ブルームバーグでベンチャーキャピタル(VC)を担当するレベッカ・トーレンス、ナターシャ・マスカレンハス両記者にとって、シリコンバレーとスタートアップの世界を取材するうえで、今ほど興味深い時期はない。人工知能(AI)分野が急成長する中、これまで以上に大きな可能性とリスク、そして変化が同時に押し寄せているという。トーレンス、マスカレンハス両氏が注目する業界トレンドは以下の通り。

大型AI資金調達

2025年後半には、AIが引き起こす市場崩壊への懸念が投資家の間に広がったが、それでも資金提供の手は止まらなかった。有力スタートアップは依然として、評価額を引き上げながら大規模な資金調達を行っている。アンソロピックは、評価額を3500億ドル(約55兆3700億円)以上に引き上げる方向で交渉を進めている。まだ初期段階にある企業も例外ではない。Humans&は、評価額44億8000万ドルで4億8000万ドルのシードラウンド(初期段階の資金調達)を行ったばかりだ。

バブルへの警戒感

一部のベンチャーキャピタルは警戒すべき理由があると指摘する。象徴的な例が、OpenAIの元最高技術責任者(CTO)、ミラ・ムラティ氏が立ち上げたAI新興企業、シンキング・マシーンズ・ラボをめぐる動きだ。同社が評価額500億ドルで新たな資金調達を模索しているとブルームバーグが報じてからわずか2カ月後の先週、複数の主要スタッフがOpenAIに移籍した。シンキング・マシーンズは現時点で製品がない。さらに、評価額が上昇する中で、巨大ハイテク企業は従来型の買収ではなく、ライセンス契約や人材獲得型買収を選ぶことで規制当局の監視を回避し続けている。この動きはM&A(企業の合併・買収)を通じて得られるベンチャーキャピタルのリターン余地を制限している。

激しい競争

有力なAIスタートアップは少数に限られており、ベンチャー企業はこうした一部の企業の株式にアクセスするため、あらゆる手段を模索している。両記者は、従来の株式投資以外での特別目的事業体(SPV)や従業員保有株の買い取り、その他の二次取引といった従来型ではない手法を追っている。こうした取引は、スタートアップ自身の最高経営責任者(CEO)の承認を得ないまま行われることもある。

IPOの展望

ベンチャーキャピタルは、テクノロジー企業の新規株式公開(IPO)が2026年は活発になることを期待している。OpenAIやスペースXによる歴史的なIPOがあるかもしれない。ただここ最近のIPO環境は芳しくない。フィグマやクラルナといった有力スタートアップが昨年上場したものの、多くの銘柄は取引初日から数カ月後には株価が低迷している。インデックス・ベンチャーズが支援するフィグマは、7月末の上場後に一時142.92ドルまで上昇したが、先週は初めてIPO価格の33ドルを下回った。

VC企業の変容

ライトスピード・ベンチャー・パートナーズやスライブ・キャピタル、ジェネラル・カタリストといったベンチャーキャピタル企業はここ1年、従来のベンチャー投資を超える領域へと事業を拡大してきた。ファンド・オブ・ファンズの立ち上げや、プライベートエクイティー(PE、未公開株)に近い取引を担う人員の拡充などがその例だ。特にメガファンドを中心に、この分野でさらなる試みが進むとみられる。

原題:Chase for AI Money Marks Tech VC Year Ahead: Tech In Depth

(抜粋)

--取材協力:Vlad Savov.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.