(ブルームバーグ):中国で電気自動車(EV)セクターの利益見通しを巡る投資家の不安が、BYD(比亜迪)株の止まらない売りによって浮き彫りになっている。国内需要の冷え込みと原材料費の急騰が重なり、見通しの大幅見直しは必至だ。
BYDの香港上場株は今週、下落。期待外れの販売データが響き、昨年5月から時価総額を600億ドル(約9兆4000億円)余り押し下げてきた売り局面が続いている。
この低迷は他のEVメーカーにも波及し、税制を巡る新たな懸念や人工知能(AI)による事業混乱への不安に直面する株式相場の重しとなっている。
トレーダーは政府補助金の縮小を背景に、今年のEV市場が伸び悩むとの見方をすでに織り込み、昨年11月以降は弱気ポジションが積み上がっていた。
それでも、需要悪化のペースは多くの市場参加者の想定を超えている。加えて、電池材料や半導体メモリーのコスト高騰が、自動車メーカーの利益率をさらに圧迫する可能性が高い。
CLSA香港の中国産業リサーチ共同責任者、シアオ・フォン氏は「投資家心理が極めてネガティブだ」と指摘。「より深刻なのは、今年に入って大規模な業績予想の下方修正が相次ぎ、中国国内市場でEVメーカーが長期的に利益を生み出せるのか疑問が高まることだ」と語った。
輸出は引き続き明るい材料だが、中国の自動車メーカーは依然として競争の激しい国内市場への依存度が高く、消費者心理は慎重なままだ。
モルガン・スタンレーによると、多くの国内メーカーは今年1-3月期の販売台数が前期比で30-40%減少すると見込んでいる。
1月の販売動向は、EV業界のトップ企業でさえ安泰ではないことを示した。BYDの国内出荷台数は前年同月比で半減し10万9569台。小鵬汽車は総出荷台数が30%余り減少したと報告した。
コストインフレ
投資家にとってより大きな懸念は、原材料費の急騰が利益に与える影響だ。EVメーカーは買い手を引き付けるための販売促進活動で依然として資金を消耗している。
EV用電池に使われるリチウムの価格はここ3カ月で倍以上に上昇し、銅やアルミニウムも高騰している。半導体メモリーの需給逼迫(ひっぱく)により、インテリジェント車両向け部品のコストも上がっている。
アバディーン・インベストメンツで中国株の投資マネジャーを務めるジョアン・チェン氏は「コストインフレが最大のリスクだ」と述べ、「競争が激しい中で、自動車OEM(相手先ブランドによる生産)がコストを小売価格に転嫁できるかどうかが問われている」との見方を示した。
市場予想では、車両1台当たりの追加コストは一部の高級モデルで約1000ドル、あるいはそれ以上に達する可能性がある。
バーンスタインの調査によれば、利益率の低い量販ブランドである小鵬汽車と理想汽車、蔚来汽車(NIO)は影響を受けやすいが、BYDは部品の内製化により相対的に有利な立場にある。
業界には前向きな動きもある。カナダや欧州連合(EU)と中国の通商関係改善が進むとの兆しは、輸出の勢いが続くとの期待を高めている。自動車メーカーはAIや人型ロボット、ロボタクシーといった新興テクノロジー分野にも進出しており、これも株価の押し上げ要因となり得る。
もっとも、EVセクターの苦境は当面、空売り投資家には追い風となっている。S3パートナーズによると、香港のハンセンテック指数におけるEV株の弱気ポジションは昨年11月以降に急増し、ハンセン指数全体の動きから大きく乖離(かいり)している。
原題:BYD’s $60 Billion Wipeout Points to Deeper Turmoil for China EVs(抜粋)
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