高市早苗首相は、全てがうまくかみ合ってきたと感じていたに違いない。

高市氏は先週、SNSで存在感を放った。韓国の李在明大統領とドラムを打ち合い、その後はイタリアのメローニ首相とのアニメ風の自撮りを披露した。その一方で、世論調査の数字から圧勝しかねないともみられていた総選挙に打って出る構想も練っていた。

だが、因縁の相手が報復に動く可能性までは織り込んでいなかったかもしれない。高市氏が自民党総裁に就いた後、数十年続いた連立を解消した友党、公明党が、最大野党である立憲民主党との合流を発表したのだ。

この決定は、選挙日程が決まる前から選挙戦を活気づけた。「中道改革連合」と名乗るこの新党は、自民に対する長年の対抗軸と、強力な集票マシンを結び付けた。

公明は、全国の選挙区でボランティアを動員できる仏教団体の創価学会が母体だ。

歴代の自民党総裁にとって、公明を通じた票固めはありがたかった。眉に唾を付けたくなるような不完全な分析ながら、かつて与党に流れていた公明票全てが立民に向かっていれば、野党が与党の権力掌握を崩せた可能性があるとの見方まで取り沙汰されている。

とはいえ、選挙結果について語るのはまだ時期尚早だ。高市氏は19日、衆議院を23日に解散し、来月8日投開票の総選挙(1月27日公示)実施を正式に発表し、ようやく号砲を鳴らした。しかし、これが日本政治の革命的瞬間になるとは考えにくい理由は多い。

中道は、有権者に対し、単なる看板替えではないことを示すため、やるべきことが山積している。立民の源流は民主党にさかのぼり、2000年代に多くを約束しながら、いざ政権に就くと権力を浪費した。その後も、名称やロゴを変えつつ、顔ぶれや政策は似通ったまま、目立った実績を残せずに漂流してきた。

強力な対抗軸

新しい野党には、新しい政策が必要だ。立民の前身勢力は、しばしば自民にご都合主義的に対抗し、時には対抗すること自体が目的のようだった。

原子力発電所の全廃を掲げ、防衛態勢を強化する法改正を拒み、中国に対しても極めてハト派だった。歴史はこうした立場に優しくなかった。新党は少なくともその点を認識しているようで、原発全廃の公約から後退し、「憲法改正議論の深化」を求めている。ただし、それだけでは明確なビジョンの代わりにはならない。

人材の問題もある。中道共同代表である立民の野田佳彦氏と公明の斉藤鉄夫氏はいずれも政治のベテランだ。

民主党政権時代に首相を務めた野田氏は、昨年の参議院選で自民が歴史的敗北を喫した際にも、党の議席を一つも上積みできなかった。2012年に消費税率引き上げの実施に政治生命を懸けた当人が、今になって消費税減税を掲げて選挙戦を戦うのは、ちぐはぐでもある。

一方、公明の支持率は、創価学会の会員数減少に伴い長年落ち込んできた。野田氏が公明そして宗教団体と結び付いた集票マシンを受け入れるスタンスは、自民に対する野党側の有力な批判点の一つ、つまり統一教会に頼って票を集めてきた自民の構造を突く力を弱める。

追い打ちをかけるように、高市氏はすでに、食料品に対する消費税の時限的な引き下げ案を打ち出し、主要な争点を中道から奪おうとしている。

これは思慮に欠ける日和見的な案だが、高市氏が以前も食料品の消費減税を主張してきたことを考えれば驚きではない。移民政策を巡る右派的な論点も取り込む高市氏に対抗する代替政策案が際立つ余地はいっそう狭まっている。

野党が対峙する首相は、ここ数年の日本で最もメディア対応がうまく、人気のある政治家の一人だが、今の有権者には中道・中道左派を受け入れる余地はある。たとえ高市氏が権力を失うリスクを示すだけであっても、与党を律する強力な対抗軸は歓迎されるだろう。

だが、中道は、前身の勢力ができなかったことを成し遂げ、単なる反自民と景気を良くするとの曖昧な約束を超える説得力ある代替ビジョンを示さなければならない。さもなければ、特に若い有権者からは、中道というより、単に「凡庸」と見なされるリスクがある。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Japan’s New Centrist Movement Might Merely Be Mid: Gearoid Reidy(抜粋)

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