(ブルームバーグ):セブン&アイ・ホールディングスにとって豪州コンビニ市場がグローバル戦略の成否を占う試金石となっている。日本で培った運営手法を海外で展開し、収益構造の転換と事業拡大を図る。
豪州セブン-イレブンは1977年に1号店を開店し現在は750店超を展開。市場シェアは3割を超え同国で最大のコンビニチェーンだ。30年までに1000店以上の展開を計画する。24年にライセンス契約で展開していた現地企業を、海外統括会社セブン-イレブン・インターナショナル(SEI)が完全子会社化した。ライセンス型から出資により経営幹部を送り込み、商品や運営の改善を主導するスタイルに転換を進めている。
店頭にはおにぎりや卵サラダのサンドイッチなどが並ぶ。レジ横のフライドチキンなど温かい総菜の品ぞろえを拡充。粗利率の引き上げを狙う。取扱商品はほぼ倍増の3000品目に広がった。
SEIの阿部真治会長は17日、メルボルンで開催した説明会で「オーストラリアで自社の能力を試し、勝ち筋を見いだそうとしている」と語った。
勝ち筋
豪州の売上高はグループ全体のわずか約3.5%にとどまる。ただ、今後の海外展開にとっては重要な意味をもつ。同社は30年までに展開エリアを現在の19から30カ国・地域へ拡大する目標を掲げており、豪州は出資型モデルの先行事例に位置付けられる。一定の店舗網を持つ現地企業への出資を軸とする戦略が成功すれば新規パートナー開拓の後押しとなる。
国土が広い豪州で効率的な供給網を築くことができれば、新たに進出する国だけでなく、米国市場にも生かせる可能性がある。現地の運営企業任せではなく、独自に成長を実現できた時のメリットは大きい。
豪州や北米では、ガソリンスタンド併設型が多く、ガソリンやタバコが集客商品となっていた。ただ、豪州では増税により紙巻きタバコ1箱は約4000円~6500円に値上がりし、2019年には売り上げの43%を占めていたタバコは昨秋時点で10%程度まで縮小した。
現地法人のフィオナ・ヘイズ最高経営責任者(CEO)は、食品や飲料への転換が進み、初期の成果は進展を示していると話す。これらの売上高は昨年約15%伸び、規制強化やタバコ増税で失った分を埋め合わせたという。25年7-9月期(第3四半期)の営業利益は約5億円の赤字だが、通期では黒字を見込む。
課題
メルボルンのアンザック駅に開店した店舗では、インスタント麺や照り焼きチキン弁当、日用品が数多く並ぶ。市中心部から数キロのポートメルボルンでは、約半世紀前に開店した店舗を改装し、約1年前に厨房設備を導入した。
従業員によると、パイやポテト、フライドチキンの売れ行きは好調だ。売り場に立った阿部会長は、ガソリン販売に依存する米国の老朽店舗にも参考になると述べた。
一方で、課題も残る。こうした改装や機材を導入済みの店舗は約150店にとどまる。食感や鮮度を保つ温度設定も、そのまま適用できるとは限らない。ヘイズCEOによれば、調理済みの米を日本より低温で保管することを規制で義務付けられている豪州では、おにぎりの食感を忠実に再現するのは難しいという。
実行リスク
日本モデルが海外でも通用するかどうかは議論の余地がある。ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、レア・エルハージ氏は、豪州は人口密度が低く、価格感応度は高い上、自動車中心の生活様式など、日本とは多くの点で異なると指摘する。オンラインや利便性に投資を強める大手スーパーとの競争も激しいという。
市場環境の違いは大きく、次の主力市場として見据える欧州には、休日や深夜に営業する商習慣がないエリアも多い。豪州が頓挫すれば、日本の強みを海外展開する戦略自体に疑問が投げかけられることになる。
エルハージ氏は、日本モデルの海外展開は「戦略としては理にかなっている」と見るが、「実行リスクは高い」とも指摘した。
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