パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は11日、首都ワシントンにあるFRB本部の改修工事を巡る昨年6月の議会証言に関連して、刑事訴追の可能性を示唆する大陪審の召喚状を司法省から受け取ったと明らかにした。連邦準備制度に対するトランプ政権による攻撃の劇的なエスカレーションを示す動きだ。

パウエル議長は11日夜に発表した書面と動画の声明で、今回の措置はFRB本部の改修工事を巡って、自身が昨年6月に上院銀行委員会で行った証言に関連していると述べた。一方で、この動きは「政権による脅しや継続的な圧力という、一段と広い文脈の中で受け止めるべきだ」とも指摘した。

パウエルFRB議長

今回の措置は自身の証言や改修工事に起因するものではなく、「それらは口実だ」と表明。「刑事訴追の脅しは、連邦準備制度が大統領の意向に従うのではなく、公共の利益に資すると判断した最善の評価に基づいて金利を設定していることの結果だ」とコメントした。

パウエル議長は声明でさらに、「これは連邦準備制度が証拠と経済状況に基づいて金利を設定し続けることができるか、それとも金融政策が政治的圧力や威嚇によって左右されることになるのかという問題だ」と論じた。

パウエル議長は、FRBが9日に召喚状を受け取ったとしている。トランプ大統領は11日にNBCニュースのインタビューに応じ、司法省が連邦準備制度を捜査していることについて、自身は一切把握していないと述べた。

このニュースを受け、米ドルは主要通貨全てに対して下落した。金は上昇基調を強め、過去最高値を更新。米S&P500種株価指数先物は一時0.3%安となった。

今回のトランプ政権による前例のない動きは、トランプ氏とパウエル議長との長年にわたる確執が一段と激化したことを示している。トランプ氏はこれまで、有権者の住宅購入の負担を軽減し、政府の借り入れコストを抑えるために連邦準備制度が行動すべきだと主張し、繰り返し大幅な利下げを注文してきた。

大統領はパウエル議長の解任に踏み切る可能性をほのめかすとともに、クックFRB理事の解任も試みており、クック氏は解任を不服として提訴。この訴訟の口頭弁論は今月21日に連邦最高裁で予定されている。

パウエル議長率いる米金融当局者は、先月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、3会合連続となる0.25ポイントの利下げを決め、主要政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを3.5-3.75%とした。当局者は、インフレと雇用に関するデータをさらに確認するまで、次の利下げを急がない姿勢を示している。

次回のFOMC会合は今月27、28両日に予定されており、金利先物市場では同会合で追加利下げが行われる可能性は極めて低いことが示されている。

パウエル議長の今後

パウエル氏は自身の職務について「誠実さと米国民に奉仕するという責務へのコミットメントをもって引き続き遂行していく意向だ」と説明した。

トランプ氏は政権1期目の2018年にパウエル氏を議長に起用した。現在の議長としての任期(4年)は5月に満了となるが、FRB理事としての任期は28年まで残っている。5月に退任するのか、FRBにとどまるのかについて、パウエル氏は意向を明らかにしていない。

パウエルFRB議長の動画

トランプ氏は、パウエル議長の後任候補を既に選定していると表明。後継者の名前は明らかにしていないが、ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長が最有力候補とみられている。

連邦準備制度を監督する上院銀行委員会メンバーのティリス上院議員(共和)は11日夜、金融当局を擁護する姿勢を示した。ティリス氏は声明で、「この法的問題が完全に解決するまで、次期FRB議長のポストを含め、FRBのいかなる候補者の承認にも反対する」と述べた。

ティリス氏の支持がなければ、共和党は委員会から本会議に候補者を送り、承認を進める上で大きな障害に直面することになる。

ティリス氏はまた、「トランプ政権の補佐官が連邦準備制度の独立性を終わらせようと積極的に動いているのかどうかについて、わずかでも疑念が残っていたとすれば、もはやその余地はない。今や問われているのは司法省の独立性と信頼性だ」と語った。

事情に詳しい複数の関係者によると、この捜査は首都ワシントンの連邦検察当局が主導しているという。

匿名を条件に取材に応じた関係者の1人は、納税者資金の不正使用の可能性がある案件を調べるよう、ボンディ司法長官が各地の連邦検察当局に指示していると明らかにした。

ホワイトハウスに問い合わせたところ、司法省に照会するよう回答。司法省報道官はこれまでのところコメント要請に応じていない。

改修工事

ホワイトハウスのボート行政管理予算局(OMB)局長は昨年7月にパウエル議長に書簡を送り、議長による連邦準備制度の運営や、「ワシントンの本部を豪華に改修する」プロジェクトについて、大統領が「極めて深刻な懸念」を抱いていると伝えた。

FRBの予算資料によると、ワシントンにある2棟の歴史的建造物を対象とするFRB本部改修の費用推計は25年に25億ドル(約3940億円)と、23年時点の当初見積もりの19億ドルから膨らんだ。

FRBはコスト増加の一因について、資材や設備、労働力に関する当初見積もりと実際の差異に加え、有害汚染といった予期せぬ問題があったためだと説明している。

パウエル議長は昨年6月の議会証言で、VIP用のダイニングルームや屋上庭園といったぜいたくな設計要素が盛り込まれているとする報道や、政権当局者や一部の共和党議員からの批判をおおむね否定した。

議長はまた、改修プロジェクトの計画は「引き続き変化してきた」と述べ、初期の一部の要素については「もはや計画には含まれていない」と説明した。

パウエル議長の強硬な批判者として知られる連邦住宅金融局(FHFA)のパルト局長は、議長が議会公聴会でプロジェクトの細部について虚偽の説明をしたと、詳細を示さないまま主張し、この問題はFRB議長を解任する法的に「正当な理由」に当たるとの見方を示した。

ルナ下院議員(共和)も当時、パウエル議長が証言で偽証を行った疑いがあるとして、議長の捜査と訴追を検討するよう司法省に要請していた。

トランプ氏は昨年7月に改修現場を視察し、このプロジェクトはパウエル氏を解任する理由にはならないとの認識を示した。しかし12月29日には、プロジェクトに関連してパウエル氏を「重大な職務怠慢」を理由に提訴することを検討中だと述べた。

連邦準備法では、大統領がFRBメンバーを解任できるのは正当な理由がある場合に限られており、一般には職務上の非効率、不正行為、職務怠慢を意味すると解釈されている。

大陪審の召喚状に関し、「The Myth of Independence: How Congress Governs the Federal Reserve(独立性の神話:議会はいかにして連邦準備制度を統治しているか)」の著者であるマーク・スピンデル氏は、「トランプ流の報復であり、5月に辞任させるための圧力のように受け止められる」と説明。その上で、パウエル氏が理事としてとどまれば、自身の息のかかった候補を新たに理事に起用したいトランプ氏にとって、FRBを巡る多数派形成は複雑になると語った。

原題:Fed Served With DOJ Subpoenas, Powell Vows to Stand Firm (4)、Prosecutors Open Criminal Probe Into Fed’s Powell, NYT Says (1)(抜粋)

(見出しを一部調整するなどして更新します)

--取材協力:Myles Miller、Enda Curran、Chris Strohm.

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