キャラクターが提供する8つの精神的効用
さて、前述したバンダイキャラクター研究所ではキャラクターが提供する精神的効用を
①やすらぎ、
②庇護、
③現実逃避、
④幼年回帰、
⑤存在確認、
⑥変身願望、
⑦元気・活力、
⑧気分転換の8つに分類している。
なかでも庇護、現実逃避、幼年回帰といった効用は消費者自身が社会に対する不安やストレスを解消する対象としてキャラクターを位置づけており、人々は、キャラクターから活力を得る、慰められる等の経験を通し、絆を形成しているとしている。

SNSの投稿を見ると、人形やぬいぐるみを持ち歩いて自身の日常生活に溶け込ませたり、お守り代わりに人形を持ち歩いている人々が多数いることを確認できるが、筆者は、キャラクターが一種のライナスの毛布としての機能を持っていると考えている。
ライナスの毛布とは、チャールズ.M.シュルツの代表作である漫画『ピーナッツ(スヌーピーが登場する作品)』に登場するライナスという男の子が、いつも肌身離さず毛布をもっていることに由来する。
精神分析学や小児科学では、移行対象と呼ばれることもあり、乳幼児が特別の愛着を寄せるようになる、毛布、タオル、ぬいぐるみなどの総称である。これは、幼少期特有の行動であり、幼児は母親の代わりとして、ぬいぐるみや毛布を持つことで安堵感を得ている。
彼らにとってキャラクターはライナスの毛布の機能をもち、現実社会におけるストレスから庇護、現実逃避、幼年回帰することのできる存在となっているのである。
併せて、キャラクターや推しのグッズを外出先に持ち歩き、日常風景のなかに溶け込ませて撮影する行動が広く確認できる。2017年頃から浸透した「ぬい撮り」文化は、ぬいぐるみを友人や家族のように扱い、共に出かけ、その体験を記録する行為である。
キャラクターは物語の中だけの存在ではなく、日常生活をともにする存在へと変わっていった。こうした動きは、ぬいぐるみに限らない。近年ではアクリルスタンド(いわゆる“アクスタ”)を携帯し、カフェや旅行先で撮影することも一般化している。
好きなものを日常空間に持ち込む行為は、単に「囲まれる」段階にとどまらない。
それを積極的に外部へと示す実践として、缶バッジやマスコットで鞄を装飾する、いわゆる「痛バッグ」の文化が広がってきた。痛バッグは単なる装飾ではなく、自身の嗜好や帰属意識を可視化するメディアである。
痛バッグに限らず、好きなものを身に着けたり持ち歩いたりすることは、自らの嗜好を確認し、それに囲まれているという感覚を強める行為でもある。その結果、自己肯定感の向上や、日常を乗り切るための動機づけにつながる。
とりわけ、仕事や勉強といった義務的な活動に対して負荷や倦怠を感じやすい現代において、好きな対象を携えることは、日常の緊張を緩和し、前向きに行動するための小さな支えとして機能している。
また、その嗜好を他者に示すことで承認や共感を獲得するという社会的機能もあり、個人的な愛着と社会的なコミュニケーションが交差する機能も擁している。