(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は4日、原油相場の上昇が続けば基調的な物価を押し上げる可能性があるとの見解を示し、中東情勢とそれが経済・市場に及ぼす影響について引き続き注視すると語った。衆院財務金融委員会で答弁した。
中東情勢の緊迫化による日本経済への影響について、原油価格の上昇によって交易条件が悪化し、「景気や基調的な物価上昇率に下押し圧力となる可能性がある」と語った。一方、原油価格上昇が続く場合は、中長期的な予想インフレ率の上昇につながり、基調物価を押し上げる可能性にも言及した。
先行きの金融政策運営については、中東情勢を注視しながら、日銀による経済・物価の中心的な見通しが実現していけば、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことが適当」との認識を改めて表明。緩和的な金融環境を維持することで、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を目指しているとも語った。

米国とイスラエルのイラン攻撃を受け、内外経済の先行きに不透明感が広がっており、原油価格の急騰や株式相場の下落など市場も不安定化している。植田総裁は、中東情勢の緊迫化が日本の経済・物価に与える影響に警戒感を示しつつ、経済・物価の改善に応じて利上げを続けていく姿勢を示した。
円安と長期金利
植田総裁は、足元の円相場をどう評価するかとの質問に対し、「金融政策の目的はあくまで物価の安定で、為替相場のコントロールではない」とし、具体的な言及を控えた。ただ、「物価の安定を達成する上で、為替レートの変動が現在から将来の物価に与える影響という点には注意を払っている」と語った。
また、2%を超えて上昇している長期金利の動向に関しては、適切な金融政策が行われる下では債券市場に大きな混乱はないが、適切なペースで短期金利の調整が行われなければ、物価の上振れによって長期金利も上振れるリスクがあると説明。市場との丁寧なコミュニケーションに努めていきたいと述べた。
実質賃金の上昇率の安定的なプラスを政府との共同声明に明記すべきとの指摘には、金融政策で労働生産性に働きかけることはできないとし、「実質賃金を金融政策の目標とすることはなかなか難しい」と答弁した。
その上で、今年の春闘は「幅広い企業でしっかりとした賃上げが実施される可能性が高い」とし、実質賃金は徐々にプラスに転化していくとの見方を示した。
(植田総裁の発言を追加し、更新します)
--取材協力:氏兼敬子.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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