米国や日本、ユーロ圏、英国など主要各国・地域の中央銀行は今週、米国・イスラエルとイランの軍事衝突開始後としては初めてとなる金融政策決定会合を相次ぎ開く。2月28日に始まった中東紛争の経済への打撃を評価する。

今後1週間に予定される政策判断は、主要7カ国(G7)全てと、世界で最も取引量の多い10通貨のうち8通貨の国・地域をカバーする。新たなインフレショックへの懸念が高まり、一層の慎重姿勢を促していることを確認する可能性が高い。

米国での利下げを完全に織り込んでいた金利見通しは後退した。一方、英国とユーロ圏では年後半の利上げの可能性が市場で織り込まれつつある。こうした変化を受け、金融当局はこれらの見方がどの程度正当化されるのか説明するよう迫られる見通しだ。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏らは「米連邦準備制度にとって、紛争の展開に左右される部分が大きい」とし、戦争が早期に終結すれば、失業率は小幅上昇し、変動の大きいエネルギーと食料品を除くコアインフレ率は鈍化すると予想する。

「その場合、今年は計100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度の利下げが可能になるだろう」と指摘する一方、「紛争が長期化し、エネルギー価格の高止まりやインフレ期待の上昇を招けば、判断ははるかに難しくなる」との見方を示した。

トランプ氏の政策が世界の中銀を一斉に揺さぶるのは、自身が「解放の日」と呼んだ昨年4月2日に発表した包括的な関税措置以来となる。各国・地域の金融当局は今後数カ月にわたり神経の張り詰めた状態が続きそうだ。

FRB

パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局は17、18日両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で政策金利を据え置くと広く予想されている。ただ、据え置きが数カ月続く可能性があるとしていた構図はこのところ揺らいでいる。労働市場の新たな動揺に加え、中東での戦争が原油相場の急上昇を招いたことが背景にある。

雇用情勢とエネルギー価格のこの組み合わせにより、連邦準備制度の二つの責務である物価安定と最大限の雇用の実現が相反する状況となり、少なくとも当面の金利見通しは不透明になっている。

短期金融市場では、年内に0.25ポイントの利下げが実施される確率が90%と織り込まれており、時期としては9月以降の可能性が高い。

米労働省労働統計局(BLS)は18日、2月の生産者物価指数(PPI)を公表する。エコノミストは、サービス価格が急上昇した1月と比べ、上昇幅は小さくなると見込んでいる。このほか、2月の鉱工業生産(16日)と1月の新築住宅販売(19日)も発表される。

日銀

日本銀行も18、19両日の金融政策決定会合で政策金利の据え置きを決めると予想されている。一方で、引き続き金融政策正常化に向けた道筋にあることを市場に強調する見通しだ。

日本が中東からの原油輸入への依存度が高いことを踏まえ、植田和男総裁は情勢の推移を注意深く見極める必要性を強調する可能性が高い。

原油相場が高止まりすれば日本経済に打撃となる一方、インフレ圧力を強める要因にもなる。日銀はまた、過度にハト派的な姿勢を示した場合に円安が一段と進むリスクも見極める必要がある。円は13日、対ドルで2024年以来の安値を付けた。

トレーダーは、日銀の当面の金融政策運営についての発表と植田総裁の記者会見での発言を手掛かりに綿密に分析を進める見通しだ。投資家は特に、4月までに利上げが行われる可能性を注意深く見極めようとしている。

トレーダーは7月までに0.25ポイントの利上げを1回見込んだ上で、さらに12月までに2回目の利上げが実施される確率を90%と織り込んでいる。

ECB

欧州中央銀行(ECB)は中銀預金金利を据え置くとの見方が広がっている。ただ、中東危機により、ラガルド総裁らがこれまで政策は「良好な状態」にあるとしてきた状況は、ほぼ崩れた形だ。

エネルギー価格の急騰は利上げ観測を強めており、ECB政策委員会には、インフレリスクがどのように変化したのかを説明する必要が生じている。同時に、市場の予想にどの程度近づいているのかを示す手掛かりも求められている。

投資家は現在のエネルギーショックと、ロシアによるウクライナ侵攻後の22年の危機との類似点に注目している。当時、ECBは市場からの利上げ圧力に強く抵抗したことで際立っていた。ECBは今回、過去の過ちを繰り返さないよう努める一方で、利上げを急ぐ公算も小さいと考えられる。

トレーダーはつい最近まで1年間の金利据え置きを想定していたが、現在はECBが年内に少なくとも1回の利上げを実施すると見込んでいる。7月以降には0.25ポイントの利上げが完全に織り込まれており、金利スワップ市場の動向は年末までに2回目の利上げが行われる確率を70%と示唆している。

原題:Trump’s War Jolts Global Central Banks From Fed to ECB: Eco Week(抜粋)

--取材協力:Charlie Duxbury、Ragnhildur Sigurdardottir、Paul Richardson、James Hirai、Bastian Benrath-Wright、Christopher Condon、Swati Pandey、Laura Dhillon Kane、Vince Golle、Robert Jameson、藤岡徹、Yian Lee、Isobel Finkel.

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