(ブルームバーグ):米アマゾン・ドット・コムのホームセキュリティー部門リングが、ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の王者決定戦スーパーボウルの中継で放映したテレビ広告は、近隣監視に対する米国民の容認度を測る試金石となった。結果は「いや、結構です」という明確な否定だった。
デジタル時代における市民的自由の擁護を目的に設立された非営利組織、電子フロンティア財団(EFF)のシニア政策アナリスト、マシュー・グアリリア氏はその試合を視聴していなかったため、同広告を見逃した。だが放映直後から、同氏の携帯電話にはテキストメッセージや電子メールが殺到した。
「広告を見て、人々は何とも言えない不気味さを感じた」とグアリリア氏は語った。同氏は長年にわたりリングを批判している。同社の防犯カメラ付きドアベルなどの製品は、市民的自由を侵食し、犯罪抑止という利点を上回る危険なツールを政府に与えるという主張だ。
もっとも、広告の表向きのテーマは、迷子のペット捜索という一見無害な内容だった。
広告では、リングの創業者ジェイミー・シミノフ氏が、比較的新しい機能「サーチパーティー」を紹介する。ドアベルカメラの所有者が映像提供に協力し、犬種を識別できるソフトウエアを活用して、行方不明の犬の捜索を支援する仕組みだ。「サーチパーティーを開始」のボタンをクリックすると、ガレージ上部に設置されたドアベルカメラが、その視野を示す円すい状の光で車道を照らす。映像が引いていくと、緑豊かな住宅街の家々から同様の光が幾筋も放たれている様子が映し出される。
視聴者の間では、そうした機能が将来、人の検知に使われるのではないかとの懸念が広がった。シミノフ氏が10月にこの機能を発表して以来、そうした可能性は議論されてきた。利用者が自発的に参加する仕組みではあるが、全米で最も視聴されるテレビイベントで披露されたことを受け、シミノフ氏はほどなく火消しに追われ、自身が危険な監視サービスの提供者だとの見方に反論する事態となった。
シミノフ氏は先週、ABCニュースで「こうした反応は予想していなかった。ただ懸念は理解できる」と述べ、「このサービスは、プライバシーを最優先に設計している」と説明した。リングは自社製品について、人を追跡する目的で設計されたものではないとしている。
予想外であったにせよ、これほどの注目を集めればリングに厳しい目が向けられることは想像に難くない。とりわけ米政府が移民取り締まり強化の一環として、これまで非公開だったデータへのアクセスを求めている状況ではなおさらだ。シミノフ氏がリングを創業した当時、顔認識技術はまだ新しく、理論段階に近い状況だった。だが現在では、トランプ大統領の強制送還プログラムを遂行する連邦職員の手に渡っている。
アマゾンが2018年にリングを買収するはるか以前から、シミノフ氏は自社製品を近隣の犯罪をなくすためのツールとして売り込んでいた。アマゾンの傘下となってからは、警察が利用者にカメラ映像の提供を要請できる仕組みを巡って批判を浴びた。2023年にシミノフ氏が退くと、公共の安全という使命や警察からの要請制度も姿を消し、不審者の撃退よりも猫の動画撮影を前面に出すマーケティング戦略へと転換した。
シミノフ氏は昨年4月にアマゾンに復帰。その後間もなく、ボディーカメラ製造のアクソンと提携して公共安全要請プログラムを再開した。アクソンが仲介役となり、リング利用者に映像提供を求める仕組みだ。さらに、ナンバープレート読み取り装置などを手掛けるフロック・セーフティーとも同様の契約を結んだ。ただスーパーボウル後にリングが話題となる中、フロックとの提携は終了。両社は、双方の合意に基づく決定だと説明している。
一方でアクソンとの契約は継続している。リングは13日、この取り決めに関する新たなデータを公表した。アクソンが9月に法執行機関向けの要請ツールを開始して以降、21の機関が121回にわたりリング利用者に協力を求め、利用者は181本の動画を提供。その大半に当たる168本は、25年12月に発生し、数日間未解決だったブラウン大学での銃撃事件を受けた協力要請に関連していた。
リングは昨年、令状や召喚状を含む4700件超の情報提供要請を米法執行機関から受けた。仕組みを作れば政府は利用すると、グアリリア氏は指摘する。
「テクノロジーが社会基盤そのものだという認識が、かつてないほど強まっている」とグアリリア氏。「アップロードされた画像から近所の犬を探せるテクノロジーであれば、近所にいる人を探すことも可能だ」と述べた。
原題:Amazon’s Parries Blowback on Ring’s Search Party: Tech In Depth(抜粋)
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