今となっては「たんす預金」が魅力的に見えてくる。

地政学的緊張が金融市場を揺さぶり、投資家は目まぐるしい値動きに翻弄(ほんろう)されている。トランプ米大統領が米国によるグリーンランド支配を求めたことで、1月20日に「米国売り」取引が再び強まり、ボラティリティー指標は上昇、米S&P500種株価指数は2%余り下落した。

トランプ氏が発言のトーンを和らげると、S&P500種は翌日、1%を超える上昇となった。それでも市場は神経質な状態が続き、大型テクノロジー株への懸念が多くの投資家を不安にさせている。安全資産を求める動きから金価格は過去最高値を更新し、1オンス=5500ドルを突破した。

ブルームバーグが調査した資産運用担当者は、現金の積み増しを勧めてはいないが、リスク回避のムードを背景に、4人の専門家のうち2人はバリュー株に注目した。

日本株も評価され、消費者、あるいは動物の欲求やニーズを先読みするのがうまい企業も挙げられた。債券市場では、ある運用担当者が、一般的な債券商品にとどまらず、高品質の証券化クレジットに目を向けるべきだと主張した。

上場投資信託(ETF)を使って投資することを好む投資家向けには、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のETFリサーチアソシエート、アンドレ・ヤップ氏が、専門家の考え方の大まかな代替となり得るファンドを提案した。

ファンドマネジャーに個人的な情熱のために10万ドル(約1500万円)をどう使うかを尋ねたところ、米大リーグ名選手のルーキーカード購入から、家族での南極旅行、サラブレッドの購入まで、回答は多岐にわたった。

クレセット・キャピタルのジャック・アブリン最高投資ストラテジスト 

【日本に期待】

アイデア

  • 資金の半分を日本株に、残り半分をS&P500バリュー指数に配分する。S&P500種はテクノロジーの比重が大きくなっているため、そのカウンターポイントとして位置付けたい

戦略

  • 現在、日本に投資すべき理由は主に三つある。高市早苗政権の下で、経済刺激策や企業支援の政策が期待される。支出拡大を通じた景気刺激が見込まれる一方、一定の金融引き締めがそれを打ち消す効果もあるだろう
  • 日本は減税を実施する可能性もあり、経済・財政の両面で強い追い風が吹く環境になる
  • これに加え、昨年から始まった企業改革がある。日本株市場では企業統治の改革や監督が一段と進んでおり、バリュエーションも相対的に割安だ
  • 恐らく最も重要な理由は円だ。円は驚くほど割安だ。ビッグマック指数でみると、米国でビッグマック1個を売れば、日本ではビッグマック4個とビール1杯が買える計算になる。円が対ドルで上昇すれば米国投資家の追い風になるだけでなく、日本の輸出企業にも恩恵がある
  • S&P500バリュー指数には10万ドルのうち半分を配分する。S&P500種よりもはるかに割安で、いわゆる「大きくて美しい法(大型減税・歳出法)」による刺激策の恩恵も段階的に受けるとみている
  • 5月以降、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の任期終了後には金融緩和が進むと予想する。財政・金融の条件が想定通りに展開すれば、バリュー投資は加速する余地がある。同時に、これはディフェンシブな戦略でもある
  • 中間選挙の年は株式市場の平均リターンがほぼ横ばいで、あまり良くない傾向があるため、一定の下方リスクの緩衝材になる。期待する方向に政策のレバーが引かれた場合に恩恵を受けつつ、下振れ耐性も持てる点が、この市場では最善の選択だろう

大局観

  • 足元のS&P500種は割高なバリュエーションで、ファンダメンタルズはまちまち、モメンタムは強い。ごく短期的には上昇しやすいが、経済環境の行方や企業収益の進展、さらには地政学的なニュース次第で状況は変わり得る。総じて言えば、音楽はまだ鳴り続けている

ETFでの実装方法

  • BIのヤップ氏によると、日本株への投資はフランクリンFTSE日本ETF(FLJP)で実装できる。パッシブ運用で幅広いエクスポージャーを提供し、経費率は0.09%と低い
  • 為替ヘッジなしのETFのため、円高の恩恵を受けられる一方、円安時の為替リスクも負う。為替リスクを避けたい投資家は、同じ戦略とコストで為替ヘッジを組み込んだフランクリンFTSE日本ヘッジドETF(FLJH)を検討できる
  • 米大型株でバリュー志向のエクスポージャーとしては、バンガード・バリューETF(VTV)やステート・ストリートのSPDRポートフォリオS&P500バリューETF(SPYV)といった低コストの指数連動型があり、いずれも経費率は0.04%だ

代替案

  • 私は野球ファンで、野球の統計が大好きだ。野球カードには非常に巧妙なコレクターズアイテムがあり、どの水準からでも参入できる。思い切って一点集中もできるし、分散もできる
  • 10年の投資期間と10万ドルがあるなら、1952年「Topps」ミッキー・マントルのルーキーカードを購入し、可能な限り高いグレードを選ぶことを勧める
  • 1枚に全額を投じたくない投資家向けには、33年「Goudey」のベーブ・ルース、55年Toppsのロベルト・クレメンテのルーキーカード、54年Toppsのハンク・アーロンのルーキーカード、52年Toppsのミッキー・マントルのルーキーカード、39年「Play Ball」セットのテッド・ウィリアムズのルーキーカードの5点を挙げたい

ボケ・キャピタル・パートナーズのキム・フォレスト最高投資責任者(CIO)

【セクターニュートラルを維持】

アイデア

  • 今の株式市場ではセクターニュートラルなアプローチが好ましい。地政学や金利など、何が起きるか分からず、セクター選択は非常に難しい。経営陣がコントロールできる要因、すなわち企業をうまく運営し、顧客を満足させているかに焦点を絞り、セクターごとにそれを最も体現している企業を見つけることで、マクロ環境に左右されにくいパフォーマンスが可能になる

戦略

  • 私の基本スタンスは、妥当な価格で成長する企業を探すことだ。大型株と中小型株を組み合わせ、製品マーケティングを通じて同業他社を上回る企業を重視する
  • つまり、自社の顧客を理解し、満足させ、愛される製品を作り続けることで、顧客が戻ってくる企業だ。エンジニア向けソフトウエアを作る企業で働いたことがあるが、顧客が求めた機能を実装すると、その顧客は世界を支配している気分になり、生涯にわたり顧客となった
  • コカ・コーラはその好例で、われわれの投資先の一つだ。ただし、このアプローチは生活必需品にとどまらない。ヘルスケアでは、イーライリリーからスピンアウトしたエランコに注目している
  • エランコは動物向け医薬品が主力で、事業の半分は農業向け、つまり豚や牛向けワクチンなどだ。残りは家庭用ペット向け製品が多い
  • スピンアウト時点で、同社は大ヒットが見込まれる開発中製品を六つ抱えていた。その一つが牛の放屁(ほうひ)を抑える製品だ。これにより牛のメタン排出が減り、乳製品や肉に対する懸念が和らぎ、安心してステーキを楽しめる

大局観

  • 私は楽観的だ。金利は低下局面にあり、成長が続く限り、S&P500種が再び2桁成長の年になる可能性がある。もう一つ確信しているのは、かつてのような「生産し過ぎて人員整理を余儀なくされる」型のリセッション(景気後退)は起きにくくなったことだ
  • 2000年以降、企業は会計システムを整備し、さらにCRM(顧客関係管理)システムを導入して需要をリアルタイムで把握できるようになった。供給と需要の可視性が高まり、適切に対応できる。今後も景気後退は起きるが、それは金融危機が原因であり、われわれはそれを予測するのが非常に苦手だ

ETFでの実装方法

  • ヤップ氏によると、フォレスト氏の戦略はマルチファクターETFで効果的に実装できる。マルチファクターは、相対的に魅力的なバリュエーションで安定したリターンを生む企業を見極めるという基本目的に合致する。特に、クオリティー要因とバリューまたはグロース要因を組み合わせたETFが適している
  • この文脈では、ハートフォード米国クオリティー・グロースETF(HQGO)が有力だ。クオリティー要因と、運用者が妥当と考える価格水準の成長を重視する
  • ただし完全一致ではなく、大型株に限定され、資産の約55%がテクノロジーセクターだ。アクティブ運用で経費率は0.34%となっている

代替案

  • 私は乗馬をするので、馬を買うだろう。所有コストは非常に高い。子どもをアイビーリーグに通わせるのと同じくらいだ。馬そのものは高くないが、厩舎(きゅうしゃ)代や餌代、世話をする人、獣医師や装蹄(そうてい)師の費用、乗馬用の衣装一式、くら、毛布などが必要だ。サラブレッドを購入し、大会に出たいが、大会参加費も非常に高額だ

インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏

【ディフェンシブ重視】

アイデア

  • 新規資金を投じるなら、ディフェンシブに傾けたい。大型ハイテク株からのローテーションが起きており、これが続けば、市場全体の値動きに鈍感で、配当利回りの高いバリュー株がアウトパフォームしやすい。株価上昇が相対的に小さかった分、バリュエーション拡大の余地もある

戦略

  • S&P500種のインデックスファンドに投資する合理性はあるが、それでは資金の40%以上を人工知能(AI)テーマに配分することになる。現在がラリーの初期段階だという見方には懐疑的だ
  • 資産の15-20%は米国外に配分すべきだと考えるが、米国の大型株に限定するなら、米国内では3分の2をバリュー銘柄、3分の1をグロース(成長)株としたい
  • 大手テクノロジーが高く評価されるのは、収益力があるからだ。ただ、そのプレミアムの多くは、固定資産を多く必要としないことで高い総資産利益率や自己資本利益率を実現してきた点に基づく。今やこれらの企業は、アセットライトからアセットヘビーなモデルへ移行しつつある
  • これがバリューを重視する理由の一つだ。市場のローテーションが続いても、中間選挙の年に市場が大きく調整しても、バリュー株なら勝ち筋がある。過去10年で下落した年は2018年と22年で、いずれも中間選挙の年だった
  • AIテーマに過度に投資するもう一つのリスクは、OpenAIが市場で織り込まれているコミットメントを本当に果たせるのかという根源的な懸念だ。25年の売上高が200億ドル程度とみられる企業が、オラクルに3000億ドルを投じる規模まで急拡大できるのか
  • テクノロジー企業はエヌビディアと多くの契約を結んでいるが、これらの資金フローが実現しなければ、エヌビディアの見通しに影響する。エヌビディア自身のコストではないにせよ、オラクルの場合は実際に投資を進めているため影響が大きい

大局観

  • 米国の政策環境は、記憶にある中で最も不透明だ。物価安定と最大雇用というFRBの二つの使命を巡り、金融政策を取り巻く不確実性がある。加えて、FRBの役割を一部奪おうとする非常に積極的な政権が存在する
  • 地政学については、市場が往々にして無視するため、投資家は過度に重視しない方がよい

ETFでの実装方法

  • ヤップ氏によれば、ソスニック氏の戦略はVTVやSPYVで実装できる
  • AI主導の大型株へのエクスポージャーを維持しつつ過度な集中を避けたい投資家は、イコールウエート型指数ファンドを検討できる
  • インベスコS&P500イコールウエートETF(RSP)やゴールドマン・サックス・イコールウエート米大型株ETF(GSEW)は、構成銘柄を均等配分し、メガキャップの影響を抑える。GSEWは経費率0.09%と、RSPの0.20%より低い
  • 代替として、iシェアーズS&P500・3%キャップドETF(TOPC)は、最大銘柄の比率を3%に制限し、集中リスクを低減しつつAI企業への一定のエクスポージャーを維持できる。経費率は0.09%だ
  • AIの主要銘柄を完全に避けたい投資家は、ディファイアンス大型株マグニフィセント7除外ETF(XMAG)も選択肢になる

代替案

  • 正直に言えば、妻が望んでいる自宅の改修が幾つかあり、行きたい場所の多くはすでに旅行したが、ずっと行きたいと思っているのが南極だ。もちろん安くはないが、家族を連れて豪華な旅行に行きたい

ジャナス・ヘンダーソンの米国ポートフォリオ構築・戦略責任者ララ・キャッスルトン氏

【AI大手以外にも注目】

アイデア

  • われわれの主要テーマはAIへの強い自信で、マグニフィセント7を除外したアクティブ戦略に成長余地があるとみている。マグニフィセント7以外のAI領域では、ヘルスケア、特にバイオテクノロジーで多くのイノベーションが進んでいる。債券では、証券化商品セクターに機会がある

戦略

  • 多くの投資家はS&P500種を通じてAIに投資しており、これはマグニフィセント7への依存度が高い。26年初め時点で25年と異なる最大の点は、昨年ついに分化が起き、7銘柄のうち5銘柄が市場全体を下回ったことだ。マグニフィセント7はもはや一体となって動いていない
  • アクティブなグロース運用担当者は、成長エクスポージャーを減らすのではなく、その取り方をより意図的にできる。AIの効果が生産性向上や利益率改善といった二次的効果として広がり始めている。加えて、インフラを提供するいわゆる周辺企業もある
  • 一方、ヘルスケアは数年にわたりAIブームから取り残されてきたが、足元では企業の合併・買収(M&A)が増えている。勝ち組と負け組を見極められる人材がいれば、テクノロジーへのエクスポージャーに対する良い緩衝材になる。マグニフィセント7を除外した成長戦略は、テクノロジーに限定する必要はない
  • 債券では、証券化商品セクターが高品質で魅力的な利回りを提供すると考える。国債などにとどまらず投資対象を広げるべきだ。巨大データセンターなどに巨額の資金を投じるいわゆる「ハイパースケーラー」は社債市場での発行が注目されるが、証券化市場にも案件があり、他のクレジット市場より大きなスプレッドが得られる可能性がある
  • 証券化は運用・取引が難しく、消費者に密接に結び付いているとの懸念があるが、われわれは経済全体におおむね前向きで、高水準の個人消費が続いている点が支えになる

○大局観

  • 26年の経済環境、とりわけ1-6月(上期)については総じて安心感がある。投資を継続し、アクセルを緩める必要は必ずしもないと考えている

ETFでの実装方法

  • キャッスルトン氏が推奨するバイオテクノロジーへのエクスポージャーは、ステート・ストリートのSPDR・S&PバイオテクノロジーETF(XBI)やヴァンエック・バイオテックETF(BBH)で実現できる。いずれも経費率は0.35%だが、BBHはより銘柄集中度が高い
  • ジャナス・ヘンダーソンは、ジャナス・ヘンダーソン・セキュリタイズド・インカムETF(JSI)で証券化クレジットへの投資機会を提供しており、過去12カ月利回りは約5.8%だ
  • より高い利回りを求める投資家は、iシェアーズBBB-B・CLOアクティブETF(BCLO)やジャナス・ヘンダーソンB-BBB・CLO・ETF(JBBB)を検討でき、過去12カ月利回りはそれぞれ約6.4%、7.3%となっている

代替案

  • 10万ドルの個人的なリニューアル基金を作り、毎年1万ドルを自由に使いたい。旅行が好きなので、今年はイタリアに行く。何度も訪れており外れないと分かっているし、拠点のデンバーから直行便もできた

原題:Where to Invest $100,000: AI, Value Plays, Japan, Baseball Cards(抜粋)

--取材協力:Nicole Jordan.

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