(ブルームバーグ):ベンチャーキャピタル(VC)投資会社はここ数年、人工知能(AI)関連の案件獲得を後押しするため、対話型AI「ChatGPT」の米OpenAIなどからトップ人材を採用し、ゼネラルパートナーとして迎え入れるなど、技術系投資家の囲い込みを進めてきた。
現在では一歩進み、VCと投資会社はAIを使いこなす能力そのものを職務要件に組み込み、場合によってはAI責任者を採用して体制を強化している。2006年創業のVC、フェリシスは今年、グーグルの元プロダクトマネジャー、ベン・マセス氏をAI責任者に起用した。同氏は社内ツールや関連施策の統括を担う。
フェリシスは過去5年間にわたりデータサイエンティストのチームを抱えてきたが、マセス氏の採用でその取り組みを強化する。25年には投資担当者や他の従業員が過去の知見や投資判断をより効率的に検索できるよう、初のAIツールを導入した。
社内で「ワークベンチ」と呼ばれるこのAIツールは、フェリシスの内部システムに蓄積されてきた長年のドキュメントを基盤に構築された。電子メールやセールスフォース、スラック、公開記録、外部データから情報を集約し、記録の中枢となるシステムを形成している。
投資担当者や従業員はこのツールを通じ、例えばポートフォリオ企業に最初の小切手を投じた当初の投資根拠は何だったのか、今後の投資リポートにはどのような競合分析を盛り込むべきか、といった質問を投げかけることができる。
マセス氏はフェリシスでVCが日常的に直面する意思決定を支援するAIの構築に取り組んでいる。具体的には、有望な案件を過去の投資とどう比較するか、四半期ごとに一定のペースで投資を実行した場合にファンドの組成がどう影響を受けるか、といった判断を支える仕組みだ。
エンジニア重視
ジョシュア・クシュナー氏率いるスライブ・キャピタルは昨年、Notion(ノーション)のリサーチエンジニアだったライナス・リー氏をAI責任者に任命した。
スライブ・キャピタルは戦略拡張を支えるエンジニアの採用も進めている。筆者は今月、スライブ・キャピタルから派生したスライブ・ホールディングスの戦略を検証する記事を書いた。
サービス企業にAIを導入することに力を注いでいるスライブ・ホールディングスはVCではないが企業への投資は行っており、パランティアやランプなど出身のエンジニアを中心に20人余りを雇用している。
AI関連人材の採用はさらに広がっている。ズームやセールスフォースを支援してきたエマージェンスは昨年、Retool社でAIツールを構築したデービッド・ドウォースキー氏を採用し、AI施策の拡充を進めている。
また、メディア界の大物ジェフリー・カッツェンバーグ氏が設立したVC、WndrCo社は現在、新規採用候補者に対し、主にAIツールを用いて創業者の発掘や企業評価を行うよう求める面接プロセスへと見直しを進めている。ゼネラルパートナーのチェンリ・ワン氏が明らかにした。
筆者が話を聞いたVCの多くはAIについて、依然として実際の投資判断そのものよりも、幾つものデータソースを統合・要約する用途に最適だとみている。
ワン氏は「どのように選択し、どのようにプロンプトを与えるか、そしてどのように統合して判断を適用するかの双方を見ている」と述べた。
(この記事は、テクノロジー業界のビジネスを世界中のブルームバーグ記者が掘り下げて伝えるニュースレター「Tech In Depth」からの抜粋です)
原題:VC Firms Grab AI Talent to Boost Their Bets: Tech In Depth(抜粋)
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