(ブルームバーグ):プライベートクレジット(銀行を介さず企業に直接融資する投資)を手掛けるファンドは長らく、流動性のミスマッチによるリスクから遮断されている点を「強み」として強調してきた。しかし、最近の動きは、こうした見方に疑問を投げかけている。
投資家は通常、長期の固定期間で資金をコミットし、ファンド側も同様に長期満期のローンに資金を投じる。このため、流動性需要への対応で資産を安値で売却せざるを得ないリスクは最小化されるとされてきた。少なくとも理論上はそうだ。
だが、オルタナティブ資産運用会社ブルー・アウル・キャピタルで最近生じている緊張は、プライベートクレジット業界がこの脆弱性から完全に免れているわけではない可能性を示唆している。
ニューヨークを本拠とするブルー・アウルはここ数カ月、投資家からの解約請求の増加に見舞われている。人工知能(AI)の急速な台頭を背景に、ソフトウエア企業へのエクスポージャーに対する懸念が一因となっている。
個人投資家向けプライベートクレジットファンドの一つについては今週、1-3月期後半に解約受付を再開する従来の計画を撤回し、今後は解約を認めないと発表した。その代わり、投資家への資金返還を開始する方針を決めた。
ブルー・アウルの共同社長であるクレイグ・パッカー氏は19日の決算説明会で、「当社は解約を停止しているわけではない」と述べた。
問題のファンドについては、8年間にわたり投資家に対して四半期ごとに持ち分の5%買い取りを実施してきたと説明。それを再開する代わりに、投資家元本の30%を簿価で今後45日間で返還すると述べ、「われわれは実際には、資金返還を加速させている」と強調した。
資金流出が拡大、統合頓挫で資産売却へ
こうした動きは、急拡大するプライベートクレジット市場に参入する個人投資家が直面するリスクを浮き彫りにしている。
投資家は通常、保有持ち分の一部を四半期ごとに解約できるが、解約請求があらかじめ設定された上限を超えた場合、支払いは制限されることがある。
市場の大手運用会社が手掛けるビジネス・デベロップメント・カンパニー(BDC、企業への融資・出資から利益・配当を投資家に分配する投資会社)は、資金流出への対応に追われている。ロバート・A・スタンジャーのリポートによると、運用資産が計10億ドル超のBDCに対する第4四半期の解約申請は計29億ドル超と、前期比で200%増加した。
ブルー・アウルのファンド、ブルー・アウル・キャピタル・コープIIは、同社の個人向けとしては満期が設定された最後のファンドで、投資家には将来的な元本返還が以前から約束されていた。
昨年後半、同社はこの約束を果たそうとしたが失敗に終わった。同ファンドを別の上場BDCと統合する計画を進めたものの、市場での取引価格を踏まえると投資家が約20%の損失を被る可能性があり、最終的には計画を撤回することになった。
統合の計画が頓挫した後、ブルー・アウルは投資家への資金返還策を模索し、プライベートローンの売却を決めた。
同社は18日、ブルー・アウル・キャピタル・コープII、ブルー・アウル・キャピタル・コーポレーション、ブルー・アウル・テクノロジー・インカム・コープの3つのファンドで、合計約14億ドル相当のダイレクトレンディング(直接融資)債権を売却したと発表した。買い手は北米の公的年金基金や保険会社などだという。
評価は分かれる
パッカー氏は決算説明会で、非上場のファンドポートフォリオの34%を含む資産を簿価に近い水準で売却できたことは、むしろ同社にとって健全な姿を示すものだと強調した。
「どの資産クラスであっても、これほどの規模をこの価格、簿価で成立させられるのは強いことだ。極めて強いメッセージだ」と同氏は述べた。
他の関係者もこれに同調した。スタンジャーのマイケル・コベロ氏は、統合計画頓挫に伴う事実上のディスカウントを受け入れさせられる代わりに、第1四半期に純資産の30%の分配を受け取れることになるため、投資家には有利な結果だと評価した。バークレイズも、ファンドの清算に向けた強力な一歩だと指摘した。
一方、民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員はこのニュースを受け、プライベートクレジットのリスクに警鐘を鳴らした。銀行のプライベートクレジット向けエクスポージャーに対する自己資本要件の引き上げや、ファンドによるデータ開示の拡充、市場に対するストレステストの実施を求めた。
ウォーレン氏は19日の声明で、「トランプ政権は目を覚ます必要がある。こうしたリスクの高い投資を米国人の退職口座に押し込むのをやめるべきだ」と述べた。
ブルー・アウルの広報担当者は、今後数四半期にわたり投資家への資金返還計画を継続すると説明した。「一部で報じられているのとは異なり、当社は投資家の流動性を停止していない」と付け加えた。
原題:Blue Owl’s Woes Expose Private Credit Risks for Retail Investors(抜粋)
--取材協力:Rene Ismail.
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