おわりに:「住まいの終活」の一環としてのリバースモーゲージ

これまでみてきたとおり、高齢者の消費の低迷は、経済全体の停滞や社会保障制度の持続性への懸念につながり、これがさらなる“老後不安”を呼び込むことで、貯蓄性向が高まり消費低迷が長期化する、という悪循環となる。

リバースモーゲージは、持ち家比率の高い日本では活用余地が大きく、老後資金の確保を通じて、こうした悪循環の抑止策となる可能性がある。

実際に、市場規模は拡大傾向にあり、今後さらなる普及が期待される。インフレ(現預金の実質価値の目減り)の定着、不動産価格の上昇のもとで、その役割は大きくなっていきそうだ。

一方で、リバースモーゲージは万人に適した商品ではなく、現状では、認知度の低さや、高齢者向け商品であるため、より慎重な対応や事前の準備が必要になるといった課題も存在する。

特に、リバースモーゲージの活用の前に、「買った家を最終的にどうするのか」という視点がまだ十分に根付いていない面がある。住まいは家族が集う居場所であると同時に、重要な資産でもある。

適切に活用すれば、生活資金の確保につなげることも可能である。一方で、昨今の空き家問題にみられるように、利活用や処分について計画を立てず、死後にそのまま残す場合、相続や維持費、家財の整理など、子など相続人に負担を強いる恐れもある。

したがって、まずは「住まいの終活」を普及させることが第一であり、そのなかでリバースモーゲージが対策の一つとして組み込まれることが望ましい。老後の安心や資産の有効活用を図るための意識改革と具体的な対策の促進が期待される。

※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 阿原 健一郎、ライフデザイン研究部 主任研究員 鄭 美沙、経済調査部 主席エコノミスト 星野 卓也

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【参考文献】

上山仁恵(2020)「日本人はなぜリバースモーゲージを知らないのか?─金融リテラシーがリバースモーゲージの認知度や理解力に与える影響分析─」、『社会保障研究』、vol.5、no.2、pp.225–236.

濱秋純哉、堀雅博(2019)「高齢者の遺産動機と貯蓄行動:日本の個票データを用いた実証分析」内閣府経済社会総合研究所『経済分析』第 200 号 2019 年

Lusardi, A. and Mitchell, O. S. (2011) “Financial Literacy and Planning: Implications for Retirement Wellbeing,” NBER Working Paper, No.17078.

Walker, Phillip, Barry Sacks, and Stephen Sacks (2021) “To Reduce the Risk of Retirement Portfolio Exhaustion, Include Home Equity as a Non-Correlated Asset in the Portfolio”. Journal of Financial Planning