日本の新規株式公開(IPO)銘柄で、公開価格に対する初値上昇率が縮小傾向だ。上場初日に売れば必ずもうかる「IPO神話」は今は昔となり、投資家には一見シビアな事実の裏で市場は着実に健全化の方向に進んでいる。

東証での上場セレモニーの様子

ブルームバーグのまとめによると、2025年のIPO銘柄の初値騰落率(中央値)は26.3%と13年ぶりの低水準にとどまった。IPOを長年研究してきた慶應義塾大学の金子隆名誉教授は、東京証券取引所が主にスタートアップ企業が上場するグロース市場の上場維持基準を引き上げる方針を示し、公開価格が過度に安く設定されやすい小型案件が減ったことが背景にあると分析する。

かつては公開株式数の少ない銘柄を中心にIPOで割り当てられた株式を上場初日に売ると、利益を得られる可能性が高いIPO神話が存在した。しかし、適正な価格設定が行われるようになり、必要以上に「過小に値付けされたスモールIPOを何とか手に入れ、初日に売り抜ければ必ずもうかるストーリーは成り立たなくなった」と金子名誉教授は話す。

 

東証に昨年上場した資金吸収額が5000万ドル(約79億円)未満の小型IPOの件数は12年ぶりの低水準に減少。小型IPOには成長期待の乏しさから上場直後の株価が高値になる「初値天井」への懸念や批判が投資家の間で多かったため、市場活性化を念頭に東証もグロース市場の上場企業に対し成長を促す姿勢を明確にした。

日本の初値上昇率は世界で突出

日本の初値上昇率の高さは、世界の主要市場と比べても際立っている。20-24年の5年間の日本の中央値は約33%と香港やインド、米国を圧倒した。一方、熱狂が短期間に終わるのも日本のIPO市場の特徴で、個人を中心にIPO銘柄を長期で保有しようとする投資家の少なさが背景にあると専門家は見ている。

初値上昇率は低下した半面、上場後の売買動向は市場が健全化の方向に進み始めていることを示唆した。昨年のIPO銘柄の上場初日の値動きを見ると、中央値ベースで終値が初値を上回った。12年以来の現象で、公開価格に対する初日終値の上昇率は29.5%(中央値)だった。

 

慶大の金子名誉教授は、潜在成長性を投資家に納得させられる企業の上場が増えたことを示していると指摘。初値天井を引き起こす仕組みに変化がうかがえ、「健全な資本市場の育成という観点からも今は大きな転換点だ」と言う。

(2つ目の表の補足説明を追加して更新します)

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