した。

市場が反発するきっかけとしては、イラン戦争の終結やエネルギー価格高騰の収束が挙げられる。25日の市場では、米・イランによる停戦協議の可能性が意識され、S&P500種は0.5%上昇した。

それでも、相場の中・長期的な方向性には依然不確実性が残る。

「戦争は一つの要因にすぎない」と、ボケ・キャピタル・パートナーズのキム・フォレスト最高投資責任者(CIO)は語る。「極端に変わり得る市場の見方を踏まえ、連邦準備制度理事会(FRB)の金利政策がどうなるのかという問題と、激しく変動する原油価格という問題もある。不確定要素はいくらでもある」と述べた。

原題:An 800-Year-Old Math Principle May Mark Bottom of S&P 500’s Drop(抜粋)

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