(ブルームバーグ):米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けて原油価格が大幅に上昇した場合、日本経済は景気後退と物価上昇が同時に進む「スタグフレーション」に陥るリスクが高まるとの見方を複数のエコノミストが示している。
モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅日本チーフエコノミストらは1日付リポートで、原油高は輸入物価の上昇を通じてインフレを押し上げる一方、家計の実質所得を低下させ、個人消費を悪化させると指摘。原油価格が大幅に上昇すれば「短期的には経済にスタグフレーション的な影響をもたらす可能性がある」とした。
日本の原油輸入に占める中東の割合は9割を超え、2023年はそのうち7割超がホルムズ海峡経由だったとされる。中東からのエネルギー供給制約が長期化すれば、企業の生産活動や家計の負担増を通じて、日本経済にも深刻な影響が及ぶ恐れがある。
大和証券の南健人シニアエコノミストらは2日付リポートで、「日本経済には原油価格上昇によるコストプッシュと実質GDPの下押し圧力という二つの悪影響が想定され、スタグフレーション的なリスクが高まる可能性がある」とした。
日本経済への影響
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト(2日付コラム):
- 軍事衝突が長期化し、中東地域全体が軍事的リスクに直面するケースを「ベースシナリオ」に設定。原油価格が1バレル=87ドルまで上昇した場合、日本の実質GDPは1年間で0.18%押し下げられ、物価は1年間で0.31%押し上げられると試算
- イランがホルムズ海峡を完全に封鎖し、これが長期化する「悲観シナリオ」では、原油価格が140ドルまで上昇すると想定。この場合、GDPの押し下げ幅は0.65%に膨らみ、物価は1年間で1.14%押し上げられる
- 悲観シナリオの場合、日本は景気悪化と物価高騰が共存するスタグフレーションの様相を強め、景気後退に陥る可能性が生じると分析
大和証券の南氏と山本賢治チーフエコノミスト:
- 原油価格が90ドル程度と1月の水準対比で50%上昇した場合、消費者物価全体で約0.6%の上昇となり、今後1年間の実質GDPは0.3%程度押し下げられると試算
- ただ、政府が実施してきたガソリン減税や電気・ガスの補助などの物価高対策の効果も残る下で、マイナスの影響はある程度緩和され、「日本経済にとってそれほど大きなショックにはならない」とした
第一生命経済研究所経済調査部の星野卓也主席エコノミスト(2日付リポート):
- 原油価格が80ドルへ上昇した場合、実質GDPは1年目に0.21%、2年目に0.35%押し下げられると試算
- 戦況悪化を想定した130ドルへの上昇の場合には、1年目に0.58%、2年目に0.96%と、実質GDPを1%近く押し下げる可能性
- 消費者物価への影響は初年度に80ドルシナリオで0.22%、130ドルシナリオで0.63%の押し上げとなると予想
--取材協力:稲島剛史.
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