(ブルームバーグ):米国債や円、スイス・フラン、金といった伝統的なセーフヘイブン(安全な避難先)資産が今週売られている。一方、安全通貨としての地位が疑問視されつつあったドルは、主要資産の中で数少ない値上がりとなっている。
かつて確実な避難先と見なされていた資産が、中央銀行の政策や経済成長見通しの変化、さらには市場参加者の思惑によって急速に魅力を失い得ることを、今回の値動きは示している。
コメルツ銀行の金利・クレジット調査責任者クリストフ・リーガー氏は、「リスクオフの動きはもはや以前とは違う。すべての政策オプションが供給拡大と利下げ回避を伴う危機では、『安全資産』はヘッジとして機能しない。合理的な値動きもあれば、そうでないものもある」と述べた。
米国債
市場が混乱する局面では、米国債は世界で最も安全な資産とされてきた。しかし、原油や天然ガス価格の急騰によるインフレ圧力が、その需要を押しのけた。
10年債利回りは今週、20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、昨年4月の米関税措置を巡る混乱以来の大幅な上昇となる見通しだ。先月は1年ぶりの大幅低下を記録していたが、様相は一変した。
インフレ懸念を受け、トレーダーは利下げ回数も減ると想定。金利スワップ市場では現在、0.25ポイントの利下げが1、2回織り込まれており、1週間前の最大3回から後退している。
金
金もさえない展開だ。今週は3.5%下落。ドル高や金利上昇観測が重しとなった。利子を生まない金は通常、金利が低い局面で相対的に魅力が高まる。
ロシアによるウクライナ侵攻後にも同様の動きが見られた。当時はエネルギー価格が急騰し、金利見通しやドルも上昇、その後数カ月にわたり金は下落した。2022年のこうした局面を参考にするトレーダーもいる。
また、金は昨年8月中旬以降で約54%上昇しており、投機的な取引が活発化し、ボラティリティーが極めて高い水準にある。
円
円相場もエネルギーが鍵だ。日本は原油輸入の9割余りを中東に依存しており、その多くが戦争により事実上封鎖されたホルムズ海峡を通過し日本に運ばれる。
さらに、春闘での賃上げ要求もあり、インフレが加速し始めている。
こうした状況は、日本銀行による積極的な引き締めを正当化する需要主導型の物価上昇ではなく、スタグフレーションの様相を呈している。その結果、円は今週、対ドルで約1%下落している。
片山さつき財務相は4日、過度な為替変動を抑制するため、市場介入を含め対応する可能性があると改めて表明した。
スイス・フラン
スイスは低い債務水準や慎重な政策運営、政治的中立性を背景に、この1年セーフヘイブン通貨の代表格となってきた。ただし市場混乱局面では、当局が過度なフラン高を抑えるため介入に積極的な姿勢を示していることが弱点となる。
スイス国立銀行(中央銀行)のマーティン副総裁は、中東情勢の混乱の中でフラン高を抑制するため、介入する用意があると発言。
その結果、フランは今週、対ドルで1.5%下落した。同副総裁は安全資産への逃避がフランを押し上げ、ゼロ近辺にとどまるインフレ率をさらに抑制しかねないと懸念している。
一方、バークレイズの為替ストラテジストは、投資家に対し円売り・フラン買いを推奨した。両通貨ともエネルギー価格リスクに直面しているが、相対的にはフランの方が有利な立場にあるという。
米国証券振替保管機構(DTCC)のデータによると、対ドルのオプションフローもフランの底堅さを示している。
原題:Long-Trusted Haven Trades Are Failing as Gold, Treasuries Fall(抜粋)
--取材協力:Greg Ritchie、グラス美亜.
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