(ブルームバーグ):家賃が大幅に上昇しているのに、政府公表の消費者物価指数(CPI)からは読み取れない。こうした状況が、ここ数年の急激なインフレで浮き彫りになっている。伸び率が実勢の半分程度で算出された可能性もある。
ブルームバーグはインフレが生活に与えた影響について分析し、CPIを構成する582品目の値動きをチャートにまとめた。家賃が物価全体に与える影響が際立って大きいにも関わらず、ほとんど変動がなく、人々の肌感覚とずれている恐れがあることがわかった。
民間調査からは家賃相場の上昇が確認できる。不動産仲介のアットホームによると、70平方メートル超の賃貸マンションでは昨年12月、都下で前年同月比8.7%、神奈川や埼玉県でも3%程度伸びていた。アパート(50-70平方メートル)でも、都下で5.9%増だった。
家賃相場がCPIに反映されにくい点は以前から認識されていたが、「失われた30年」で物価が横ばいだったために表面化しなかった。インフレ局面に入ったことで相場の上昇をつかみきれない不都合が浮き彫りになった形だ。
昨年12月に開かれた日本銀行の金融政策決定会合でも委員の1人が、総務省の住宅・土地統計調査を引き合いに出し、CPIの民営家賃の伸び率とかい離が生じていると指摘していた。
CPIと市況の乖離に着目し、公的統計を補足する目的で、大東建託グループと一橋大学は昨年8月、新たに「家賃指数」を共同開発した。同社が持つ約130万件のデータを使った点が特徴で、昨年12月の全国平均は前年同月比1.08%増だった。これに対し、CPIの民営家賃は0.6%増にとどまる。
経済統計の精度向上について研究している東京大学の肥後雅博教授によれば、家賃指数のインフレ率を代用してCPIの総合値を試算すると、前年比で0.1%程度上振れる。CPIは景気の動向を測る指標の一つで、金融政策の判断材料となる。「0.1%の差が与える示唆は決して小さくない」という。
なぜ下振れ
肥後教授は、CPIでは新築物件が家賃の調査対象から漏れやすいため、実勢よりも価格の水準や変化率が低く出てしまうと指摘する。調査エリアは無作為に抽出されるが、土台となるのは国勢調査で使われる区分けだ。
建設中のマンションや建設予定地など、人が住んでいない場所は国勢調査の対象に含まれないため、新築物件の家賃が盛り込まれづらいという。
政府も昨年に「家賃データタスクフォース」を設置し、対応策を練っている。総務省統計局によると、現在のCPIは2020年基準だが、今年8月公表分(7月の結果)から2025年基準に改定される。その際、家賃のズレを解決する方策は導入されない見通しだ。
家賃データの精度向上に向けた見直しには相当な時間と費用がかかるため、肥後教授は、抜本的な見直しは早くても5年後の31年に予定される次々回の基準改定のタイミングになるだろうと述べた。
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