(ブルームバーグ):イランを巡る情勢の悪化は、世界経済にどのような影響があるのか。エコノミストたちは、打撃を受ける国がある一方で、恩恵を受ける国もあるとの分析を示している。
米国とイスラエルがイラン攻撃に踏み切ったことで、原油価格は急上昇した。投資家は金などの安全資産へ逃避し、株式は下落。とりわけ外貨準備が乏しく経済規模が小さめの国々は脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれている。
トランプ米大統領の関税発動や人工知能(AI)が労働市場に及ぼす影響を巡る不確実性の高まりの中で持ちこたえてきた世界経済にとって、今回の中東情勢の急激な緊張の高まりはさらなる不透明要因を加えるものとなる。
原油価格への影響は
世界経済への主な波及経路は原油だ。
北海ブレント原油先物は一時13%上昇し、1バレル=82ドルを上回った。2025年1月以来の高値となったが、2日のアジア取引では上げ幅を縮小した。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のジアド・ダウド氏とディナ・エスファンディアリー氏は、アジアでの取引開始前に公表したリポートで、イランは世界の原油供給の約5%を占めており、供給が全面的に停止すれば価格は約20%押し上げられると指摘した。さらに、世界の原油供給の約20%がホルムズ海峡を通過しており、同海峡が封鎖されれば価格はバレル当たり108ドルまで急騰する可能性があると警告した。
こうした原油高が持続すれば、中国や欧州、インドなどの主要輸入国に打撃となる一方、ロシアやカナダ、ノルウェーといった輸出国が恩恵を受けるとも分析している。米国については、燃料コスト上昇が家計所得を圧迫し消費者に不利に働くが、シェール開発によって純輸出国となっているため、経済全体への下押し圧力は比較的限定的だとした。
もっとも、影響の規模は今後の展開に大きく左右される。アナリストたちは、イランの対応は今後もエスカレートすると予想していると述べた。
「米国の軍事的優位は揺るがないが、イランは相当なコストを課し、米国を中東地域に引きずり込むことは可能だ」と指摘している。
地域内外で渡航の混乱が広がり、世界最大級のコンテナ船各社はペルシャ湾を避けて航路変更を余儀なくされた。
AMPのチーフエコノミスト、シェーン・オリバー氏は、トランプ氏が今後1週間ほどで勝利を宣言して、限定的な戦争となる確率を60%とみている。もう一つのシナリオは、対立が長期化し、原油価格が150ドル前後へ倍増する可能性を伴うものだ。
「ここ数十年の米国による介入で、体制転換が成功した例はほとんどない」と、オリバー氏は顧客向けリポートで指摘した。
イラン産原油を輸入する中国は
TDセキュリティーズのリッチ・ケリー氏らの分析によると、イラン産原油の供給が途絶すれば、中国の精製業者は影響を受ける可能性が高い。中国はイランの輸出の推計99%を輸入しているためだ。これは25年の中国の海上原油輸入の約13%に相当する。
「中国は安価な原油の供給源を、また一つ失うことになる」と同氏らは指摘。「インドと中国の需要は、安価なウラル原油に向かう公算が大きく、ロシアが恩恵を受けることになる。これにより、原油価格の下落によって強まっていたクレムリンへの圧力の一部が和らぐだろう」との見方を示した。
米国とイスラエルによる攻撃で、イランの最高指導者ハメネイ師が殺害されたことを受け、中国の王毅外相は1日、「主権国家の指導者を公然と殺害し、体制転換を図ることは受け入れられない」と述べた。
トランプ氏の中国訪問を1カ月後に控えるなか、米中関係が悪化すれば、投資家心理を落ち着かせてきた貿易休戦が揺らぐ恐れがある。
原題:Economists Gauge Hit From Mideast War as China Seen Among Losers(抜粋)
--取材協力:Swati Pandey.
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