(ブルームバーグ):日本銀行は16日に半年ぶりの利上げを決め、市場の混乱回避に成功した。入院中の植田和男総裁の代理を務めた内田真一副総裁も会見を無難にこなし、円相場の値動きは決定会合当日としては2021年以来の低水準にとどまった。
内田氏は会見で、今後の利上げペースについて、今後の経済・物価情勢次第とし、当面は中東情勢が金融・為替市場や国内経済・物価に及ぼす影響を注視する必要があると指摘。今後も利上げで緩和度合いを調整していくとし、年内利上げに含みを持たせながらも、時期やペースは明言を避けた。
マーケットコンシェルジュの上野泰也代表は17日付のリポートで、「日銀の利上げペースが加速していかないことが円売り材料だとみている向きが少なくない」中で、内田氏が「日銀のスタンスの無難な説明にとどめ、市場につけ入る隙を与えなかった」とし、「うまくこなした感が強い」と評価した。
16日のドル円相場は、日中高値と安値の差が43銭と、決定会合の結果発表日としては21年1月以来の狭い値幅となった。市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を控え、様子見姿勢が強まる。
一方、円相場を支えるため当局が介入に踏み切る可能性にも警戒感が残っている。日経平均株価は日銀の結果発表後に上昇に転じ、初の7万円台に乗せる場面があった。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは17日付のリポートで、内田氏は「普通のタカ派」的なコミュニケーションが中心だったが、理路整然とした安定感のある答弁に終始したと指摘。その上で、「特定のワーディングに反応するような為替レートの動きはほぼ見られず、記者会見を無難に乗り切った」と評価した。
植田総裁は肝嚢胞感染症の治療のため、2週間程度の入院が予定されている。決定会合には書面で意見を提出したが、議決には参加しなかった。内田氏も25年11月に白血病の治療のため入院し、先月退院したばかりだが、入院中も病室や執務室から遠隔で決定会合での議決に加わっていた。
SBI FXトレードの上田真理人取締役は会見について、一番現場を知る人が論理的かつ簡潔な言葉で現況を説明し、質問にも丁寧に答えており、「満点に近い」と評価。インフレの上振れリスクに触れつつ、緩和的な金融環境にも言及するなどバランスが取れ、利上げを加速させるかとの問いにも明確な回答は与えなかったと語った。
内田氏は1986年に東京大学法学部を卒業し、日銀に入行。金融政策の企画・立案を担う企画局を中心に歩んだ日銀のエース。入行後にハーバードロースクールへの留学経験も持つ。企画局の担当理事から2023年3月に副総裁に就任し、元金融庁長官の氷見野良三副総裁とともに植田総裁を支えている。
ブルームバーグ・エコノミクスの木村太郎シニアエコノミストは、内田氏は「ロジック」を強調する場面が目立ち、植田総裁にみられる経済学的な説明の色合いはやや薄いと分析。バックグラウンドである法学の素養を反映しているとみる。メッセージが市場でさまざまに受け止められ、一部混乱を招くリスクは低いと指摘する。
(8段落目に市場関係者のコメントを追加して更新しました)
--取材協力:間一生、日向貴彦.
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