(ブルームバーグ):中国系動画共有アプリ「TikTok」をかなりの時間見ていると、自分は今、「とても中国的な時間」にいると言う人たちに気付くはずだ。
中国人の一般家庭で見られるような朝のルーティンを撮影した動画が人気を得ている。消化を助ける食材としてアイススムージーではなく暖めたレモン水が紹介され、ギリシャヨーグルトの代わりにおかゆを食べる。
そして、運気を呼ぼうと赤い服を着る米国人は、自分が「中国人だと発見した」あるいは「新たに中国人になった」と興奮気味に語る。
このトレンドの多くは、中国系米国人のTikTokインフルエンサー、シェリー(@sherryxiiruii)の動画にさかのぼることができる。
彼女の投稿は数百万回再生されている。拡散したクリップの1つで、彼女は「明日、あなたは中国人になる。怖く聞こえるかもしれないけど、もうあらがっても意味はない」と言い放つ。
TikTokユーザーらは彼女の動画をつなぎ合わせ、習慣をまねし、ページにコメントしている。あるユーザーは「中国人になるのは初めてで、ちょっと緊張する」と書き込み、別のユーザーは「それに少しワクワクもしている」と返した。
すでに室内でスリッパに履き替えている人もいる。それは自分がずっと中国人だったが気付いていなかったという意味なのかとの問いに、シェリーは「そういうこと」と答えた。
人類学チャンネル「AnthroDorphins」のクリエーターによれば、「彼らはハイパーリアルな中国、つまり象徴的なバージョンと関わっている。それは、コミュニティーや秩序、有能さ、限界、文化的連続性、そして高齢者への気遣いといった、米国人が失いつつあると恐れているもの全てを吸収している」のだという。
6万件以上の「いいね」を集めたこの動画は、これらのミームが「ジョークであると同時に告白でもある」と指摘している。
自らを「Chinese baddies」と名乗る人の多くは文字通りの意味で言っているわけではなく、明らかに皮肉だ。ただ、その裏側には否定できない真剣さがある。西洋のメインカルチャーと向き合うことに疲れ、その代わりになる目新しくかつユートピア的な文化を求めて手を伸ばしているようにも見える。
私のように民族的に中国系のルーツを持つ視聴者にとって、これは愉快だ。凝ったアサイーボウルやプロテインスムージーではなく、朝食におかゆを食べることは、かつてはクールではないとされていた。そして、スープを飲むといった家庭的な行動が、今や祝福に値する儀式として再定義されているのは、何とも印象的だ。
一時代遅れとして退けられてきた、伝統的な中国医学を緩やかに取り入れた実践も、午前5時起床や冷水浴、ピラティスといった過度に流行した西洋のウェルネストレンドへの反動として復活している。
より多くをこなすプレッシャーの代わりに、日常生活が私たちに課す負担を和らげることを目的としたセルフケアの流れだ。
そしてこれは、中国的であることが明確に保たれ、かつTikTok上では珍しく肯定的に受け止められている中国のトレンドであることに注目すべきだと、オーストラリアのカーティン大学でインターネットを研究しているクリスタル・アビディン教授は言う。
クリエーターらは中国を韓国や日本と言い換えたり、西洋の視聴者がすでに理解している枠組みに当てはめたりしていない。多くの場合、その逆で、日々のルーティンとともに説明や歴史の断片を紹介している。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期にも、同じような中国の健康アドバイスが広く出回ったが、その後、文脈が剥ぎ取られ、誤った情報へと傾いていった。
「お湯を飲むことや、ナツメを食べると体にいいといった一般的なアドバイスは急速に広まったが、やがて枕の下にタマネギを置いて寝る、あるいは1日にニンニクを数片食べると新型コロナを治せるといった誇張へと転じた」と同教授は語る。
この現象の皮肉な底流には、米中間の地政学的緊張がある。アジアの大国である中国は米国のリーダーからしばしば敵対国として描かれてきたが、米国の若いネットユーザーは逆方向に押し返してきた。
1年前にTikTokが米国で一時的に禁止された際、多くの人が「小紅書」に殺到し、中国語に接触し始めた。その結果、米国人と中国人が同じSNS上で出会い、意見やネットスラング、メークのこつを交換するようになった。
ただし、ワイヤードのゼイ・ヤン記者は重要で欠かせない指摘をしている。人生に「中国的な時間」を持つという発想そのものが一過性、つまり中国系ファストファッション大手SHEIN(シーイン)で買う数カ月で捨てられるドレスのような一時的状態だという点だ。
翌月にはメキシコ人やインド人になることもできる。「一方で、私たちの中には、楽しくない部分も含め、永遠に中国人であり続ける者もいる」と同記者は論じている。
(この記事は、テクノロジー業界のビジネスを世界中のブルームバーグ記者が掘り下げて伝えるニュースレター「Tech In Depth」からの抜粋です)
原題:Americans Developing ‘Chinese Era’ Health Habits: Tech In Depth(抜粋)
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