西半球に拘る理由は資源:ベネズエラの例

中南米諸国は、主要貿易相手先が中国となっている国が目立つ。

特に南米諸国の輸入においては、中国からの輸入が米国よりも多い国が大半だ。

中南米で最も経済規模が大きいブラジルは、輸出入とも中国のシェアが1位、米国は2位となっている。このほか、ペルー、チリも同様だ。

この背景には、①米国製品(完成品・中間財を含む)に比べ、中国の方が価格競争力は高いこと、②中国が提唱した一帯一路に参加している国が多いこと、が挙げられる。

特に②の一帯一路については、単に署名(参加)にとどまる国もあれば、インフラ整備や資金供給などを受け入れて中国との関係が深まる国まで、参加国間にも濃淡がある。

ただし、経済的な関係が深まるほど、政治的な関係も深まりやすくなる傾向がある。

特に、強権的で独裁的な政府であれば、民主主義を標榜する米国とは距離を置き、政治システムには口を出さない中国の一帯一路による経済的な支援は魅力的だ。

その代表的な国の一つがベネズエラだ。

ベネズエラは、南米大陸北部に位置し、米国との距離も近い。

また、世界最大の原油埋蔵量を誇る同国は、安定的な資源供給先でもあり、その権益を確保することは経済安全保障上極めて重要な意味を持つ。


チャベス政権下(1999~2013年)で国有化されたベネズエラの石油産業は、資金難などにより設備が劣化、これにつれて有数の原油産出国だった同国の原油生産量は減少傾向を辿り、これが財政悪化を深めるという悪循環に陥っていた。

こうした中、ベネズエラは中国などによる融資と技術面での支援で復活を試みた。

ベネズエラは融資への返済を原油で支払う仕組みが定着し、融資した中国には原油が、ベネズエラは老朽化した原油設備の更新のための資金と技術が得られる形となり、両国関係は一層深まりをみせた。

これを“危機”と感じ取った米国が執った政策が、年初の同国への空爆とマドゥロ大統領の拘束である。

米政府はベネズエラの原油権益の確保を主張しており、これがベネズエラ介入の狙いだったことは明らかだ。

ベネズエラの原油確保は、世界最大の原油生産国でありながら、原油埋蔵量は多くはない米国にとっては大きな意味を持つ。

また、ベネズエラから中国への原油の輸出を抑えることも可能となる。

ベネズエラ側にとっても、米国の下での原油開発には利点がある。

前述したように、ベネズエラはここ十数年中国に原油開発を頼っていたものの、中国側の技術力が十分ではなく、原油生産量の回復は限定的なものにとどまっていた。

これに対し、米国にはベネズエラ産の原油のような超重質油の精製技術、設備は十分にあるとされており、米石油会社の下であれば原油生産量の拡大に弾みがつく可能性がある。

マドゥロ大統領を拘束して以降、米国はベネズエラ産原油の精製や輸出のための許可を国内企業に出しており、原油権益の確保は着々と進んでいる。

一方、マドゥロ大統領の後を継いだロドリゲス大統領代行との関係も築いているとの報道もある。

順当に行けば、米国は世界最大の原油の確保と、ベネズエラと中国との関係にくさびを打つことに成功しそうだ。