(ブルームバーグ):イランの最高指導者ハメネイ師が殺害されたことで、今後のイランの権力構造がどうなるのかに注目が集まっている。
イラン指導部の権力は、複数の評議会や司令官、聖職者、文民らにまたがって慎重に分散されている。選挙で選ばれるのか、任命されるのかは役職によるが、いずれも最高指導者の監督下で影響力を競い合う構図だ。
ハメネイ師を含む複数の幹部らが殺害され、生き残りに向けて重要な局面を迎えたイランの政権を支えるのは今、どのような顔ぶれなのか。主要人物を以下にまとめた。
モジタバ・ハメネイ
- 役職:新最高指導者
- 政治的立場:保守派
イランの聖職者で構成する「専門家会議」は、ハメネイ師の次男モジタバ師を後継の最高指導者に選出した。国内での強硬路線と反米外交を継続する姿勢を示した形だ。
モジタバ師は、高齢の父親の健康状態を巡って憶測が広がる中、存在感を近年強めてきた人物だ。
イランの革命防衛隊や、ヒズボラ、ハマスといった各地の民兵組織と近い関係にあるとみられる。テヘランからドバイ、フランクフルトに広がる大規模な金融ネットワークを通じ、海外に巨額の資産を築いてきたことが、ブルームバーグの1月の調査報道で明らかになっている。当時、モジタバ師はコメント要請に応じなかった。
アリ・ラリジャニ
- 役職:最高安全保障委員会(SNSC)事務局長
- 政治的立場:保守派
政権内で強い影響力がある人物。革命防衛隊の元司令官として、軍事組織の指導部と太いパイプを持つ。元国会議長で、核問題担当特使も務めた。
ラリジャニ氏は、故ハメネイ師と近い関係にあった。ただ、2024年の大統領選では、聖職者による審査機関によって立候補を阻まれた。直近の弾圧に関与したとして、米国からは追加制裁を科されている。
昨年8月にイランの安全保障機関のトップに就任して以降、ラリジャニ氏の存在感は高まっている。米国との核協議では、重要な役割を果たしてきた。戦争が始まってからは、米国側との対話を模索する動きに関与したと取り沙汰されたが、ラリジャニ氏はこれを否定している。
マスード・ペゼシュキアン
- 役職:大統領
- 政治的立場:改革派
大統領の正式な役割は、主に国内の経済政策に限定される。
モジタバ師が最高指導者に選出されるまで、統治を担った暫定指導評議会のメンバー3人のうちの1人でもあった。
改革派のペゼシュキアン氏は、強硬派のライシ前大統領の死去を受けて、2024年に選出された。最近では、大規模デモを受けてハメネイ師に国民の不満に対応するよう促したが、実現しなかった。これは影響力の限界を示す一例と言える。
モハマドバゲル・ガリバフ
- 役職:国会議長
- 政治的立場:保守派
ガリバフ氏は国会議長として最高安全保障委員会の有力メンバーでもあり、昨年6月のイスラエルおよび米国との12日間の戦争以降、その存在感を高めている。
テヘラン市長や革命防衛隊司令官を務めた経歴を持つ。これまで複数回大統領選に出馬したが、いずれも大きな支持は得られなかった。最近の抗議デモを巡っては、米国とイスラエルが画策したものだと主張し、鎮圧した革命防衛隊を称賛した。
アフマド・バヒディ
- 役職:革命防衛隊司令官
- 政治的立場:保守派
バヒディ氏は革命防衛隊の古参で、内相や国防相を歴任した。
1994年のブエノスアイレスにあるユダヤ人コミュニティーセンター爆破事件への関与容疑で国際刑事警察機構(インターポール)から「赤手配書(レッドノーティス)」が出ている。また、米国は2022年のイランでのデモ弾圧を監督した役割を理由に制裁を科している。
前任のモハメド・パクプール司令官が、今回の戦争で殺害されたことを受け、副司令官から昇格した。
アッバス・アラグチ
- 役職:外相
- 政治的立場:穏健なテクノクラート
国内外で評価の高い経験豊富な職業外交官で、現実主義的なテクノクラートとみられている。
アラグチ氏は複数の政権で要職を務め、米国との対話を推進し、核交渉を主導してきた。一方で直近の交渉では、必要とあれば戦争の用意があると警告した。革命防衛隊の元メンバーで、イランの中核政策を強く支持している。
ゴラムホセイン・モホセニエジェイ
- 役職:司法府代表
- 政治的立場:強硬保守派
司法府トップであり、暫定指導評議会の2人目のメンバー。
モホセニエジェイ氏は最高指導者に任命された聖職者で、ハメネイ師の執行者とされてきた。検事としては、反体制派や異論を唱える人々を標的にした。情報相としては、学者や研究者を逮捕することで、同氏が「ソフトな体制転覆」と呼ぶ動きを摘発した。
欧州連合(EU)と米国からは、人権侵害を理由に制裁を科されている。今年1月には、抗議参加者の訴追を加速させると表明した。
アリレザ・アラフィ
- 役職:暫定指導評議会メンバー
- 政治的立場:体制忠誠派
暫定指導評議会の3人目のメンバー。
大統領と司法府代表が憲法に基づき自動的に任命されるのとは異なり、アラフィ氏は裁量で選ばれた。最高指導者の諮問機関である公益判別会議によって選出され、エリート層の強い支持を示した。
ハメネイ師に連なる強固な忠誠派とみられる。一般にはあまり知られていない人物だが、宗教研究の中心地コムで金曜礼拝を率いるなど、聖職者としての実績は厚い。
また、アラフィ氏はコムのアルムスタファ国際大学を率いていた。同大学は革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」の勧誘基盤になっているとして、米国の制裁対象となっている。
ハッサン・ホメイニ
- 役職:後継候補
- 政治的立場:穏健な忠誠派
1979年のイラン・ イスラム革命後、初代最高指導者に就いたホメイニ師の孫。
体制への忠誠を示す一方、ハメネイ体制下で次第に権力中枢から排除されてきた改革派と関係が深いことから、比較的穏健と受け止められている。
原題:Who’s Who in Iran? Guide to the Islamic Republic’s Top Leaders(抜粋)
--取材協力:Chris Miller、Yasufumi Saito、Paul Richardson、日高奈緒.
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