高市早苗首相は夏が嫌いだという。自民党の萩生田光一幹事長代行が先週、インターネット番組に出演し、「国家機密」だと冗談めかして語った。とりわけ夏の選挙が苦手だとも話した。

分からないでもない。日本の夏は蒸し暑く、耐え難いほどの猛暑が年ごとに長期化している。選挙期間中は街頭演説が絶えず求められる。

だからこそ、高市氏は今月中に衆議院を解散し、2月前半の総選挙に踏み切ることで暑さを避けようとしているのかもしれない。そんな意向を複数のメディアが報じている。

このタイミングは、気温という点だけでなく政治的にも理にかなう。高市氏の首相就任から約3カ月だが、支持率は依然として極めて高い。週末のJNNの世論調査では、78%という支持率を記録した。

先月にはインフレに苦しむ家計への支援を盛り込んだ2025年度補正予算を成立させ、国民受けの良いガソリン税の引き下げも実施した。

高市氏は経験不足や過激な印象が懸念材料とされてきたが、台湾有事を巡る国会答弁に中国が強硬スタンスで応じたことでむしろ、理性的な国家指導者としての風格さえ漂わせている。

ただ、実質的な改革を実現するには、師と仰ぐ故・安倍晋三元首相のように人気を長期政権につなげる必要がある。その可能性が、年初は比較的静かであることが多い日本市場を動かしている。

いわゆる「高市トレード」が再燃し、日経平均株価は再び史上最高値を更新。日本国債は売られ続け、円はまた1ドル=160円に迫る安値水準をうかがっている。投資家は、より強固な政治基盤が、高市氏の積極財政志向を後押しすると見込んでいる。

総選挙で勝利すれば、自民党の単独過半数を回復できる公算が大きい。そうなれば、手ごわい野党との協調に頼る必要が薄れるほか、高市氏の党内での立場も安定する。

前首相の石破茂氏の下で24年10月に実施された総選挙では、多くの自民党議員が落選。こうした元議員の支持を取り付け、選挙に強いことを証明することが、党内ライバルを封じ込め、首相の座を維持する最善策となる。

教訓

オンライン上での政治議論がますます影響力を増す中で、若年層の支持はほとんど前例がない水準に達している。高市氏が愛用するハンドバッグやペンが買い求められて、いわゆる「サナ活」が広がっている。

FNNが先月実施した世論調査によると、30歳未満での支持率は前代未聞の92%に上る。自らを「ドジョウ」に例えたこともある野田佳彦元首相率いる最大野党、立憲民主党の不人気ぶりとは対照的だ。自民党が危機に直面していた昨年7月、立憲民主党は参院選で議席数を伸ばせなかった。

もっとも、高市氏が総選挙に踏み切ったとしても、楽勝できるとは限らない。個人的な人気は高いが、選挙そのものへの支持は乏しい。24年総選挙からわずか1年余りで、再び衆院選を行う必要性を感じないとの回答が多数派だ。解散を正当化する決定的な争点も打ち出せていない。

自民党というブランド自体は依然として傷ついたままだ。インフレなどの課題に「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と誓った高市氏に公約を果たしてほしいと有権者が望む中、このタイミングでの総選挙は自己都合と受け取られるリスクがある。

ただし、何もしないことのリスクはより大きいかもしれない。国内外の政治日程を考えると、選挙に打って出る現実的なチャンスは限られている。

時機を逸すれば、親しみが薄れ、支持率は必然的に低下する。20年に安倍氏の後任として首相に就いた菅義偉氏の教訓を思い出すべきだ。就任当初は高市氏並みの支持率を誇ったが、それを生かす機会を逃し、支持率の急落によって次の好機が訪れる前に首相の座を去ることになった。

高市氏は暑さが嫌いかもしれない。だが、熱狂的に支持している有権者と政権の「蜜月」も永遠に続くものではない。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Can Takaichi Beat the Heat With a Snap Election?: Gearoid Reidy(抜粋)

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