家の中から始まった変化
背景の一つは、コロナ禍を経た生活様式の変化です。在宅時間の増加は、生活空間のあり方を見直すきっかけとなりました。
テレワークはピーク時より減少したものの、「家の中でどう過ごすか」という視点は、その後も消費のテーマとして残っています。
単なる部屋着ではなく、着心地や機能性を重視したルームウェアへの関心が高まったのも、その延長線上の動きといえるでしょう。
リカバリーウェアは、そうした変化を象徴する商品です。
同時に、健康志向の高まりも重要な背景です。
コロナ禍では「免疫力」「睡眠」「腸活」といった言葉が広く注目され、セルフケアへの関心が高まりました。
総務省「家計調査」によると、世帯あたりの実質の消費支出は減少している一方、保健医療費は緩やかな増加を続けています。
高齢化の影響は大きいものの、家計の中で「健康」に関わる支出が一定の比重を保っていることは確かです。
物価上昇が続く中でも、自分の状態を整えるための出費は比較的手放されにくいと見られます。

眠りを整えるという選択
睡眠への関心の高まりも見逃せません。
OECDの統計によると、日本人の平均睡眠時間は加盟国の中でも短い水準にあります。
総務省「令和3年社会生活基本調査」を見ても、特に働く世代の睡眠時間は十分とは言い難い状況です。
こうした現実の中で、近年は「眠りの質」に目を向ける動きが広がっています。睡眠は単なる休息ではなく、日中のパフォーマンスや健康維持の基盤であるという認識です。
眠りを削るのではなく、整えるものとして捉える考え方が浸透しつつあります。
眠りを「投資」と考える言葉も聞かれるようになりました。リカバリーウェアは、そうした睡眠・回復への関心の広がりの中で登場している商品といえるでしょう。
民間調査によれば、スリープテックや高機能マットレスなどを含む睡眠関連市場は拡大傾向にあり、リカバリーウェア市場は2024年に約189億円、2030年には1,700億円規模に達するとの予測もあります。
もっとも、8兆円を超えるアパレル市場全体と比べれば、まだ成長の初期段階にあるといえるでしょう。
