自らへの信任を街頭で訴える政治家と、スーパーの棚で値札を見ながら家計に悩む生活者の姿。2月8日投開票の衆院選の裏側で、日本経済は「インフレ対策」と「財政規律」という巨大なてんびんの上で揺れ動いています。

この1週間の焦点を押さえて先を見通すニュース5本、デジタルエディターが選びました。

1. 家計を救うのは、政治か「もやし」か

与野党が競う「食料品の消費税カット」。政局をも動かすインフレはどこで起き、どのような影響を引き起こしているのか?

ブルームバーグは、物価の動きを測る物差しとされる消費者物価指数(CPI)の582品目を分析しました。データが示すのは、コーヒー豆が2.5倍、コメが2倍以上に高騰する現実です。

家計支出に占める食費の割合「エンゲル係数」は30%を超え、過去最高を更新しています。少しでも安く、胃袋を満たす食材として積極的に買い求めたのは、「もやし」でした。

  • 40年ぶりインフレの猛威、食品高騰の救世主はもやし-582品目のデータ分析
  • 動画:物価上昇の国「ニッポン」の行方-インフレと共存できるか

2. 選挙前、波浪警報が鳴るマーケット

衆院選候補者の演説を見守る聴衆

投開票を控え、投資家は「自民圧勝」を前提にポジション構築をしています。

株買い・円売り・債券売り──。いわゆる「高市トレード」が当面は加速するとみられる一方で、市場には「波浪警報」も鳴り響いています。

オプション市場が織り込む予想変動率は過去10年の政治イベントで最大級に。積極財政への期待が「財政リスク」への懸念に反転した瞬間、株・円・債券の「トリプル安」という嵐が吹き荒れる可能性も否定できません。

  • 衆院選待つグローバル投資家、債券と円売り・株式買いの戦略が主流に
  • 選挙後の日本株に波浪警報、予想変動率10年で最大

金利上昇の先に待つのは成長か、それとも混乱か。市場は8日の夜、そして週明けを見守っています。

3. 「サナ活」という熱狂

高市早苗首相の演説会(2月3日)

憲政史上初の女性首相、高市早苗氏。かつてない若者層の支持を惹きつけています。

財界との密室会合より自宅での政策勉強を好み、ドラム演奏やSNS戦略で若者から推される。この「サナ活」と呼ばれる現象は、根回し型政治への飽和感の裏返しでもあります。

高市氏と共に働いたり、間近で見たりしてきた十数人への取材から浮かび上がる政治家像や国家観にも迫りました。

  • 高市首相の若者人気、なぜ生まれたか-衆院選で試される「サナ活」の実力
  • 高市首相はどんな人?-周囲が語る「孤高さ」と国家経営めざした原点

投開票の直前には、トランプ米大統領が「全面的かつ完全な支持」を表明。3月19日の首脳会談まで予告されたこの「トランプ・高市」の蜜月ぶりは、日本の地政学的なパワーバランスを塗り替えるかもしれません。

4. レアアースの脱・中国同盟

レアアース泥を回収した探査船「ちきゅう」

レアアースをはじめ重要鉱物の確保をめぐり、「中国一極」の支配に世界が一歩を踏み出しました。

日本は南鳥島沖、水深6000メートルの海底からレアアース泥の回収に成功。採算度外視だとやゆされても、「経済安全保障」という不可逆な潮流が前へと押し進めています。

一方、米トランプ政権は120億ドルを投じる備蓄計画を発表。さらに日米欧は、中国の安値攻勢に対抗するため「最低価格(プライス・フロア)」の設定で合意しました。米国は55カ国招いた、重要鉱物に関する会議を主催することも表明しています。

  • 日本のレアアース採掘は採算度外視、脱中国依存へ-泥の回収に成功
  • 米国、120億ドル規模の重要鉱物備蓄を正式発表-トランプ大統領

効率性より生存を優先する、資源を巡る「軍事レベルの安全保障」。 サイトでは「レアアース攻防-ハイテク覇権の行方」を特集しています。

5. 「まるでカジノ」代替資産の冬

ビットコインは急落

高騰していた代替資産の市場に今週、冷や水が浴びせられました。

「まるでマカオのカジノだ」。1週間で2000万円以上の資産を失った中国の個人投資家の言葉は、いまの市場を言い表しています。

金価格が一時5500ドルを突破した熱狂の裏で、中国の投機筋はレバレッジを極限まで高めていました。 しかし、米FRB議長人事を巡るドル高の号砲とともに、彼らは一転して狭い出口へと殺到します。

銀は一時26%安、ビットコインも一時6万ドル割れ目前まで急落。安全な「避難先」とも見られていた代替資産が、実は「最も過密な投機場」だったという皮肉な現実が浮き彫りになっています。

  • 中国投機マネーが招いた急変、金・銀相場の過熱崩壊までの舞台裏
  • ビットコインが6.1万ドル割れ-トランプ氏再選後の上げが帳消し

今週のことば:SaaSポカリプス

今週、テック業界と株式市場で交わされた言葉が 「SaaSポカリプス(SaaSpocalypse)」。 ソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)と、聖書の「黙示録(アポカリプス)」を掛け合わせたこの造語は、AIが既存のソフトウェア企業の仕事を根こそぎ奪い、業界を終末に導くという「破壊的シナリオ」を指しています。

最も注目されたニュースは、AIスタートアップの米アンソロピックが、高度な金融・法務リサーチを数秒でこなすツールを相次いで投入したことです。投資家は「もう人間が操作する既存ソフトに高い課金をする必要はない」と判断し、一斉脱出(売り)を開始しました。

一方、今週の決算では、アルファベット(グーグル親会社)が年最大1,850億ドル(約29兆円)、アマゾンは2,000億ドル(約31兆円)という、市場の予想を超えたAI設備投資計画を発表しました。

国内企業でも決算が佳境を迎えています。

パナソニックHDは1万2000人の人員削減という「出血」を伴う構造改革を市場が「再生への一歩」と評価され、株価は18年ぶりの高値を付けました。対照的に、日本製鉄はUSスチール買収に絡む巨額の資金調達報道が「株式の希薄化」として嫌気され、急落。攻めの代償を問われる格好となっています。

8日の投開票、そして週明けの市場反応。一人の有権者として自らの意思を投じ、その結果が市場からも現れるのを注視してきましょう。

ブルームバーグのニュースサイトでは、選挙特集のほか、8日夜と9日朝にライブブログ形式で開票速報とマーケットの反応をいち早くお届けします。

よい週末をお過ごしください。月曜の朝、「今朝の5本」でまたお会いしましょう。

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