出生数・初婚者数の減少

中国国家統計局が発表した2025年の出生数は792万人と前年よりさらに162万人減少し、1949年の建国以降で最少を記録した。

政府が2016年に第2子の出産を容認してから約10年経過するが、出生数は直近のピークである2016年の1,786万人のおよそ4割にまで減少しており、少子化に歯止めがかかっていない。

出生数の減少と密接に関係しているのが、婚姻件数である。

非嫡出子(婚外子)を原則として認めていない中国では、出生の多くが婚姻関係の中で生じるため、結婚している人の数、特に初婚の数が出生数に大きな影響を与える。

近年の中国では、晩婚化、すなわち初婚年齢の上昇が進んでいる。

初婚の平均年齢(2020年/国勢調査)は28.7歳(男性が29.4歳、女性が28.0歳)で、10年前の2010年(平均年齢が24.9歳、男性が25.7歳、女性が24.0歳)と比較して4歳ほど上昇している。

結婚年齢の上昇によって出産可能な期間が短くなり、その結果、出生数や出生率の低下につながっている。

2025年の出生数減少の要因の1つとして、2024年の婚姻件数、特に初婚者数の減少が挙げられる。

2024年の婚姻件数(組数)は611万件(前年比158万件減)と、1985年以降の40年間で最も少なく、ピークであった2013年(1,347万件)の半分以下にまで減少した。

さらに、2024年の初婚者数(人数)は917万人と前年から277万人減少(前年比23.2%減)となり、こちらも過去最少となった。

なお、2023年は新型コロナウイルスに対応して実施されたゼロコロナ対策が終了し、婚姻件数が前年比11.9%増の763万件、初婚者数も前年比13.5%増の1,194万人となっていた。

2024年の婚姻件数および初婚者数の減少は、この反動の影響も受けたものと考えられる。

そもそも若年層人口が減少している以上、婚姻件数全体が減少することはある程度避けられないであろう。

一方で、若年層を中心に結婚を先送りする、あるいは結婚そのものを選択しない人が増えている背景には、住宅価格や教育費など、結婚・子育てに伴う経済的負担、雇用の不安定化と将来不安、女性の高学歴化・就業拡大による伝統的な婚姻観の変化、婚姻や出産を「義務」と捉えない価値観の浸透など、複数の要因が存在している。

なお、直近の2025年1-9月の婚姻件数は512万件と、前年同期比で41万件増加している。

これは婚姻関連手続きの簡素化に加え、地方政府による結婚祝い金の支給、結婚クーポン券の配布、住宅購入支援、結婚休暇の延長など、「結婚しやすい環境づくり」を目的とした措置が相次いで導入されたことが影響しているとみられる。

しかし、これらの政策は適齢期の初婚と出産の促進、いわゆる「婚生一体」政策を前提としたものが中心であり、若年層の婚姻意欲を大きく押し上げるまでには至っていない。

婚姻件数全体の回復につながらない背景には、婚姻の主体が若年層だけではなくなっているという構造的な変化がある。

離婚の増加にともなって再婚が増加―2024年の婚姻者のおよそ25%は再婚者

婚姻件数が減少する一方で、離婚は増加基調にある。

離婚件数は2019年に470万件まで増加した後、2020年(434万件)から2022年(288万件)にかけて減少したが、これは新型コロナウイルスの影響による窓口業務の制限や、2021年から導入された離婚時の冷却期間制度4などが影響したと考えられる。

しかし、ゼロコロナ政策終了後の2023年には、前年比25.2%増の361万件まで再び増加した。

なお、中国の2024年の離婚率は2.49(人口1,000人あたり)であり、日本の1.55と比べても大幅に高い水準にある。

離婚の増加と並行して、近年注目されているのが再婚の増加である。

再婚は初婚に比べて注目度が低く、統計上も見過ごされがちである。

しかし、初婚者数が急減する中で、婚姻者数全体に占める再婚者数の比率は着実に高まっている。

2000年代以降、離婚の増加にともなって再婚も増加し、2019年には再婚者数が456万人に達した。

2024年時点でも再婚者数は304万人となっている。

婚姻者に占める再婚者の割合は増加の一途をたどっており、2024年には25.0%と過去40年間で最も高い水準となった。

婚姻件数全体が減少する中で、再婚の増加は婚姻件数の急激な落ち込みを一定程度下支えしていると考えられる。

一方、当局が公表している再婚関連の統計は再婚者数に限られており、再婚の形態(夫婦双方が再婚、夫か妻のいずれかが再婚)や年齢分布、男女別の状況など、より詳細なデータは示されていない。

ただし、結婚届提出時の年齢分布をみると、晩婚化の進展とともに、再婚の増加をうかがうことができる。

図表に示すとおり、2024年は2010年と比べて20代前半の婚姻届提出が減少する一方、それ以上の年齢層では増加している。

初婚の平均年齢(28.7歳)に属する25-29歳以上の年齢層(30歳以上)も増加しており、これらの傾向からも晩婚化と再婚の増加が同時に進んでいる点をうかがうことができる。

「黄昏婚(たそがれ婚)」にみる再婚の多様化と少子化対策

中国で再婚が増加している背景には、離婚数の増加に加え、結婚や再婚に対する意識の変化、中高年層を中心とした経済的・生活上の合理性といった複数の要因がある。

これは、初婚を中心としてきた従来の婚姻構造が変化していることを示している。

その一例が「黄昏婚(たそがれ婚)」(中国語では「黄昏恋」「黄昏婚姻」)である。

これは、離婚や死別を経験した中高年層が、老後の生活の安定や精神的支えを目的として選択する再婚形態で、事実婚などもある。

黄昏婚は婚姻件数(再婚)の一部を構成するものの、出生数の増加にはほぼ寄与しない。

このことは、中国の結婚市場が「出産を前提としない婚姻」も含めて多様化していることを示している。

再婚の増加は婚姻件数の下支えにはなるものの、政府が目指す出生数の押し上げ効果は限定的とみられ、少子化対策としては初婚や若年層へのアプローチが重要となるであろう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき)

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