トランプ米大統領は24日の一般教書演説で、有権者が関心を寄せる経済について、同じメッセージを繰り返した。「すべては順調に進んでいる」という主張だ。

トランプ氏は第2期目に入って支持率も低下し、恐らく最も厳しい局面にある。最大級の注目が集まったこの日の舞台では、11月の中間選挙の争点となる生活費高騰への不安を、統計や自賛によって覆い隠そうとした。

「インフレは急速に低下している。所得は急速に伸びている。力強い経済はかつてないほど活況だ」と、2時間近くに及ぶ演説の序盤で誇示した。

トランプ氏は、新たな対応策を打ち出す必要性すら感じていない様子だった。有権者の経済不安に触れた場面では、従来通り他者に責任を転嫁した。

「問題を引き起こしたのはあなた方だ」と民主党を批判し、物価に関する民主党の主張は「卑劣で腐りきったうそだ」と断じた。

トランプ氏の側近は、この日の演説は中間選挙を前にして、前向きな経済アジェンダを示し、態勢を立て直す機会になると位置付けていた。しかし実際に演説では、大規模な生活費対策よりも、自身の看板政策である減税や関税の成果を強調することに多くの時間が割かれることになった。

一般教書演説でのトランプ大統領(2月24日)

世論調査の専門家であるフランク・ランツ氏は、トランプ氏が「アフォーダビリティー(暮らし向き)」という言葉を軽視したことに疑問を呈した。

「これは失策だった」とランツ氏はXに投稿した。「米国民がいまだに食料品店で圧迫感を感じている中で『アフォーダビリティ-』という言葉をあざ笑うのは、映像として悪く切り取られかねない瞬間だ」と述べた。

この日の演説は、トランプ氏にとって厳しいタイミングでもあった。移民当局による暴力への反発や、ジェフリー・エプスタイン氏を巡る文書の余波に苦慮していたほか、先週には連邦最高裁が関税政策に待ったをかける判断を下したばかりだった。

愛国心に訴え、分断招く争点にも

トランプ氏は経済を楽観的に描き出す一方で、愛国心に訴える演出で流れを変えようとした。

五輪アイスホッケー男子チームの金メダルを称え、戦場に赴いた軍人らに複数の勲章を授与した。また、米国で今年開催されるサッカーワールドカップ、2028年ロサンゼルス夏季五輪、そして米国建国250周年の祝賀行事といった、華やかなイベントが続くことを強調した。

それでも、分断を招く争点を避けることはなかった。移民政策やトランスジェンダー政策を巡っては民主党を攻撃し、テレビ映えする緊張感を演出するかのように挑発した。

その一例が、ミネソタ州での移民取り締まりに言及した場面だ。同州では1月に、移民当局に市民2人が射殺されて大規模な抗議を招いた。だがトランプ氏は、同州ではソマリア出身移民が数十億ドル規模の不正を行ったと非難し、取り締まりの強化を正当化した。

「米政府の第一の義務は、不法移民ではなく米国民を守ることだ」との考えに賛同する議員は起立するよう求めた場面もあった。これに対し、民主党のオマル下院議員(ミネソタ州)は、「米国人を殺した」とトランプ氏に向かって叫んだ。

一方の共和党側は、この場面で喝采を送った。トランプ氏の元側近であるアーカンソー州のサンダース知事はXに「米国民を守ることが第一の義務だと信じるかと問われ、民主党は座ったままだった。残念ながら冗談ではない」と投稿した。

民主党、解決策に乏しいと批判

一方、民主党は有権者の経済的苦境への解決策が乏しい演説だと批判した。

民主党のウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)はSNSに「米国家庭にとって悪い夜だ」と投稿。「トランプ氏はクレジットカード金利の上限設定という公約について何も語らなかった。子育ての費用軽減についても、違法な関税による消費者への払い戻しについても何も語らなかった」と指摘した。

演説の序盤でトランプ氏は、インフレの鈍化、住宅ローン金利の低下、ガソリン価格の下落など、経済指標を列挙した。また、減税や子ども向けの新たな貯蓄口座を誇示し、機関投資家による一戸建て住宅の購入を禁止する法案の可決を議会に求めた。

民主党系ストラテジストでオバマ元大統領の元側近でもあるデービッド・アクセルロッド氏はテキストメッセージで「これまで通りの内容だが、伝え方は巧みだった。問題は、人々が彼の主張する『歴史的な大転換』を信じるか、そしてその進路に満足しているかどうかだ」と述べた。

トランプ氏の側近らは、昨年成立した税制法によりこの春により多額の還付を受け取ることで、多くの有権者がより前向きになると期待している。ただ、現時点では有権者の大部分が不満を抱いており、期待が現実になるかは分からない。

ワシントン・ポスト、ABCニュース、イプソスによる最近の世論調査では、経済、インフレ、関税への対応についてトランプ氏を支持しないとの回答が多数を占めた。

就任以来、トランプ氏は外交問題に重点的に取り組んできたが、今回の演説では主に国内問題に目を向けた。外交が内政から注意をそらしているとの有権者の懸念を意識したものだ。

トランプ氏は経済演説を行うために登壇し、その目的におおむね沿った内容となった。

物価については「もう少し辛抱してほしい。われわれは引き下げつつある」と国民に訴えた。問題は、支持基盤以外の有権者にその訴えが届くかどうかだ。

米史上最長の一般教書演説を行ったトランプ大統領

原題:Trump Offers Rose-Colored Glasses in Economic-Focused Speech(抜粋)

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