インドは長年、米国と中国、ドイツ、日本に次ぐ世界5位の経済大国として位置付けられてきた。だが今、日本に急速に迫っている。14億人規模の比較的若い人口構成が追い風となる一方、日本経済のドル建て規模が縮小している。

インドが日本を抜いたことが週内にも示唆されそうだ。インドは算出方法を更新した枠組みに基づく新たな国内総生産(GDP)統計を公表する予定で、改定により経済規模の測定値が押し上げられる可能性がある。

ムンバイのビジネス街

国家の経済規模はどのように測定されるのか

国家の経済規模は主にGDPで測定される。GDPは1年間に国内で生産されたすべての財・サービスの総額。各国のGDPを比較する最も一般的な方法は、名目GDPを見ることだ。

これは現時点の価格で算出した財・サービスの総額で、インフレの調整は行われていない。国際比較では、一定期間(通常は1年)の平均為替レートを用いて、各国通貨建てのGDPをドルに換算する。

インド経済と日本の比較は

インド政府は名目GDPベースで、2026年3月に終了する会計年度の経済規模が4兆ドル(約624兆円)強に達すると見込んでいる。一方、日本の公式統計によると、25年(暦年)の経済規模は約4兆4000億ドルだった。

国際通貨基金(IMF)は以前、インドGDP規模が25年に日本を抜くと予想していた。

IMFの予測はなぜ実現しなかったのか

主因は為替レートだ。インド・ルピーは25年に約5%下落し、ドル換算した際の成長分の相当部分が目減りした。一方、円は変動局面を挟みつつも、平均では前年より対ドルで強含み、日本のドル建てGDPを押し上げた。

日本と比べ、インド経済ははるかに速いペースで拡大している。今会計年度と来会計年度の成長率は7%超となる見通しで、日本の約1%と比べて大きな隔たりがある。ただ、世界のGDPランキングがドルベースで測られる限り、為替の動きが逆転の時期を遅らせる可能性がある。

インドはGDPをどのように測定するのか

インドは2月27日、GDPの基準年を11/12年度から22/23年度へと変更し、GDP算出の枠組みを新しくする。基準年の改定では各部門に割り当てるウエートが見直され、過去10年での経済構造の変化をより適切に反映する。

デジタル経済やギグワークといった高成長分野が新たな枠組みに追加される公算が大きい一方、農業や一部製造業のウエートは低下する可能性がある。

車両生産ラインで作業する溶接工(インド南部カルナタカ州)

同じような15年の改定では、インドのGDPは約1200億ドル押し上げられ、13/14年度の成長率推計は4.7%から6.9%へ引き上げられた。今回の影響は、更新された部門別ウエートがまだ公表されていないため、不透明だ。

インドの経済成長を支えているのは何か

人口増加が経済急拡大の強力な原動力となっている。人口は1947年の独立時の約3億6100万人から、現在は14億人超に増えた。この急増が労働力の増加につながっている。

統計当局によると、14億人の年齢中央値は2021年時点で28歳で、36年まで人口の約65%が59歳未満にとどまる見通し。こうした若い労働年齢世帯が、住宅や自動車、スマートフォンなどの消費財への支出を通じて旺盛な消費をけん引している。

ニューデリーの市場で買い物をする人々

依然としてサービス業がインド経済の中核だ。都市部はIT(情報技術)やビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)、金融サービス、観光、医療、小売りの拠点へと変貌している。

政府はインフラに過去最大水準の資金を投じるとともに、規制緩和や税制優遇、生産連動型補助金を通じて外国メーカーの誘致を進めている。韓国のサムスン電子や米アップルの「iPhone」を製造する台湾のフォックスコンなどは、インドに大規模なスマホ生産拠点を設けた。

インドが日本を上回ることの意味は何か

人口が日本の約10倍であることを踏まえると、インドがGDP総額で日本を上回ることは、豊かさというより規模の大きさを強調することになる。

IMFの26年に関する推計によると、インドの1人当たり所得は3000ドル強にとどまり、日本の約3万6390ドルと、大きな開きがある。世界銀行の分類では、インドは依然として「低中所得国」に位置付けられる。

それでも、この節目は象徴的かつ地政学的な意味合いを持つ。インドが主要な経済大国として台頭していることを改めて示し、中国に代わる選択肢を求める投資家や企業にとっての魅力を高める。インドは、食料安全保障や気候政策などを巡る国際的な議論における影響力を強めることになる。

モディ首相にとっては、途上国のリーダーとしての地位確立を目指す野心を後押しする材料だ。国内的にも、英国の植民地支配からの独立100年に当たる47年までにインドを先進国にするという目標に向けた一歩となる。

ただし、先進国の地位は経済規模ではなく生活水準に左右される。1人当たり所得が高水準であることに加え、世界水準のインフラ、十分に教育され技能を備えた労働力、質の高い人材の豊富さ、若年失業率の低さ、強固な社会保障制度などを意味する。

日本はその多くを満たしており、インドがなお埋めるべき格差の大きさを浮き彫りにしている。

経済を比較する他の方法はあるか

名目GDPの比較が標準的な手法だが、使用頻度は低いものの、購買力平価(PPP)を用いる方法もある。これは各国の物価水準の違いを調整する手法で、市場の為替レートに頼らずに食料や衣料、家賃、電気、交通など財・サービスのバスケットを比較する。

IMFによると、PPPベースではインドは2010年より前からすでに世界3位の経済大国だ。この尺度では、インドの経済規模は26年に約19兆1400億ドルに達する見通しで、日本の約6兆9200億ドルを大きく上回る。

この差はインドの物価が大幅に低いことを反映している。例えばコメ1キログラムの価格は、インドでは約0.67ドルなのに対し、日本では4.76ドルと約7倍だ。

原題:Does India’s Economy Really Rival Japan’s?: QuickTake(抜粋)

--取材協力:Shinjini Datta、Swati Bhat.

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