米アンソロピックの最先端の人工知能(AI)モデルについて、外国からのアクセスを禁止するとした米トランプ政権の措置を受け、世界の首脳はテクノロジー競争での自国の立場について、改めて懸念を強めている。

米政府は12日、アンソロピックに対し、同社の最先端AIへの外国人のアクセスを遮断するよう命じた。AI技術に対して広範かつ前例のない権限を主張する規制だ。

それまで欧州にとって、米国製テクノロジーへのアクセスを失うリスクは、机上の空論に過ぎなかった。だが今、多くの欧州関係者は、米国製AIに代わる選択肢を早急に確保する必要性に迫られている。

フランスのルコルニュ首相は16日、公共サービスに国内AIスタートアップのミストラルAIを基盤としたツールを導入すると発表した。フランス国内情報機関DGSIが、米ソフトウエア企業パランティアの後継として、国内企業のチャップスビジョンを選定したことも明らかにした。

ルコルニュ氏は、「フランスは独自のツールを持たなければならない。ここ数日で見たように、アンソロピックのモデルへのアクセスを遮断できるようなパートナーの善意には頼れない」と語った。

イラン戦争やトランプ氏の北大西洋条約機構(NATO)に対する関与が揺らぐ中、米国の同盟国は、今度はホワイトハウスが必要とあれば海外向けAI販売を停止できる時代に直面することになった。

米政府はこれまでも、AI向け半導体へのアクセスを制限するため、同様の輸出規制を活用してきた。

フランスのマクロン大統領が議長役を務めるエビアンでの主要7カ国(G7)首脳会議では、AIが主要議題の一つだ。ブルームバーグが確認した声明草案によると、各国首脳は「特に金融分野におけるAIの新たな機会と潜在的リスクについて、さらに議論する」としている。

米国の規制は、アンソロピックの「ミュトス(Mythos)」と「フェブル(Fable)」モデルが対象で、銀行や法律事務所、政府機関が導入を急いでいるソフトウエアが影響を受ける。

AI戦争

フランス国際関係研究所(IFRI)の研究員で米国テクノロジー政策を担当するマチルド・ヴェリエ氏は、「米国外の誰もが懸念していたリスクが現実化したものだ」と語った。ドイツのアレクサンドラ・ギーゼ欧州議会委員は「この輸出規制は、米政府が欧州を友人や同盟国ではなく敵と見なしていることを示している」とコメントした。

欧州、中東、カナダでは、最先端AIモデルを提供するような米テック企業と同規模の企業の育成が難航している。多くの企業や政府機関は米国製サービスを選ばざるを得ず、トランプ政権の判断に左右されやすい立場に置かれている。

フランスのアタル元首相は週末、「AI戦争はすでに始まっている」と発言した。一方、急進左派のメランション国民議会(下院)議員は、「フランスが米国のデジタル植民地になることを拒否する」と述べた。英国、カナダ、欧州連合(EU)の当局者も懸念を表明している。

カナダのカーニー首相は、今回の規制について、特定のAIモデルへの過度な依存が国家をぜい弱にすることの表れだと指摘した。カーニー氏は今年、英国、カナダ、欧州諸国に韓国や日本を加えた「中堅国連合」を提唱し、コンピューティング資源の共有やサプライチェーン上の企業を交渉材料として活用する構想を打ち出した。

ロンドンに拠点を置くAIシンクタンク「センター・フォー・トゥモロー」のデックス・ハンタートリッケ会長は、核融合や商用量子コンピューティングなど、米国や中国が先行する先端的な技術でも、同様のことが起きる恐れがあると述べた。

ハンタートリッケ氏は、グーグルの人工知能(AI)研究部門、DeepMind(ディープマインド)の元幹部で、「私たちは米国と中国の意向や利益に左右されることになる」とし、「将来の自律性を維持したいなら、すべての指導者は別の選択肢の必要性を認めなければならない」と語った。

ヴェリエ氏は、欧州で唯一の大規模AIモデル開発企業ミストラルAIについて、長期的には今回の規制の恩恵を受ける可能性があるとの見方を示した。ミストラルAIは今回の規制についてコメントを控えた。

アンソロピックと競合するカナダAI企業コヒアのジョエル・ピノー最高AI責任者(CAIO)は今週、ブルームバーグテレビジョンで、米政府の輸出規制以降、「非常に多くの」問い合わせが寄せられていると語った。

シリコンバレーの主要AI開発企業は、自社の技術を主として西側民主主義国とその同盟国向けに提供することに関心があると主張してきた。米OpenAIは、アンソロピックに対するトランプ政権の輸出規制について、コメントを控えた。

フランスのAIスタートアップ、データイクのフロリアン・ドゥトー最高経営責任者(CEO)は、米政府によるアンソロピック規制について「欧州にとって素晴らしい機会だ」と評価した。

同氏は、今回の措置が欧州独自のAIモデルへの投資を促す契機になる可能性があると指摘し、「合理的な企業が他国に拠点を置く単一のAIモデルだけに依存することは、もはや不可能だ」と強調した。

原題:Trump’s Anthropic Crackdown Sets Off AI Alarms for US Allies(抜粋)

--取材協力:Benoit Berthelot.

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