(ブルームバーグ):中東での戦争は窒素肥料の世界的な供給に大きな混乱をもたらしてきたが、足元では新たにリン酸肥料で大きな脅威が浮上しつつある。
紛争開始以降、焦点はトウモロコシに使用される主要な窒素肥料である尿素に当たってきた。戦争によりホルムズ海峡を通過する輸送が妨げられ、農家が供給確保に奔走する中、尿素の価格は急騰している。
一方、この混乱の中で見過ごされてきたのが、リン酸肥料へのリスクだ。リン酸肥料は、大豆など食料生産の基盤となる作物に不可欠となっている。
肥料研究所(TFI)によると、主要なリン酸製品3品目の世界貿易に占める中東の割合は約2割にとどまる。しかし、リン酸肥料の加工に用いられる硫酸の原料となる硫黄の世界供給のほぼ半分は、ホルムズ海峡の混乱に脆弱(ぜいじゃく)な中東諸国に依存している。
調査会社ICISで硫酸市場を担当するアンディ・ヘムフィル氏は、既存の硫黄および硫酸の在庫が消化された後、紛争が長期化すれば供給網への影響は指数関数的に拡大し始める可能性があると指摘した。
これは世界の食料供給にとって悪材料となる。リン酸は大豆からジャガイモに至るまで、あらゆる作物の生育を支えるために不可欠だからだ。今回の紛争はすでにインフレと食料安全保障への懸念を高めている。また、高い生産コストに長年直面してきた米国の農家にとって、新たな打撃となる。米国で使用されるリンの約80%は大豆とトウモロコシの生育に投入されている。大豆やトウモロコシは家畜飼料や燃料に加工される。

紛争前から、リン酸と硫黄の供給はすでに逼迫(ひっぱく)していた。硫黄価格は過去最高水準に急騰しており、その一因は銅やニッケルなどの金属抽出に硫酸を使用する鉱業からの需要だ。ロシアの輸出はウクライナ戦争と輸出禁止措置により制約され、中国も国内需要を優先してリン酸の輸出を抑制している。
米国の政策も一段の圧力となっている。2023年に導入され現在も継続しているモロッコ産リン酸への関税や、トランプ大統領が昨年導入した広範な関税措置により、輸入は制限されている。
ストーンXグループの肥料担当バイスプレジデント、ジョシュ・リンビル氏は「リン酸は戦争前から多くの問題を抱えており、今回の戦争が状況をさらに悪化させた」と指摘。「現在の尿素や窒素よりも状況はさらに悪い可能性がある」との見方を示した。

原題:Fertilizer Shock Escalates as New Supply Risks Emerge(抜粋)
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