(ブルームバーグ):日本銀行は15、16日に開く金融政策決定会合で、政策金利を0.25ポイント引き上げ、1%程度とすることを決める見通しだ。物価の上振れリスクが意識される中、次の利上げをどこまで示唆するかが注目される。
病気治療のために入院中の植田和男総裁が初めて欠席する異例の会合となる。植田総裁は書面で意見を提出するが、議決には参加しない。議長は氷見野良三副総裁が務め、仮に可否が4対4の同数になった場合、議長が決することになる。終了後の記者会見には内田真一副総裁が臨む。
前回の4月会合では、9人の政策委員のうち3人が利上げを主張して政策維持に反対した。それ以降も他のメンバーから政策金利の引き上げに前向きな発信が続いており、植田総裁が不在でも利上げ見通しに変化はない。利上げは昨年12月以来、6カ月ぶり。1%の政策金利は1995年以来、31年ぶりの高水準となる。
最大の焦点となっている中東情勢を巡っては、トランプ米大統領が14日、米国とイランとの間で、軍事作戦の停止を含む和平合意が成立したと明らかにした。ホルムズ海峡の開放も表明するなど事態は大きく進展したが、先行き不透明感は残る。世界的なインフレリスクにもなお警戒が必要な情勢だ。
日銀は企業の賃金・価格設定行動が積極化している中で、緩和的な金融環境が続いており、政策判断で重視する基調的な物価上昇率は上振れしやすいとみている。米国とイランの合意を受けた経済・物価見通しやリスクの変化の有無も注目される。
三井住友銀行の武本淳也シニアエコノミストは、今会合の注目点について「利上げは市場ではほぼ織り込み済みのため、次回利上げ時期のヒントを探ることになる」とみる。日銀の想定利上げペースは半年に1回程度との見方を示しつつ、「より速いペースでの利上げについて言及があるか注視したい」としている。
足元の金利スワップ市場が織り込む日銀の6月会合での0.25ポイントの利上げ確率は97%程度に達している。
年末予想は1.25%
複数の関係者によると、 日銀は現時点では政策対応が遅れるビハインド・ザ・カーブに陥っていると認識しておらず、政策金利の連続的な引き上げや利上げ幅の拡大が必要とは判断していない。しかし、物価の上振れリスクの高い状況が続く可能性があり、動向次第で年内の追加利上げの余地もあるとみている。
ブルームバーグがエコノミスト51人に3ー8日に行った調査では、2026年末の政策金利見通しの中央値が1.25%となり、年内の追加利上げが見込まれている。日銀がビハインド・ザ・カーブに陥るリスクは高いと思うかとの質問では、「はい」が60%と前回4月調査の45%から増加。昨年7月にこの質問を設定して以降、最高だった。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、ビハインド・ザ・カーブになりつつあることを日銀が認め、先行きの利上げペースを示唆するかが今会合の焦点と指摘。もっとも、中東情勢の不透明感や、高市早苗政権とのあつれきが高まるリスクを踏まえれば、「今回、そこまで踏み込むことはないだろう」とみている。
日銀が次の利上げを明確に示唆しなくても、実質金利や金融環境を踏まえれば、1%程度の政策金利水準は引き続き緩和的と説明し、先行きの緩和調整余地を示す可能性が大きい。利上げの根拠として物価の上振れリスクへの警戒感をどの程度強調するかが、政策調整ペースに関する市場の見方に影響しそうだ。
今会合で1%に利上げしても、日銀の政策金利はなお主要中央銀行の中で最低水準にとどまる。イラン戦争の影響でインフレ圧力が強まる中、欧州中央銀行(ECB)は11日、中銀預金金利を0.25ポイント引き上げ、2.25%にすると決定した。市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)も年内に利上げに踏み切るとの観測が広がっている。
ブルームバーグ・エコノミクスの木村太郎シニアエコノミストは、「各国中銀が利上げ方向にかじを切る中、22年以降と同様に内外金利差が意識され、円安が進行し、インフレ圧力を一段と強めるリスクもある」と指摘する。
政府・日銀は4月28日から5月27日の間に計11兆7349億円の為替介入を実施。介入は24年7月以来で、月次ベースの金額の過去最大を更新した。介入を受けて円相場は一時1ドル=155円台まで反発したが、足元では160円前後と介入前の水準に戻っている。会合後に円安が進んだ場合、介入が行われる可能性も市場では意識されている。
国債買い入れ
今会合では現在の国債買い入れの減額計画の中間評価を行い、現行計画の見直しの是非や27年4月以降の方針を議論する。25年6月に決めた現行計画は、四半期ごとに買い入れ額を2000億円ずつ減らし、27年1-3月に月間購入額が2.1兆円程度まで縮小するものだ。
関係者によると、現行計画は維持される方向だ。焦点の27年4月以降の買い入れは、市場機能の回復や最近の金融市場の不安定な状況を踏まえ、減額の一時停止、あるいはペースの鈍化が検討される公算が大きい。保有国債の満期償還が進む中で、購入額の変化がバランスシート圧縮に与える影響は小さいという。
オックスフォード・エコノミクスの長井滋人在日代表は、世界的に国債金利が変動する中で、「日銀は、日本が混乱の引き金を引くことへの警戒心が強い」とみている。減額継続で強硬姿勢を示せば、「高市政権との関係も悪化させ、今後の金利正常化への理解を得るのも一段と困難になる」と指摘した。
他の注目点
- 日銀は経済・物価情勢について、4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)におおむね沿った推移と判断。利上げの説明は、見通し実現確度と物価上振れリスクの二つの要素を盛り込んだ内容になる可能性
- 足元の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は、日銀が目標とする2%を割り込んでいるものの、政府の物価高対策など制度要因が影響。日銀は企業物価の強さなどから、価格転嫁のスピードは従来よりも速いと認識
- 国債買い入れの着地点を見据えた議論が行われる中、名目国内生産に匹敵する大規模なバランスシートのあり方に関する議論が始まるかも注目
- 植田総裁の入院は2週間程度の見込み。今月会合の次の7月会合には出席する予定
- 29日に任期満了を迎える中川順子審議委員が出席する最後の会合。前回会合では利上げを提案し、政策維持に反対票を投じた。7月会合から金融緩和を重視するリフレ派の佐藤綾野氏が出席
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