(ブルームバーグ):空売り投資家として知られるジェームズ・チャノス氏は、スペースXの大型新規株式公開(IPO)について、財務的な裏付けよりもイーロン・マスク氏や人工知能(AI)に対する投資家の熱狂によって支えられているとの見方を示した。
スペースXが目指す2兆ドル(約321兆円)近くの評価額を巡っては、合理的な事業前提に基づけば正当化するのは難しいとの認識も明らかにした。
チャノス・アンド・カンパニーの創業者、チャノス氏はスペースXのIPOに関し、投資家が投機的な成長ストーリーに資金を注ぎ込むものだとして、市場心理を測る重要な試金石になると指摘した。
チャノス氏は、ニューヨークで開催された「iConnections Global Alts」カンファレンスで、「調達額750億ドル、評価額2兆ドル近くのIPOを実施しようとしている。しかし、この企業の売上高は190億ドルで、フリーキャッシュフローはマイナスだ」と話した。
その上で、「これはまさに期待と夢に支えられたIPOだ」と語った。この会議には機関投資家の資金配分担当者やファンドマネジャー計2500人余りが参加した。
スペースXのIPOは、募集を大幅に上回る需要が伝えられている。しかしチャノス氏は、この評価額は将来の事業に対する期待を織り込んだもので、その多くは構想段階にとどまっているとコメント。具体的には宇宙空間のデータセンター、月面での製造事業、マスク氏の長期ビジョンに関連するその他事業を挙げた。
「宇宙における獲得可能な最大市場規模(TAM)は無限大だ」とし、「火星の植民地、月面工場、宇宙空間のデータセンターなど、評価額を正当化するためにどのようなストーリーでも都合よく構築することができる」と語った。
チャノス氏は、スペースXに対する市場の高評価をマスク氏率いる電気自動車(EV)大手テスラと比較。「テスラは将来への約束を織り込み、売上高の約14倍で取引されている」とする一方、「スペースXは売上高の約90倍の評価で上場しようとしている。これは全く別次元の話だ」と述べた。
チャノス氏は、直ちにスペースX株を空売りする考えは明言しなかったものの、IPO価格には懐疑的な見方を示した。スターリンクの衛星インターネット事業を含む既存事業だけであれば、「数千億ドル規模」の評価額は正当化できるとしつつも、「問題は残りの部分に1兆5000億ドルの価値があるかどうかだ」と話した。
また、宇宙空間のデータセンターが革新的な新市場になるとの見方についても否定的な見解を表明。技術的には実現可能だとしても、打ち上げコストや保守の難しさ、保険コスト、大規模な冗長性の確保など経済面・運用面の課題に直面するとの分析を示した。
このほか、「データセンターでは常に何かしらの故障が起きる」とし、宇宙空間で同様の問題が発生した場合には、部品交換のために技術者を簡単に派遣することはできないと指摘。また、打ち上げコストの引き下げや、将来構想の実現に不可欠なロケット「スターシップ」についても、継続的な軌道投入の成功をまだ実証していないと述べた。
チャノス氏はスペースXのIPOについて、足元の経済性を軽視する一方で、遠い将来の可能性にますます大きく賭けている現在の市場を象徴する事例だと論評。強気相場は約束を過大評価し、弱気相場は現実を過小評価するとし、「現状は明らかに前者だ」とコメントした。
原題:Chanos Bearish on SpaceX Valuation Fueled by ‘Hopes and Dreams’(抜粋)
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