キリンホールディングスは、2035年までにヘルスサイエンス事業で合併・買収(M&A)を検討している。同事業を担当する吉村透留常務執行役員が明らかにした。

吉村氏は19日のインタビューで、自らに課せられた35年までの売上高や事業利益の目標を達成していくには「どこかでM&Aをやらなければいけない」と説明。例えばブランドや販路拡大に加えて、規制対応ノウハウやデジタル領域など足りない分野を補うような案件が考えられるという。健康分野への消費意欲が高い米国は「魅力的」な市場で、買収で参入する方法もあり得ると述べた。

キリンHDは19年にヘルスサイエンス事業に本格的に参入した。ファンケルやオーストラリアの健康食品大手のブラックモアズなどを買収し、25年12月期にはじめて事業損益が黒字化した。ただ26年12月期の事業利益計画は130億円と、全体の5.5%にとどまる。事業規模や収益拡大に向けたM&Aは今後欠かせない。

一方で、吉村氏はM&Aにあたって一時的な流行に左右されず、中長期的な企業価値向上につながるかを慎重に見極める必要があると強調。M&Aに携わってきた経験があり、「昔の失敗からたくさん学んだ」という。

ヘルスサイエンス事業では、免疫ケアをうたう「プラズマ乳酸菌」や、脳機能に関連する成分「シチコリン」などに力を入れている。吉村氏は、次の成長分野としてアンチエイジングに注目していると話した。高齢化が進む日本だけでなく、世界中でニーズがあるとみており、ファンケルのサプリに加えて、今後新商品の展開を予定する。

ヘルスサイエンス事業は20年に医薬とともに、英投資ファンドから売却するよう株主提案を受けたが、キリン側はこれに反論。株主総会で同提案が否決された経緯がある。

南方健志社長は、黒字化を受けて「時間はかかったがわれわれの進んできた道は間違っていなかったと思うし、これからもヘルスサイエンス事業をしっかり伸ばしていくことに変わりない」と13日の決算会見で強調していた。

シティグループ証券の渡邉宏樹アナリストは、キリンHDの多角化戦略について、生き残るための手段を見つけようとする「アクティブな動きは間違っていない」と指摘する。多角化を打ち出してから株価はディスカウントが続いていたが、ヘルスサイエンス事業が黒字化を達成したことで、投資家から評価され始める局面に入ったという。

ただ、会社側が提示している27年12月期の事業利益目標を達成したとしても利益貢献は小さく、全社の株価収益率(PER)など評価指標(マルチプル)を押し上げる材料としては力不足とも述べた。成長性に加え、利益への寄与度が高まれば「バリュエーションのアップサイドが狙える」との見方を示した。

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.