トランプ米大統領は、イランでの戦争を受けて原油やガソリン価格が急騰する中、対応策の選択肢を検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。

原油価格は9日の取引で一時1バレル=100ドルを突破。その後は値動きの荒い展開の中で上げ幅を消した。米国内のガソリン小売価格の平均は、2024年8月以来の高水準に上昇した。

関係者によると、トランプ政権当局者がここ数日協議している措置には、緊急備蓄の放出、連邦ガソリン税の徴収停止、財務省による原油先物市場への関与が含まれる。非公開の協議内容であるため、関係者は匿名を条件に語った。

ガソリン税の停止には議会の承認が必要となる。2022年には当時のバイデン大統領が同様の措置を求めたが、実現できなかった。財務省による原油先物市場への関与については、有効性や具体的な仕組みについても疑問が残る。

「ホワイトハウスはこの重要な問題について関係機関と常に連携しており、大統領にとって最優先事項だ」とホワイトハウスのロジャーズ報道官は声明を出した。イランを巡っては「トランプ大統領とエネルギーチームは、軍事作戦エピック・フューリー(壮絶な怒り)開始前からエネルギー市場の安定を維持するための強固な戦略を持っており、今後も現実的なあらゆる選択肢を検討し続ける」とした。

通常時には世界の原油の約5分の1が通過するホルムズ海峡は、戦争の影響でほぼ停止状態にある。国際指標の原油価格は9日、一時1バレル=120ドル近くまで急騰し、イラン戦争開始以降で60%以上上昇した。その後、世界の主要経済国が協調して緊急石油備蓄を放出する動きを受け、北海ブレント原油は上げ幅を縮小した。

トランプ氏は9日、ニューヨーク・ポスト紙とのインタビューで、エネルギー価格への懸念に対処する計画があると主張したが、詳細は明らかにしなかった。またCBSに対し、ホルムズ海峡では船舶の往来が増えているとした上で、「それを掌握することを考えている」と語った。

石油備蓄の放出

ホワイトハウスは、戦略石油備蓄(SPR)の活用を検討している。備蓄は1970年代の石油危機を受けて創設された。現在の備蓄量は原油4億1500万バレルで、貯蔵能力の約60%に相当する。

備蓄を放出する場合には、他国と協調して実施される可能性がある。主要7カ国(G7)の閣僚は9日、必要であれば石油備蓄を放出する用意があると表明したが、「現時点ではその段階にない」との認識を示した。米国は最大4億バレルの協調放出を支持していると、CNBCは報じている。

G7は声明で、「エネルギー市場の状況と動向を引き続き注意深く監視し、情報交換およびG7内や国際的パートナーとの協調のため、必要に応じて会合を開く」とした。「備蓄放出などを通じた世界的なエネルギー供給の支援を含め、必要な措置を講じる用意がある」と表明した。

この声明は市場の不安を和らげたもようだ。トランプ政権当局者はこれまで、米国単独での放出案に慎重な姿勢を示してきた。

共和党は過去に、バイデン前大統領の下で実施された備蓄放出を強く批判していた。これには、ロシアの2022年のウクライナ侵攻後、ガソリン価格引き下げを目的に1億8000万バレルを放出した措置も含まれる。

もっとも、国際エネルギー機関(IEA)加盟国と協調した場合であっても、中東での戦争の期間やホルムズ海峡の混乱の程度によっては、放出の効果は限定的となる可能性があるとアナリストは指摘する。また、備蓄から原油を市場に供給できる速度も制約要因だ。

他の選択肢は

トランプ氏のその他の選択肢としては、連邦ガソリン税の徴収停止を求めることが挙げられる。税率はガソリンが1ガロン当たり18.4セント、ディーゼルが24.3セントだ。

こうした措置は消費者負担を軽減する一方、道路や橋、公共交通の財源となる政府の主要基金から数十億ドル規模の歳入を減少させる可能性がある。

一方、トランプ氏が現時点で排除したとみられる選択肢の1つが、イラン産原油の差し押さえだ。トランプ氏は9日、NBCニュースに対し、「確かにそうした話は出ている」としながらも、そのような措置を議論するのは時期尚早だと述べた。

価格急騰を和らげるためにはさまざまな選択肢があり得るが、供給が20%失われた場合の影響を相殺できるものはないと、コンサルティング会社ラピダン・エナジー・グループのボブ・マクナリー社長は指摘する。

「私の知る限り、どの政策手段もそれに近づくことはできない」とした上で、「ホルムズ海峡の航行再開に代わるものはない。それがすべてだ」とマクナリー氏は語った。

原題:Trump Weighs Several Options to Tame Surging Gasoline Prices(抜粋)

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